明るい月の下、潮が引いたときにだけ姿を見せる入り江がある。黒い岩、澄んだ水、そして星に枝を絡める白いバオバブが一本。バニーユ マフォンジャが描くのは、塩気を含んだ重い空気にバニラが溶け込み、夢のように島を包む夜だ。
香りの中心はマダガスカル産のバニラ。現地にはこの蘭の花粉を運べる在来のハチがおらず、花も一日しか咲かない。そのため栽培は、人の手による受粉と、咲く時機の見極めにかかっている。この香水は、そうした手間を経て育つバニラへの賛辞として組まれている。
始まりのフルール ド セルは、肌に残った潮を思わせる。そこへシナモン、モーリシャス産ピンクペッパー、ナツメグが金色の温かさを添える。コモロ産イランイランは、バニラにクリーミーな明るさを足す。やがてソマリア産のミルラとオリバナムがダークアンバーへ沈み、甘さに樹脂の陰りが差していく。








