始まりはイスタンブールへの旅です。グランバザールの騒がしい声と、古い市場に渦を巻くスパイスの匂いのなかで、調香師は自分の転機となったその旅を思い返します。この香水は、ひとところにとどまらない遊牧の人々や、つかまえどころのない魂に捧げられています。
開きは、ペッパー、シナモン、サフランの温かい刺激です。東への入り口だったころのコンスタンティノープルを思わせ、ベルガモットやグレープフルーツの明るさもそこに混じります。香りはバザールのスパイスから、市場に並ぶ古く貴重な布の匂いへと移り、中心ではローズとジャスミンの温かな花束に、エレミの落ち着いた樹脂と花椒の埃っぽさが重なります。乾いた余韻が、どこか懐かしさを帯びます。
ベチバー、パチョリ、ウードの乾いた香りに、煙を思わせるインセンスとタバコが重なります。薬草を扱う道から香水へ移った作り手は、香水を匂いの記憶としてとらえています。旅の終わりに、この街の神秘的な場所でひとり自分と向き合う。その静けさが、苦くスモーキーな後味に残ります。



















