めまい

めまいは、エラムが手がける緑茶が主役のオードパルファムです。グリーンティーにベルガモットとレモンが重なる明るい始まりから、ピオニーやミュゲ、マグノリアの花を経て、シダーウッドとベチバーの木と土の落ち着きへ移ります。春から夏の日中に、性別を問わずなじむ香りです。

#499 · 2026-09-30

ERAM / Memai

香水の基本情報と第一印象

めまいは、日本の香水ブランド、エラムの一本です。エラムは化粧品のポーラ・オルビスホールディングスから生まれたブランドで、めまいはその中でも緑茶の香りを主役にしています。発売は2024年とされ、濃度はオードパルファム、容量は30mlです。

「めまい」という名前からは、くらっとするような強い香りを思い浮かべるかもしれません。けれど、つけた瞬間に広がるのは、緑茶にベルガモットとレモンが重なる、甘さの少ない明るい香りです。ブランドはこの始まりを「清楚な香り」と呼び、全体を「お茶の繊細で多層的な香り」と説明しています。公式の香調分類名は付いていません。

エラムの香りには、それぞれ短い詩が添えられています。めまいの詩は「かつて海の向こうから来た感情は/いつの間にか/私の一部だ」。明るい緑茶から始まり、最後は木と土の落ち着いた香りへ移っていくので、軽やかさだけで終わらない一本です。

調香師・ブランドの背景と制作秘話

販売店では、めまいの調香師として岸田茂雄さんの名前が挙がっています。ブランドは緑茶について、「天然香料と合成香料でイメージした香りを調香師が創作している」と説明しています。緑茶の香りは日本と世界で違いがあるため、特定の国のお茶を写すのではなく、緑茶のイメージとして組み立てた香りです。

エラム全体の香りには、佐藤孝さんが調香監修と香りのアドバイザーとして関わっています。ポーラで40年以上、化粧品の香り付けとフレグランスの開発に携わってきた人物で、フランス調香師協会の正会員でもあります。

ブランドの始まりは、ポーラ・オルビスホールディングスの社内ベンチャー制度です。2023年7月、好みの香りを見つけるための香水の定期便として始まりました。事業責任者は、サービスを続けるうちに「皆さまの好みはバラバラだということが分かり」、自分たちの予想が凝り固まっていたと気づいたと振り返っています。そして2024年11月1日、香水を販売するブランドへ生まれ変わり、16種類の香水をそろえました。現在の公式サイトには17種類の香りが並んでいます。

事業責任者の大島康平さんは、自分で選ぶ楽しさを届け、選択を支えたいという思いから、古語で「選ぶ」を意味する「えらむ」をブランド名の由来にしたと語っています。絵や言葉から香りを選べる体験が、エラムという名前にも表れています。

ブランドのプロデュースはクリエイティブエージェンシーのCEKAI、アートディレクションとデザイン、アートワークはデザインチームのhesoが担当しています。CEKAIは「色を無くした世界をつくりたい」と最初に伝えたときのことを、よく覚えていると振り返っています。色があると香りのイメージが決まってしまうので、色のないあいまいな世界から自由に想像してほしい。エラムの絵がモノクロなのは、この考えからです。

エラムの香りは古典文学に着想を得て、日本人の心に響く情景や気持ちを表したもので、それぞれに百人一首に着想を得た短歌のようなコンセプトが割り当てられていると紹介されています。めまいの詩がどの歌から来たかは明かされていません。「和」を直接感じさせる香料に頼らず、香りの組み立てそのもので日本らしさを表すという考え方もあり、製造は標高1000メートルを超える長野県の八ヶ岳で行われているそうです。

香りの詳細分析

つけはじめのトップは、グリーンティー、ベルガモット、レモン。緑茶の香りに、紅茶のアールグレイの香り付けにも使われるベルガモットのやわらかい苦みと、皮をしぼったときのようなレモンの酸味が重なります。甘さが少なく、明るい始まりです。ブランドはこれを「人生の輝かしい一瞬一瞬を映し出す」と表現しています。香水名とブランドの説明のどちらも、この緑茶と柑橘が重なる瞬間が中心にあります。

ミドルは、ピオニー、ミュゲ、マグノリア。芍薬の花であるピオニーはふんわりとした華やかさ、フランス語でスズランを指すミュゲはすっきりとした清らかさ、モクレンの仲間のマグノリアは柑橘を思わせる明るさを持つ花です。緑茶と柑橘の上にこの3つの花が重なり、ブランドが「上品で華やかな香り」と呼ぶ層になります。

ラストは、シダーウッド、サンダルウッド、ベチバー。シダーウッドはブランドが「爽やかなスパイシーの木の香り」と説明する針葉樹の香りで、白檀のことを指すサンダルウッドは、なめらかで穏やかな木の香りです。ベチバーはイネ科の草の根から採る香料で、「湿った土にも似た木の香り」とされています。爽やかな木と、しっとりした土のような木が、それまでの緑茶と花を後ろから支えます。

明るい緑茶から始まり、湿った土と木の落ち着きへ。軽いものから重いものへ移るこの流れが、ブランドの言う「背後に深みを与える」構成です。具体的な持続時間の目安は、まだ示されていません。

他の香水との比較・ポジショニング

同じエラムの1830は、どちらもつけはじめにレモンを使う香水です。1830はレモンに綿菓子、ペアー、ピーチ、ローズ、フリージアが続き、最後にバニラ、アンバー、ムスクが重なる甘い構成で、夏祭りと夏の終わりの懐かしさを描いた香りと紹介されています。同じ3段階の構成で情景を描くコンセプトを持ちながら、めまいは緑茶と柑橘から木とベチバーへ向かう、甘さを抑えた方向です。甘く懐かしい情景を感じたい人には1830、お茶のすっきりした香りから木の落ち着きへ移る香りが好きな人にはめまいが合います。

緑茶が主題の定番なら、ブルガリのオ・パフメ テ ヴェールです。緑茶とベルガモットを使う点は共通していますが、公式のキーノートはグリーンティーのエキス、オレンジの花から採るネロリの花びらのアコード、ベルガモットのエッセンスの3つにしぼられています。緑茶と柑橘、オレンジの花で組み立てた香りが好きな人にはオ・パフメ テ ヴェール、緑茶に3種類の花と木の香りまで重なる香りを求める人にはめまいが向いています。 オ・パフメ テ ヴェールの詳しい香りと背景はこちらです。 https://perfume.fm/episodes/445

エリザベス アーデンのグリーンティーも、緑茶とレモン、ベルガモットを使う三段構成の定番です。違いは緑茶を置く場所にあります。グリーンティーはつけはじめにレモン、ベルガモット、オレンジの皮、ミント、ルバーブを置き、緑茶は中盤でジャスミン、カーネーション、フェンネルと重なります。最後はムスク、オークモス、アンバー、クローブです。ミントの涼しさや、ムスクとオークモスで終わる香りが好きな人にはグリーンティー、最初から緑茶が前に出て木の香りで締める香りが好きな人にはめまいが合うでしょう。

購入ガイド・価格・おすすめ度

めまいは30mlのオードパルファムの一種類で、価格は税込1万3200円です。濃度やサイズの違いはなく、香らせ方はつける量で調整します。30mlは小さめの容量なので、バッグにも入れやすいサイズでしょう。

初めて試すなら、エラムのインプレッションキットが使えます。エラムの香りから2mlの小瓶を5本選んで組めるセットで、2024年の発表時の価格は税込9900円です。公式サイトでは、画面に出てくる絵や言葉から香りを想像しながら、自分だけの5本を選べます。めまいをキットに入れて肌で確かめてから、30mlを選ぶ流れです。

パッケージには、hesoによるモノクロの抽象的なドローイングが使われているそうです。版画のような絵は輪郭をわざとぼかし、見る人によって違う印象を持つように作られています。めまいの外箱の絵柄が何を描いているかは明らかにされていません。

甘い香りより、緑茶や柑橘のすっきりした香りを普段使いしたい人に向く一本です。甘さのある懐かしい情景を求めるなら、同じエラムの1830も試してみてください。

実際の使用感・シーン・評判

いちばん合うのは春から夏です。緑茶と柑橘のすっきりした始まりが、暖かい季節の軽い服装になじみます。暑さの残る初秋の日中にも使いやすく、真冬の厚着の季節は軽やかさが目立ちにくいので、ほかの季節ほどは合わないでしょう。時間帯は、明るい柑橘と緑茶が生きる日中がおすすめです。

場面は普段の日常使いが中心です。販売店では男女どちらにも向けて売られていて、性別を問わず使えます。甘さを抑えた香りなので、職場や日中の外出にも合わせやすいでしょう。服装は、春夏の普段着のリネンや綿のシャツ、軽いカットソーなどがなじみます。

濃度はオードパルファムで、香水の中では香りが長めに続く区分です。持続や広がりについての利用者の声はまだ少なく、使い方のコツもこれから集まっていく段階です。気になる人は2mlのキットで、自分の肌での残り方を確かめてみてください。

めまいに添えられた詩では、「海の向こうから来た感情」が、いつの間にか「私の一部」になります。遠くにあった気持ちが自分の内側に移る変化を、短い言葉で描いています。

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