ティー セレモニー
モルトンブラウンのティー セレモニーは、和梨、緑茶、抹茶アコード、ヒノキウッドを軸にした2026年のオードパルファムです。甘い抹茶ラテではなく、粉のほろ苦さ、湿度のある緑、乾いた木質で、静かな茶室のような小休止を描きます。オフィス、雨の日、入浴後など、強く主張せず近い距離で気分を整えたい場面に似合います。
#416 · 2026-07-09
香水の基本情報と第一印象
Molton Brown(モルトンブラウン)のTea Ceremony(ティー セレモニー)は、2026年に登場したオードパルファムです。香りの核は、和梨、緑茶、抹茶アコード、ヒノキウッド。分類としては、ウッディグリーン、ティー、アロマティックのあいだにある香水です。
第一印象は、抹茶の名前から想像する甘いラテではありません。和梨が最初に水分とほんの少しの甘さを出し、そのあとに緑茶の透明感と抹茶のほろ苦さが重なります。最後はヒノキの乾いた木質が残り、全体を静かに引き締めます。
この香水を一言でいうなら、和梨と抹茶がひらく静かな茶室です。派手に広がる香りではなく、近い距離で空気を整えるタイプ。忙しい日常の中に、短い小休止を置くような一本です。 音量を上げずに、気分の温度を少し下げてくれます。
調香師・ブランドの背景と制作秘話
調香師はMathieu Nardin(マチュー・ナルダン)です。グラース出身で、ISIPCA(イジプカ)で学び、Robertet(ロベルテ)を経てMANE(マン)に所属する調香師として知られています。モルトンブラウンの茶系作品、ティー トニックにも関わった人物として語られることがあり、今回の茶の扱いとも自然につながります。
モルトンブラウンは1971年、ロンドンのSouth Molton Street(サウス モルトン ストリート)で始まったブランドです。現在は花王グループの傘下にあります。英国発のバス&ボディの感性と、日本企業の背景、そして茶の作法というテーマが重なるところに、ティー セレモニーの面白さがあります。
ブランドが得意としてきたのは、香水を日常の手入れや入浴の時間と結びつける感覚です。この作品も、夜会や強い自己演出のための香りというより、入浴後や仕事前に気持ちを整える香りとして読むと輪郭が見えます。
香りの詳細分析
トップは和梨です。洋梨よりも水分が多く、甘さが穏やかな果実として働きます。ここでは果物のジューシーさを前面に出すというより、緑茶や抹茶の苦味を硬くしすぎないための湿度を作っている印象です。
ミドルは緑茶と抹茶アコード。緑茶は透明感とハーバルな清潔感を出し、抹茶は粉、土、ほろ苦さを加えます。甘いミルクや砂糖の方向ではなく、茶碗の底に残る濃い緑、湯気、静けさの方向です。
ラストはヒノキウッド。日本の温泉浴場に使われる素材として説明される木で、ウッディでありながら、少しレモンのような明るい面もあります。データベース系ではアンバーウッドも挙がるため、自然木だけでなく、現代的なウッディの輪郭も感じられるかもしれません。
流れとしては、和梨の水分、緑茶と抹茶のほろ苦い緑、ヒノキの乾いた木質。この三段階です。甘さではなく、静けさがだんだん深まっていく香りです。
他の香水との比較・ポジショニング
Le Labo(ル ラボ)のThé Matcha 26(ザ マッチャ 26)と比べると、共通点は抹茶、静けさ、近い距離の香りであることです。ただ、ザ マッチャ 26はフィグやクリーミーな肌感が強く、スキンセントとしての柔らかさが前に出ます。ティー セレモニーは、和梨、緑茶、ヒノキで、より乾いた緑と木へ寄ります。
Maison Margiela(メゾン マルジェラ)のMatcha Meditation(マッチャ メディテーション)は、抹茶に白チョコレートやフローラルの甘さを重ねる方向です。ティー セレモニーは、そこまで甘くありません。抹茶をデザートにせず、茶室、粉、木、沈黙として扱います。
Bvlgari(ブルガリ)のEau Parfumée au Thé Vert(オ パフメ オーテヴェール)は、シトラスと透明感のあるグリーンティーの古典です。Elizabeth Arden(エリザベス アーデン)のGreen Tea(グリーンティー)は、さらに明るく手に取りやすいシトラスグリーン。ティー セレモニーは、そのどちらよりも落ち着き、抹茶とヒノキの木質で内側へ向かいます。
購入ガイド・価格・おすすめ度
中心になるのは100mlのオードパルファムです。地域によっては7.5mlのトラベルサイズ、バス&シャワージェル、セット展開も確認されています。日本では100mlが27,500円、7.5mlが3,740円、バス&シャワージェル300mlが4,840円、セットが8,140円として紹介されています。地域や時期で価格は変わるため、最終的には公式サイトや正規取扱店を見ておくと安心です。
おすすめしやすいのは、甘すぎない抹茶、グリーンティー、ヒノキ、控えめなウッディ、清潔感のある香りが好きな人です。オフィスや在宅ワークでも使いやすい静かな香りを探している人にも合います。
一方で、濃厚な抹茶ラテ、強い拡散、派手な褒められ香、クリーミーなグルマンを期待すると物足りないかもしれません。肌によっては、ヒノキやウッディの輪郭がやや合成的、あるいは柑橘系クリーナーのように感じられる可能性もあります。試すなら、最初の和梨だけでなく、30分後と2時間後の抹茶ヒノキの残り方を見るのが大事です。
実際の使用感・シーン・評判
似合う場面は、春、初夏、雨の日、秋、在宅ワーク、オフィス、静かな食事、書店、美術館、ホテルラウンジ、入浴後、寝る前です。大きく広がって場を支配する香りではなく、近い距離で空気を整える香りとして考えると使いやすいと思います。
夏の日中でも、量を控えれば清潔感のあるティーウッディとして使えます。ただし湿度が高い日や密閉空間では、ウッディの輪郭が強く感じられることがあります。手首にしっかりではなく、腰、足首、服の内側に近い場所へ少量置く方が、静けさがきれいに残ります。
評判では、抹茶と木の静けさ、甘すぎない茶系、オフィスで使いやすい、和の雰囲気がある、清潔で落ち着くという反応があります。一方で、拡散の控えめさ、持続の物足りなさ、ウッディの合成感を指摘する声もあります。
ティー セレモニーは、強く印象づける香水ではありません。でも、そこが魅力です。和梨、緑茶、抹茶、ヒノキが静かに重なり、日常のノイズを少し下げてくれる。和梨と抹茶がひらく静かな茶室として、手元に置いておきたくなる一本です。


