ローザムンダ
Laboratorio OlfattivoのRosamundaを、公式ノート、調香師Marie Duchêne、ローズ・ウードの文脈、似ている香水との違い、実際の使いどころから整理する回です。
#348 · 2026-05-02
香水の基本情報と第一印象
Rosamunda(ローザムンダ)は、Laboratorio Olfattivo(ラボラトリオ オルファティーボ)が2012年に発表したEau de Parfumです。調香を手がけたのはMarie Duchêne(マリー・デュシェーヌ)。公式サイトではClassic Collection Biancaに属し、30mlと100mlの展開が確認できます。
第一印象は、ただ甘いローズではありません。トップにあるのはサフランとローズリーフ。つまり花弁だけでなく、葉の青みや茎の気配を含んだ、少し切れ味のあるバラです。そこにブルガリアンローズ精油とターキッシュローズアブソリュート、パチョリ、ウード、アンバー、アニマルムスクが重なり、昼は端正で、夜は情熱的なローズへ変わっていきます。
ローズ・ウード系でありながら、重すぎるアラビアン調に振り切らないところがこの香りの特徴です。きれいな花束ではなく、少し影のあるバラ。けれど暗く沈むだけではなく、ローズリーフとサフランの明るさが残るため、日常にも近づけられるモダンローズです。
調香師・ブランドの背景と制作秘話
Laboratorio Olfattivoは、2009年にRoberto Drago(ロベルト・ドラーゴ)とDaniela Caon(ダニエラ・カオン)によって設立されたイタリアのニッチフレグランスブランドです。ブランド名は「嗅覚の実験室」。市場に合わせて香りを作るというより、調香師のアイデアや物語が集まる場所として語られます。
Rosamundaの調香師Marie Duchêneは、ISIPCAで学び、MD Fragrancesを設立したフランス人調香師として紹介されます。Laboratorio OlfattivoではNeed_UやNobligeなど複数作品に関わる人物で、花の素材をウッディやアンバー方向へ変えていく作風が語られることもあります。
公式コピーで印象的なのは、Rosamundaを「昼の光の下ではエレガント、夜が降りると情熱的」と描く点です。さらに、ガブリエル・ガルシア=マルケスの女性登場人物たちの髪に挿された、挑発的で肉感的なバラも参照されています。単なるローズ香水ではなく、文学的な女性像と、ウードで覆われた祭壇のような荘厳さを重ねた香りです。
香りの詳細分析
**トップノート**は、サフランとローズリーフです。サフランは金色で乾いたスパイスとして、ローズを甘くするのではなく輪郭を少し硬く照らします。ローズリーフは花弁の甘さではなく、葉の青みやグリーンな切れ味を与える要素です。ここが、ジャムのようなローズではない理由になります。
**ミドルノート**では、ブルガリアンローズ精油、ターキッシュローズアブソリュート、パチョリが中心になります。ローズは肉厚でありながら果実的な甘さへ寄りすぎず、花としての存在感を保ちます。パチョリは土っぽさ、湿度、暗さを足し、ローズの古典的な美しさを少し揺さぶります。
**ベースノート**は、ウード、シダー、サンダル、アンバー、アニマルムスク。ウードは強く医療的に主張するというより、古い木の影としてローズを支えます。シダーとサンダルが乾いた木質へ移し、アンバーとアニマルムスクが体温感と官能性を残します。肌では中程度、衣服では長く残るという声があり、強拡散型ではなく近距離で余韻を楽しむタイプです。
他の香水との比較・ポジショニング
Rosamundaは、ローズ・サフラン・ウードの文脈と、ローズ・パチョリの文脈が交わる場所にあります。Frédéric Malle(フレデリック マル)のPortrait of a Lady(ポートレイト オブ ア レディ)とはローズとパチョリのドラマ性が共通しますが、Rosamundaはウードとローズリーフによって、より木の影と軽さが残ります。
Bond No. 9(ボンド ナンバーナイン)のNew York Oud(ニューヨーク ウード)とは、ローズ、サフラン、ウード、パチョリの組み合わせが近い一方、Rosamundaは果実やハニーの艶よりも乾いた木と葉の青みに寄ります。
Montale(モンタル)のBlack Aoud(ブラック アウード)と比べると、共通するのはローズ、ウード、パチョリ、ムスクの重心です。ただしBlack Aoudがより黒く濃くスモーキーに押し切る方向なら、Rosamundaは花の輪郭を残し、日常にも寄せやすい影の付け方です。
購入ガイド・価格・おすすめ度
公式サイトでは30mlと100mlが確認でき、価格帯は60ユーロから120ユーロです。日本国内では正規・並行輸入・中古で価格差がありますが、香りの個性を考えると、まずは試香か30mlから始めるのが現実的です。サフラン、パチョリ、ウードの出方は肌によって印象が変わります。
おすすめ度が高いのは、甘いローズだけでは物足りない人、でも濃厚すぎるローズ・ウードには少し構えてしまう人です。ローズの華やかさ、パチョリの湿った影、ウードの木質感を、比較的軽やかな距離感で楽しめます。
反対に、みずみずしい生花ローズや透明なシトラスを期待すると、サフランやパチョリの鋭さを意外に感じるかもしれません。初回は1プッシュから、肌と衣服での残り方を確認するのがおすすめです。
実際の使用感・シーン・評判
似合う季節は秋が中心です。春や冬、夜の外出にも合います。レビューでは、軽やかに感じる人は夏にも使えると語る一方、秋冬の寝香水や夜の会食に向くという声もあります。公式が描く「昼はエレガント、夜は情熱的」という二面性を考えると、昼の白シャツにも、夜の黒いジャケットにも合わせられる香りです。
シーンとしては、オフィス、会食、ロマンティックなディナー、一人で過ごす夜に向きます。強く空間を支配するタイプではないため、控えめにつければ日常にも使えます。ただし、サフランやパチョリをツンと感じる人、芳香剤感として受け取る人もいるため、狭い空間では量を抑えるのが安全です。
ポジティブには「ずっとちゃんとローズ」「暗さと色気のある耽美なローズ」「軽やかでつけやすい」と語られます。一方で、持続や拡散が控えめに感じる声、ローズが思ったより前に出ないという声もあります。Rosamundaは、万人向けの可愛いバラではありません。ローズの葉、土、木、体温まで含めて、少し大人の影をまといたい人に響く一本です。


