アナザー 13
アナザー 13は、アンブロキシド、ジャスミン、モスを公式キーノートに置くル ラボのオード パルファムです。アナザー・マガジンとコレットの共同制作から始まり、現在はクラシック コレクションに加わっています。
#13 · 2025-06-01
香水の基本情報と第一印象
ル ラボのアナザー 13は、2010年に生まれたオード パルファム。ル ラボを代表する定番で、香水ラジオで取り上げた香水の中でもトップクラスに人気の一本です。公式ページがキーノートとして挙げるのは、アンブロキシド、ジャスミン、モス。トップ、ミドル、ラストの順に分けた香料表ではなく、三つの名前を並べて示しています。
ル ラボが合成のアニマルムスクとして紹介するアンブロキシドは、洗いたてのシーツや乾いた木を思わせます。肌に近く残る清潔なムスクが、この香りの第一印象です。
ボトルは透明な丸いガラスに、銀色の円筒形キャップを合わせた形。写真に写る50 mlのボトルでは、薄い色のラベルに「ANOTHER 13」と容量、オード パルファムの表記があり、都市、調製日、名前を書く欄も見えます。形を飾るより、ラベルの情報を見せるデザインです。
調香師・ブランドの背景と制作秘話
制作を依頼したのは、アナザー・マガジン。ファッションやアートを扱い、世界から注目されたパリのセレクトショップがコレットです。ル ラボによれば、そこでバイヤーを務めたサラ・アンデルマンが、ル ラボと同誌編集長ジェファーソン・ハックをつなぎました。こうして雑誌、店、香水ブランドによる共同制作が始まります。
ファブリス・ペノは後年の取材で、電話での会話から、何も書かれていない白い紙のような、まっさらで純粋な香りを思い描いたと振り返っています。同じ取材で香りの中心として挙げたのは、アンブロキサンとホワイトムスク。ジェファーソン・ハックは、香りを記憶を呼び起こす媒体と捉え、この作品を「現在の記憶」に近いものとして語りました。ペノが後から振り返ったのは、特定の都市や店でしか持ち帰れない香りを作りたかったという思い。当初コレットだけで販売された背景にも、その思いが見えます。
名前の「13」について、当時のアナザー・マガジンの記事には、アナザー 13を13種類の原料を組み合わせた香りとする説明があります。
調香師はナタリー・ローソン。dsm-firmenichは彼女をマスター パフューマーとして紹介し、同社の作品資料にはル ラボのアナザー 13(2010年)が掲載されています。
当初の販売店はコレットだけでした。2017年12月のコレット閉店後、ル ラボのクラシック コレクションに加わりました。コレット限定だった一本が、世界中のル ラボで手に取れる香りになったのです。
dsm-firmenichの人物紹介に登場するローソンは、自分を前面に出すより、使う人のために香りを作ることを重視しています。少ない要素で強い個性を生むことにも惹かれると語る調香師です。アナザー 13の作者を知るときには、完成した香りとともに、こうした作り手の姿勢にも目を向けたくなります。
香りの詳細分析
ル ラボのUSと日本のページは同じ三つのキーノートを示し、メキシコのページだけがアンブレット種子を加えています。
香りの中心は、アンブロキシドが作る肌に近いムスク。洗いたてのシーツを思わせる清潔さと、水分の少ない乾いた木の質感が重なります。そこへジャスミンがほのかな花の明るさとやわらかさ、モスが乾いた緑の落ち着きを添えます。
この三つは、トップ、ミドル、ラストの時間順に割り当てられた素材ではありません。どれが先に香るかを固定する構成表ではなく、アナザー 13の輪郭をつくるキーノートです。この違いは、香料表を読むときの大切な手がかり。付けた人の肌によって、ムスクの清潔さ、木の乾き、花の粉っぽさのどれが目立つかが変わります。
商品説明はジャスミンとモスの働きを「刺激と光」と表現しています。AnOther誌の取材で共同制作者が中心に挙げたのは、アンブロキサンとホワイトムスクでした。花や緑の気配はありつつも、香りの距離感と乾いた輪郭を決めるのはムスクです。
ル ラボは全体を、つかみどころがなく独特な香りとしても紹介しています。三つの素材名を知っても、肌の上でどの質感が前に出るかは一つに決まりません。この予測しにくさも、アナザー 13の特徴です。
他の香水との比較・ポジショニング
エセントリック・モレキュールズのモレキュール 02は、公式でアンブロキサンのみをアルコールと少量の水に配した香水として紹介されています。素材を一つに絞った構成が、分子系のアンバー調を前面に置く比較対象になります。
ジュリエット・ハズ・ア・ガンのノット ア パフュームは、公式でセタロックスを中心にした香りとされ、ウッディ、ムスキー、アンバーの輪郭で案内されています。公式はセタロックスを全段階で示しており、こちらも一成分を中心に置く設計です。
ル ラボのガイアック 10は、ガイアックウッドを中心にムスクを重ね、シダーとオリバナムを添えた香水です。肌に近いムスクという共通点がありますが、ガイアック 10は木の香りが中心。アンブロキシドにジャスミンとモスが重なるアナザー 13とは、香りを支える素材が異なります。
アナザー 13は、肌に近いムスクを土台に、花の明るさと乾いた緑を重ねます。この重なりが、モレキュール 02とノット ア パフュームの単一素材を主役にする設計との違いです。一方、ガイアック 10とは肌に近いムスクを共有しながら、木とムスクのどちらを中心に置くかで分かれます。
購入ガイド・価格・おすすめ度
日本の公式ページには、アナザー 13のオード パルファムが掲載されています。現行ページには同じ香りのボディ製品とリキッドバームもありますが、香水本体はこのオード パルファムです。
2026年の日本公式ページ確認時点の容量と価格は次の通りでした。
1.5 mlは990円、15 mlは14,300円、50 mlは32,230円、100 mlは47,190円。容量と価格を一組ずつ見ると、持ち歩き用にするか、普段使いのボトルにするかを考えやすくなります。
価格と取扱いは変わるため、購入時には公式ページで最新の表示をご確認ください。
容量は1.5 mlから100 mlまで幅があります。価格差も大きいため、使う頻度と保管しやすさを考えて、自分が使い切れる量を選ぶのが現実的です。
実際の使用感・シーン・評判
実際につけた人の感想には、清潔なシーツ、乾いた木、肌に近いムスクという表現があります。その一方で、ほとんど香りを感じない、合成ムスクの鋭さが強い、粉っぽいジャスミンや塩気を感じるという声も。長く続くと感じる人もいれば、水のように薄いと感じる人もいます。
合成的な角がすりガラスを通したようにやわらかくなる、肌に塩気がなじむと表現する人がいる一方、古い薬局を連想するという声もあります。同じ香水でも、結びつく記憶や場面はそれほど異なります。
秋の涼しい日や、静かな室内で肌に近く香らせたい場面が、このムスクを試す入り口になります。涼しい春や冬にも合わせやすい一方、夏は暑さや肌の状態で印象が変わることも。まずは手首などの肌に少量つけて、清潔さと鋭さのどちらが立つかを確かめると、自分に合う一本を選びやすくなります。


