オー ローズ オードパルファン
ディプティック「オー ローズ」は、ライチ、二種のローズ、カモミールが透明なローズを作る香りです。青い蕾のようなみずみずしさと、ムスクの柔らかな余韻が軽やかに続きます。
#117 · 2025-09-13
香水の基本情報と第一印象
Diptyque(ディプティック)のEau Rose(オー ローズ)Eau de Parfum(オードパルファン)は、2022年に登場したローズ香水です。2012年に登場したEau de Toilette(オードトワレ)の10周年に加わった姉妹作で、より立体的で青いローズとして設計されています。
第一印象は、透明でみずみずしいバラです。ただし、砂糖漬けのローズや口紅のようなローズではありません。ライチの果汁、花びらの柔らかさ、茎葉の青さ、蕾の少し苦い気配が同時にあります。今回の興味喚起フレーズは、ライチと青い蕾がほどく透明なローズ。可憐だけれど、植物としての輪郭があるローズです。
調香師・ブランドの背景と制作秘話
ディプティックは、1961年にパリのサンジェルマン大通りで始まったブランドです。創業者たちはアート、テキスタイル、舞台装置、旅の感覚を持ち寄り、香りを生活の中のオブジェとして見せてきました。楕円形のラベルも、ディプティックらしい物語性を象徴しています。
調香はFabrice Pellegrin(ファブリス ペルグラン)。南仏グラース出身の調香師で、ディプティックではDo Son(ドゥ ソン)やEau Duelle(オー デュエル)などでも知られます。オー ローズでは、ダマスクローズとセンティフォリアローズという二つのバラを中心に、花だけでなく葉や茎まで感じるローズを作っています。
香りの詳細分析
トップでは、Lychee(ライチ)が明るく弾けます。ライチは、ローズの甘さを重くするのではなく、水分を足すように働きます。果汁が花びらに落ちるような透明感があり、冒頭から軽く、親しみやすい印象です。
ミドルでは、Damask Rose(ダマスクローズ)とCentifolia Rose(センティフォリアローズ)が中心になります。ダマスクローズは豊かで華やか、センティフォリアローズは柔らかく繊細。そこにChamomile(カモミール)の穏やかなハーブ感と、Artichoke(アーティチョーク)の青いビターが加わります。ここがオードパルファンらしい個性で、単なる花束ではなく、茎、葉、蕾まで含んだバラになります。
ベースでは、Musk(ムスク)とWoody Notes(ウッディノート)が静かに残ります。ムスクは清潔で肌に近く、ウッディはローズの青さを落ち着かせます。強く広がる香りではなく、近い距離でふと花が揺れるように続くタイプです。
他の香水との比較・ポジショニング
Maison Francis Kurkdjian(メゾン フランシス クルジャン)のÀ La Rose(ア ラ ローズ)は、光を含んだ上品なローズです。ア ラ ローズが明るいドレスのようなバラなら、オー ローズは葉や茎まで見える透明な花瓶のバラです。
Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン)のRed Roses(レッド ローズ)は、刈りたての花束のようなフレッシュさがあります。オー ローズはそこにライチの水分とアーティチョークの青い苦みが加わり、よりディプティックらしい自然主義の方向へ進みます。
Le Labo(ル ラボ)のRose 31(ローズ サーティワン)は、スパイスとウッドでローズをジェンダーレスに変える香りです。Parfums de Marly(パルファム ドゥ マルリー)のDelina(デリーナ)は、ライチローズを華やかに拡散させる香り。オー ローズはどちらよりも静かで、植物の写実に寄っています。
購入ガイド・価格・おすすめ度
日本の参考価格では、オードパルファン75mLが29,700円前後、オードトワレ50mLが17,600円前後、100mLが24,750円前後という記録があります。価格は改定や販売店で変わるため、購入時は公式または正規取扱店で確認してください。
おすすめしやすいのは、ローズ、ライチ、グリーンフローラル、甘すぎないバラ、春夏に使いやすい上品な香りが好きな人です。逆に、濃厚なローズジャム、強い拡散、パウダリーな口紅ローズ、わかりやすい甘さを求める人には、少し静かに感じるかもしれません。
試香するなら、EDTとEDPを比べるのがおすすめです。トワレはローズウォーターのように軽く、パルファンはアーティチョークやカモミールの青さがあり、より奥行きがあります。日中に軽くまといたいならトワレ、ローズの茎葉や蕾まで感じたいならパルファン、という選び分けが現実的です。日本の湿度ではEDPの青さがきれいに出る一方、草っぽく感じる人もいるので肌で確認したい香りです。
実際の使用感・シーン・評判
似合うのは、春夏の日中、雨上がり、白シャツ、淡いニット、ギャラリー、カフェ、近距離の会話です。強く香らせるより、肌や髪、服の近くでふわっと香る使い方が合います。ヘアミストやソリッドパフュームとの重ね使いも、ディプティックらしい楽しみ方です。
評判では、生花のよう、甘すぎない、上品、清楚、自然なバラ、職場でも使いやすいという声があります。一方で、青臭い、草っぽい、持続が控えめ、価格に対して穏やかすぎるという意見もあります。特にオードパルファンは、バラの華やかさだけでなく植物の青さをどう受け取るかで評価が分かれます。ローズを「甘い女性的な花」として期待すると控えめですが、「水分を含んだ植物」として見ると、かなり完成度の高い表現です。
オー ローズの魅力は、ローズを美しい花としてだけでなく、植物として見ているところです。花びら、果汁、ハーブ、蕾、葉、茎。かわいらしいだけではなく、少し青く、少し苦く、だからこそ透明です。ライチと青い蕾がほどく透明なローズという余韻が、この香りのいちばんディプティックらしい部分です。


