「フルオラル」は、1990年代のアクアティックな香水を彩ったカロンを、青い植物の香りで捉え直した作品です。ナタリー・ファイストハウアーは、海の透明感を、月夜の海辺に茂る植物や波間で光るプランクトンのイメージに重ねました。
ファイストハウアーは、澄んだ水の香りに使われてきたこの素材を、まったく異なる環境に置きました。ルバーブ、ブラックカラントの芽、トマトの葉による、蛍光色に近いほど明るいグリーンを背後から当て、カロンの透明感を強めています。月夜の海辺の密林や、波間で光るプランクトンが、そのイメージとして語られています。
ピンクペッパーの刺激とローズが加わり、ソマリア産インセンスが墨のように深い背景をつくります。インセンスの金属的な冷たい光がカロンの塩気と響き合い、シダーウッドが全体に乾いた骨格を与えます。
明暗と質感の差が大きいこの構成の中で、よく知られた分子は見慣れない表情を見せます。海の香りでありながら、90年代の海とは違う姿がこの作品の狙いです。







