春のサン=ジェルマン、昼前のカフェテラス。ジュル エ マッドがこのエクストレに託したのは、一秒ほどで終わる出来事です。通りを渡ってくる見知らぬ男性と目が合い、彼は歩道の段差を踏み外すと、その失敗を優雅なお辞儀に変えて去っていきます。残された女性は、彼の姿から想像した香りでその空白を満たします。物語はそこで終わりません。白昼夢の香りが今度は本当に漂い、引き返してきた彼がまっすぐ近づいてきます。
香りは、この空想から現実へ移る流れをなぞります。グレープフルーツとマンダリンにルバーブを重ねた、緑のはじけるような爽やかさは、テラスを渡る春のそよ風です。フリージアやロータスフラワーの花は控えめに添えられ、やがて力強いムスクがサンダルウッド、パチュリと溶け合います。ブランドはこの構成を、木とムスクのアコードが最初の爽やかさを抱きしめる、と表現しています。
古典的で現代的、男性的で女性的、親しみがあるのに唯一無二。ブランドが掲げるこの二面性は、物語で思い描かれる、柔らかいのに男らしい香りの姿とも重なります。調香はドロテ・ピオ。








