ブラックベリー&ベイ
ジョー マローン ロンドン「ブラックベリー&ベイ」は、酸っぱいベリーと青い月桂樹が走るグリーンフルーティです。甘い果実ではなく、英国の森を思わせる青さと乾いた木の余韻が軽やかに残ります。
#87 · 2025-08-14
香水の基本情報と第一印象
Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン)「Blackberry & Bay(ブラックベリー&ベイ)」は、2012年に発表されたコロンです。公式ストーリーは、秋の森でブラックベリーを摘んだ幼少期の記憶。公式ページでは、酸味のあるブラックベリーに、摘みたてのベイのフレッシュさが重なり、秋の森の空気を思わせる香りとして紹介されています。
第一印象は、甘いベリーではなく、酸っぱい果汁と葉の青さです。ブラックベリーという名前からジャムやキャンディを想像すると、かなり違って感じると思います。果実はみずみずしいのに、すぐ横に葉や茎のようなグリーンがあり、全体がきゅっと引き締まります。
この香りを一言で表すなら、酸っぱいベリーと青い月桂樹が走る、英国の森の肌香。ブラックベリー&ベイは、フルーティ香水でありながら、甘さよりも酸味、青さ、乾いた木の余韻が主役です。ジョー マローン ロンドンらしい透明な作りですが、果実を可愛く見せるのではなく、英国の野外の記憶として見せています。
ボトルから想像する軽やかさはありますが、香りの中身は意外と硬質です。ベリーの赤紫色より、葉をつぶしたときの緑、枝の乾いた手触り、少し汗ばむ昼の外気が印象に残ります。だから、単なる好感度の高い香水というより、果実を青く切り取るセンスが光る一本です。
調香師・ブランドの背景と制作秘話
ジョー マローン ロンドンは、1994年に英国で始まったフレグランスブランドです。クリアボトル、黒いリボン、クリーム色の箱、香りを重ねるスタイルで知られ、現在もギフト性と日常性を両立したブランドとして人気があります。ブラックベリー&ベイも、コロンだけでなくボディ製品やキャンドルに展開され、香りを生活の中へ広げる設計になっています。
調香師はファブリス・ペルグラン。ディプティックのド ソンなどでも知られるフランスの調香師で、素材を自然な情景として組み立てる力があります。この作品でも、ブラックベリーを甘い果物として閉じ込めず、ベイリーフ、ガルバナム、シダーウッドと合わせて、森の茂みの中で果実を摘む記憶に変えています。
ローンチ時から語られるテーマは「幼少期のブラックベリー摘み」です。ただ懐かしいだけではなく、子どもの手に残る果汁、葉をこすった青い匂い、足元の木や土の乾きまで含めているところが面白い。無垢な記憶を、甘いノスタルジーではなく、かなりグリーンで快活な香りにしたのがこの作品の個性です。
ジョー マローン ロンドンの中では、イングリッシュ ペアー&フリージアのような分かりやすい果実の甘さとは違う位置にあります。ブラックベリー&ベイは、果実を主役にしながらも、ベイリーフとシダーウッドで輪郭を削り、ユニセックスに使える明るい苦みを残します。
香りの詳細分析
トップでは、ブラックベリーが最初に弾けます。熟したジャムではなく、まだ酸が残る果汁です。公式説明では、ブラックカラントのつぼみがフルーティさに深みと酸味を与え、ブッコツリーがグリーントーンを強めるとされています。だから入口は甘いより、青くて少しシャープです。
ミドルでは、ベイリーフとガルバナムが香りの中心を作ります。ベイリーフはローリエのように青く、少しスパイシーで、果実の甘さを引き締めます。ガルバナムは樹脂的で鮮烈なグリーンを足し、ベリーを屋内のデザートではなく、森の茂みの果実へ移します。
ラストでは、シダーウッドが乾いた木の余韻を残します。強いスモークや重い樹脂ではなく、すっと乾いたウッディです。ベリーの酸味とベイの青さが落ち着いたあと、シダーウッドが香りの輪郭を締め、清潔で少しマニッシュな印象へ着地します。
時間変化は、酸っぱい果汁、青い葉、乾いた木という流れです。大きく甘くなる香りではないので、最初から最後まで軽快です。ただし、肌によってはベイリーフやガルバナムの青さが強く出て、メンズライク、トニックっぽいと感じることもあります。そこがこの香水の好き嫌いを分けるポイントです。
試香では、吹きつけた直後のブラックベリーだけで決めない方がいいです。10分ほどで葉の青さが前に出て、30分後にはシダーウッドの乾きが全体を締めます。ベリーが自分の肌で甘く残るのか、青さが強く残るのか、その差を見ると購入判断がしやすくなります。
他の香水との比較・ポジショニング
第85回で扱ったL'Artisan Parfumeur(ラルチザン パフューム)「Mûre et Musc(ミュール エ ムスク)」と比べると、同じベリーでも方向はかなり違います。ミュール エ ムスクはブラックベリーとホワイトムスクで柔らかく肌に溶けます。ブラックベリー&ベイはムスクを前に出さず、ベイリーフとシダーで青く乾いた方向へ進みます。
Diptyque(ディプティック)「L'Ombre dans l'Eau(ロンブル ダン ロー)」と比べると、ロンブル ダン ローはカシスの葉とローズが作る水辺の庭です。ブラックベリー&ベイはローズの詩情よりも、ベリーの酸味と葉の明るさが前に出ます。どちらもグリーンですが、こちらの方が快活で日中向きです。
同じブランド内では、イングリッシュ ペアー&フリージアより甘さが少なく、ウッド セージ&シー ソルトより果実感があります。ライム バジル&マンダリンがシトラスとハーブの切れ味なら、ブラックベリー&ベイは酸っぱいベリーと月桂樹の青い切れ味です。
レイヤリングでは、グレープフルーツを重ねると果汁の酸がさらに明るくなり、ピオニー&ブラッシュ スエードを重ねると果実の硬さに柔らかい花とスエード感が足されます。単体では青く感じる人も、重ね方で印象を丸くできます。
購入ガイド・価格・おすすめ度
日本公式の価格改定資料では、コロン30mLが11,880円税込、100mLが23,650円税込とされています。公式ページでは9mL、30mL、100mLのサイズ表示も確認できます。価格や在庫は変わるため、購入時は公式サイトや百貨店の正規販売を確認してください。
おすすめしやすいのは、甘すぎないフルーティ、グリーン、軽いウッディを探す人です。春夏の日中、白シャツ、オフィス、休日の外出、暑い日の気分転換に合います。重く残る香水ではなく、近距離で清潔に香るので、香水を強く主張したくない場面にも使いやすいです。
注意点は、持続と青さです。コロンなので香りは比較的軽く、長時間の拡散を求める人には物足りない可能性があります。また、ブラックベリーの甘さを期待すると、ベイリーフとガルバナムの青さが意外に強く感じられます。購入前は、最初の果汁感だけでなく、30分後のグリーンの残り方を見たい一本です。
サイズ選びでは、初めてなら30mLが扱いやすいです。気に入って日中の定番にするなら100mLも合理的ですが、この香りは季節や肌で青さの出方が変わります。まず小さいサイズや店頭試香で、夏の湿度でも快適かを確認すると失敗しにくいです。
実際の使用感・シーン・評判
実際の使用感は、かなり軽快です。つけた瞬間は酸っぱいベリーが明るく出て、すぐに葉の青さが追いかけてきます。香りが甘く膨らむのではなく、外の空気を含んだまま肌に残るので、湿度の高い日でも使いやすいタイプです。
好意的な評価では、甘すぎない、爽やか、男女どちらでも使いやすい、唯一無二、オフィスにも合う、といった声が多く見られます。ジョー マローン ロンドンらしく、レイヤリングしやすい点も魅力です。公式でもグレープフルーツでよりフレッシュに、ピオニー&ブラッシュ スエードで温かみを足す提案があります。
一方で、すぐ消える、グリーンが強い、メンズライク、トニックっぽい、という声もあります。ブラックベリー&ベイは、万人向けの甘いベリーではありません。酸味と青さを楽しむ香りです。そこが合えば、朝のシャツや休日の外出に自然になじむ、かなり完成度の高い日常香になります。


