ハロウィン
1997年に生まれたハロウィンは、スミレとグリーンライムにバナナを重ね、花から温かな木へ進むオードトワレです。調香師マックス・ガヴァリーは、ヘスス・デル・ポゾのファッション世界から光と影の二面性を描きました。
#530 · 2026-10-31
香水の基本情報と第一印象
ジェイ デル ポゾのハロウィンは、1997年に生まれたオードトワレです。ブランドはもともとジェイ デル ポゾの名前で知られてきましたが、今はハロウィンという名前そのものがブランドになっています。名前から秋の夜を思い浮かべるかもしれません。けれども、香りの入口はスミレとグリーンライム。そこへバナナの果実を思わせる香りが加わり、明るく意外な始まりを作ります。
この作品が描くのは、いつも春が続く、もう一つの世界です。花が開く季節を思わせる軽やかさは、最初の緑を帯びた爽やかさからも感じられます。一方で、香りが進むと甘い花が増し、最後には木とインセンスの温かさが現れます。春の明るさだけで終わらないところが、ハロウィンの持ち味です。
香調は、緑のすっきりした印象と粉を思わせる柔らかさを持つフローラルと表現されています。花に温かさを重ねた半オリエンタルという表現も、この後半を思えば自然です。最初から重い甘さが続くのではなく、爽やかな花、甘い花、温かな木へと重心が移ります。
スミレの繊細さとライムの青さは、昼の外出にも合わせやすい組み合わせです。そこへバナナの果実を思わせる香りが重なり、始まりに意外性を添えます。
春夏の昼が、まず試したい場面です。涼しい秋の日には、後半のサンダルウッドとインセンスにも目を向けてみてください。名前の季節感と、実際に広がる香りの表情。その両方を楽しめる一本です。
調香師・ブランドの背景と制作秘話
ハロウィンを作った調香師は、マックス・ガヴァリーです。香水の街グラースで生まれ、父は庭師、祖父はラベンダーを育てて蒸留していました。幼いころには家の近くでジャスミンやラベンダーを摘んだといいます。花の香りが身近にあった人が、この作品ではスミレやチュベローズの異なる表情を重ねています。
ガヴァリーは1959年にロティエ・フィスで仕事を始め、1966年に香料会社アイエフエフへ移りました。のちに創作部門を率いた経歴を持ちます。ただ、ハロウィンの背景を知るうえで大切なのは、年表よりも彼が着想源として挙げたものです。それは、ジェイ デル ポゾのブランドでファッションを手がけたデザイナー、ヘスス・デル・ポゾが築いたファッションの世界と、女性たちへの思いでした。
ガヴァリーが香りに重ねたかったのは「光と影」「無垢と誘惑」。ハロウィンという名前には、天使らしさと少し魔女めいた魅力を併せ持つ女性像を込めたと語っています。明るい花と温かな木が同じ香りの中にあるのは、その二面性を感じ取る手掛かりにもなります。
彼が特に好きな花として挙げるのがチュベローズです。夜に手で摘む繊細な花について語り、その香りを女性の魅力に結び付けました。ハロウィンのミドルでは、チュベローズだけを強く押し出さず、マグノリアやスミレ、ピンクペッパーと一緒に置いています。花の甘さの中に軽い刺激が残る組み合わせです。
ボトルは、透明ガラスの「現代的なアンフォラ」と表現されています。アンフォラは液体を入れる壺のこと。その器に収められているのは「魔法の薬」だという言葉は、香水名が持つ少し不思議な物語と響き合います。ガヴァリーは、街で自分の作った香りをまとった人に出会うと嬉しいとも語っています。
香りの詳細分析
ハロウィンの香りは、トップ、ミドル、ラストへ進む構成です。最初に現れるのはスミレ、グリーンライム、バナナ。スミレの柔らかな花の香りに、ライムの青さを残した爽やかさが重なります。そこへバナナの果実らしさが入るため、単純な柑橘の始まりにはなりません。
このバナナは、後に続くバニラと合わせて甘さだけを想像すると、少し見落としやすい素材です。トップではライムのすっきりした感触とスミレの繊細さに並び、始まりに意外性を添えます。果実の香りが花へ橋を架けるように、明るさを保ったままミドルへ進みます。
ミドルでは、マグノリア、スミレ、チュベローズが甘い花の層を作り、ピンクペッパーが軽い刺激を添えます。トップにもいたスミレがここでも続くため、爽やかな始まりと花の中心が切れずにつながります。チュベローズの濃い甘さだけに寄らず、複数の花が重なる柔らかさを味わえます。
ラストを支えるのは、サンダルウッド、インセンス、バニラです。サンダルウッドの木の温かさに、インセンスの香ばしさとバニラの甘さが重なります。最初の緑を帯びた爽やかさから比べると、落ち着いた表情です。それでも花から木へ移る流れがあるので、温かさだけが突然現れる印象にはなりません。
全体を通すと、スミレとライムのすっきりした花、バナナの果実感、甘い花々、木とインセンスという順に表情が変わります。緑の爽やかさと粉を思わせる柔らかさ、そして後半の温かさが、一つの香りに収まっています。名前にある神秘性は暗さ一色ではなく、明るい花と並んで感じられます。
香りの強さや残り方には肌による違いがあります。遠くまで届く強さを求めるより、近い距離で花から木への動きを確かめたい香水です。試すときは、最初の意外な果実感だけで決めず、甘い花と温かなラストまで見届けると、作品の輪郭がつかめます。
他の香水との比較・ポジショニング
バナナという始まりに惹かれたら、コントワール・シュド・パシフィックのバニラ・バナナと比べると違いが分かります。どちらもバナナを入口に持ちますが、バニラ・バナナはオレンジ、バナナの葉、ホワイトラムを重ね、甘く南国らしい果実感を前に出します。ハロウィンではバナナにグリーンライムとスミレが並び、その後は花と木へ。果実の甘さを中心に楽しむなら前者、昼にも花の変化を楽しむなら後者です。
スミレを軸に比べる相手は、ゲランのアンソレンス オーデパルファンです。両作にスミレがある一方、アンソレンスは赤い果実、アイリス、オレンジブロッサムとともに、スミレの粉を思わせる柔らかさを強調します。ハロウィンはグリーンライムから始まり、マグノリアやチュベローズへ進む構成。スミレを主役としてじっくり味わうならアンソレンス、柑橘から複数の花へ移る動きも欲しいならハロウィンが候補になります。
チュベローズの存在感を確かめるなら、フレデリック・マルのカーナル フラワーが対照的です。カーナル フラワーはチュベローズを主役に、水っぽい果実を思わせる香りとミルキーな香りで、その青さと濃厚さを表します。ハロウィンのチュベローズはマグノリア、スミレ、ピンクペッパーと一緒に香り、前後にはライムと温かな木もあります。チュベローズに集中したいなら前者、花に爽やかな始まりと木の余韻も求めるなら後者です。
この3本と比べると、ハロウィンは一つの花や果実を強く押し出す香りとは違う位置にあります。バナナは入口の意外性、スミレは始まりと中心をつなぐ花、チュベローズは甘い花々の一部です。それぞれを追いながら、最後にサンダルウッドとインセンスの温かさへ進む。その移り変わりが、選ぶ理由になります。
購入ガイド・価格・おすすめ度
ハロウィンのオードトワレには、30ml、50ml、100ml、200mlが掲載されています。まず肌で確かめたい人や持ち歩きを考える人には小さい容量、自宅で続けて使いたい人には大きい容量という選び方ができます。どの容量も香りは同じなので、使う量や置き場所に合わせて容量を決められます。同じ名を持つハロウィン キスとハロウィン ブルー ドロップは、どちらも原作とは別の香りです。
購入前には、最初のスミレとグリーンライムだけでなく、花の中心と温かなラストまで試したいところです。バナナの果実感を期待して選ぶ場合も、後半はマグノリアやチュベローズ、サンダルウッドへ移ります。甘いバナナを長く楽しむ香水を探しているなら、バニラ・バナナとの違いが決め手になるでしょう。
スミレの柔らかさが好きでも、粉っぽい花だけを求める人には、ライムの青さやピンクペッパーの刺激が意外かもしれません。反対に、花の香りを楽しみつつ、明るい始まりと木の温かさの両方が欲しい人には合います。チュベローズを強く主役にしたい人は、カーナル フラワーとも比べてみてください。
価格や販売状況は容量や購入先で変わるため、購入時に公式サイトで最新情報を確かめてください。香りの好みを判断するときは、名前から連想する季節よりも、肌で感じる花の明るさと後半の温かさを基準にするのがよさそうです。
一本を通して楽しみたいのは、爽やかな花から甘い花、木へ進む変化です。近い距離で穏やかに香るものを探している人にも候補になります。強い広がりを第一条件にするなら、実際につける場面で香り方を確かめてから容量を選ぶと安心です。
実際の使用感・シーン・評判
公式は、一年を通して楽しめる香りとしています。中でも第一候補は春夏の昼です。スミレとグリーンライムの爽やかさ、続く花の明るさが、昼の外出に自然になじみます。軽いシャツやブラウスで出かける日に、近い距離で花の香りを楽しむ使い方が似合います。
涼しい秋の日には、サンダルウッドとインセンスの温かさが別の魅力になります。薄手のニットで歩くような場面なら、最初の爽やかさから落ち着いたラストまで追えます。
利用者からは、柔らかなスミレと澄んだ水を思わせる印象を好む声があります。一方で、肌では香りが控えめで、遠くまでは届きにくいと感じる声もあります。持続の感じ方も分かれます。人と近い距離で話す昼の外出なら、その穏やかな広がりを生かせます。
最初のライムの爽やかさが心地よくても、時間とともに甘い花とバニラが加わります。出かける直前の印象だけではなく、少し経ってからの香りも確かめると、使う場面を決めやすくなります。
ハロウィンは、名前から思い描く秋の夜に閉じた香りではありません。春を思わせる花の明るさがあり、後半には木とインセンスの温かさがある。昼にまとっても、涼しい日に選んでも、その二つの表情を近くで楽しめる一本です。


