イラン 49

ル ラボのイラン 49は、イランイランとタヒチ産クチナシの豊かな花を、パチュリ、オークモス、ベチバー、サンダルウッド、ベンゾインの暗い土台で支えたシプレーフローラルです。公式はトップ、ミドル、ベースへ分けず、七つの素材をキーノートとして示し、肌によっては花の甘さが、別の肌では苔や乾いた木の苦みが前に立ちます。同じ制作過程から生まれたリス 41が白い花をバニラとムスクの明るさへ向けるのに対し、イラン 49は花を森の陰影へ導きます。

#493 · 2026-09-24

Le Labo / YLANG 49

香水の基本情報と第一印象

ル ラボのイラン 49は、2013年に登場したオード パルファムです。香調はシプレーフローラル。イランイランとタヒチ産クチナシの豊かな花に、苔や木を思わせる暗い下地が重なり、明るい花だけでは終わらない奥行きを持っています。ル ラボの香水名についている数字は、その香りに使われている原料の数を表すとされています。

第一印象は、肌によってかなり違います。イランイランとクチナシの厚みを強く感じる人もいれば、パチュリの深い緑やオークモスのほろ苦さ、乾いた木の印象が早く出る人もいます。甘く明るい花だけを期待していると、苔や根の暗さに驚くかもしれません。そのギャップこそが、この香りの個性です。

ボトルは、ラベルを貼ったシンプルなガラスボトルです。ル ラボでは、購入するときにラベルへ名前やメッセージを入れてもらうこともできます。

調香師・ブランドの背景と制作秘話

調香師はフランク・フォルクルです。ドイツ生まれで、叔父の農場の匂いや雨が、幼い頃の香りの記憶として残っているそうです。10代を過ごしたパリで香水に関心を持ち、調香の学校ISIPCAで学んだ後、香料会社のHaarmann & Reimerへ進みました。

ティアレは、タヒチを象徴する白い花です。フォルクルは1997年に、このティアレをテーマにした香りを手がけました。タヒチ出身の奥さんとの縁が、ティアレへの関心のきっかけだったと語っています。南国の花を以前から扱ってきた調香師です。

2013年の取材で、ル ラボの共同創業者は、フローラルの香りを作るために複数の案を約2年試しても1つに絞れず、方向の異なるリス 41とイラン 49を対になる新作として送り出したと語っています。

ブランドのル ラボは、フランス語で「研究室」を意味する名前です。2006年にエドゥアール・ロスキとファブリス・ペノがニューヨークで設立し、最初の店舗はノリータ地区に置かれたとされています。丁寧な手仕事と、時間をかけて香水を作る考え方を掲げ、2014年にはエスティ ローダーの傘下に入ったと報じられています。

香りの詳細分析

香りの中心は、イランイランとタヒチ産クチナシです。タヒチでは、このクチナシをプアノアノアと呼びます。イランイランは甘く濃厚で、クリーミーな南国の花。クチナシも、甘く厚みのある白い花の香りです。

そこに、パチュリ、オークモス、ベチバー、サンダルウッド、ベンゾインの5つが、暗く官能的な下地として重なります。7つの素材は、トップ・ミドル・ベースのように香る順番を示したものではなく、花と下地の組み合わせとして示されています。つけたときは、どれが先に出るかよりも、花と苔、木の気配が肌でどう重なるかに注目すると、この香りの特徴がつかみやすくなります。

公式ページでは、この香りを2つのイメージで紹介しています。1つは、森の中で豊かな花束を抱えて歩く情景。もう1つはバッハの曲で、1つのメロディーに別のメロディーが重なり、全体で厚みが生まれる音楽に例えています。花の明るさに苔や木が重なって、ひとつのまとまりになる。それがイラン 49の構成です。

他の香水との比較・ポジショニング

比べるなら、2013年に同時に発表された、同じル ラボのリス 41です。発売時のレビューでは、リス 41は白い花が前に出る香り、イラン 49はイランイランにオークモスやパチュリが重なるシプレーとして対比されました。白い花の明るさを楽しみたいならリス 41、花に苔や木の影まで求めるならイラン 49、という選び方ができます。

発売当時のあるレビューでは、イラン 49はレ ネのマヌマリアの「都会的ないとこ」のようだと例えられています。マヌマリアも南国の花を豊かに使った香りですが、イラン 49は苔やベチバーで引き締めた、都会的なシプレーとして描かれています。

ほかにも、比べて語られる香水があります。クリニークのアロマティクス エリクサーは、苔やパチュリ、薬草を思わせる硬さを持つ力強いフローラルシプレとして並べられます。白い花に苔や木の苦みが重なる香りならイラン 49、薬草的で硬いシプレを求めるならアロマティクス エリクサーが候補です。

イヴ・サンローランのリヴ ゴーシュとは、粉を思わせる石けんの香りや、切ったばかりの緑の茎のような印象が共通点として挙げられています。リヴ ゴーシュは石けんのような清潔感のある花の香りで、花の下に苔や木の乾きを感じたいならイラン 49が合います。

購入ガイド・価格・おすすめ度

価格は、ディスカバリーサイズの1.5 mlが990円、15 mlが14,300円、50 mlが32,230円、100 mlが47,190円です。まず1.5 mlで試してから、使う頻度に合わせて容量を選べます。価格は変わることがあるので、購入前に最新の情報を確認してください。

持ち歩きたい人には、10 mlが3本入ったトラベルチューブもあります。

性別の指定はありません。花と苔の組み合わせが好みに合うかで選ぶのがよさそうです。豊かな花と苔のあるシプレーに惹かれる人には試す価値のある一本ですが、パチュリの強さが苦手な人は、少量サイズで肌に試してから選ぶと安心です。

実際の使用感・シーン・評判

使いどころは、春・秋・冬など、涼しい気候に合わせやすいという感想が多いです。夏なら、暑い日の昼より涼しい夜に、少なめにつけるのがおすすめです。

つけはじめの1時間ほどは広がりが強く、そのあとは肌の近くで長く香ります。ある詳しい着用例では、4時間を過ぎたころから広がりが弱まり、8時間前後で肌の近くにとどまる香りになりました。半日以上残ったという感想や、翌日までほんのり残ったと感じる人もいます。豊かな花や苔が好きという声がある一方で、つけたての濃さやパチュリの強さが気になるという声もあります。乾いた苔、クリーミーな花、石けんのような香りなど、感じ方にも幅があります。

ただし、湿度の高い環境では約2時間でかなり弱くなったという例もあり、気候によって残り方は変わります。紙では苦手だった香りが、肌では花らしく変わったという声もあるので、試すときはムエットより肌で確かめるのがおすすめです。涼しい季節のジャケットやウールなど、落ち着いた装いとも合わせやすい香りです。

肌だけでなく、翌日の衣服や、吹きかけて3日後の枕に香りが残っていたという声もあります。香りを主役にしたい夕方から夜の外出や、涼しい日のお出かけに向く一本です。一方で、食事の席や職場、乗り物など、周りへの配慮が必要な場面では、量を控えめにするのが安心です。

強さが気になるなら、まず少量をつけて、つけた直後と数時間後の変化を確かめてみてください。

香水・ブランド・調香師