キュイール 28

キュイール 28は、レザーと木にムスク、スパイシーで暗いバニラが重なる、ドバイのシティ エクスクルーシブです。調香はナタリー・ローソン。力強い香りは秋冬の涼しい夕方に合い、少量から楽しめます。

#478 · 2026-09-09

Le Labo / CUIR 28

香水の基本情報と第一印象

ル ラボのキュイール 28は、レザーと木の力強さにムスクとバニラを重ねたオード パルファムです。2013年に登場した、ドバイのシティ エクスクルーシブ。都市ごとに用意される限定コレクションの一本で、革の存在感をしっかり楽しみたい人に向きます。

バニラという名前から、アイスクリームのような甘さを想像するかもしれません。しかし、この作品ではもっとスパイシーで、暗い匂いを含みます。レザーの厚みに木が重なり、ムスクとバニラが加わっても、甘いお菓子のように丸くまとまるわけではありません。

花や柑橘の明るさを求める日とは違う、濃い革の香りを楽しむ日。その日の装いにどれくらいの存在感がほしいかを考えると、キュイール 28の性格がつかみやすくなります。華やかな甘さを足すというより、レザーにある強さを身近で楽しむ一本です。

調香師・ブランドの背景と制作秘話

香りを手がけたのはナタリー・ローソンです。香水作りで知られるフランスのグラースで育ち、父は香料会社ルールの化学者でした。1980年に同社の調香学校へ進み、当時は女性が少なかった仕事へ挑戦します。現在は香料会社ディーエスエム フィルメニッヒで、熟練の調香師を表すマスター パフューマーとして紹介されています。

ラリックのアンクル ノワール オードトワレや、ペルル ドゥ ラリック オード パルファムも彼女の作品です。創作で大切にするのは、香りを着ける人の感情に届くこと。素材の質と量を吟味し、簡潔でも心に残る香りを目指します。要素が少ないほど、それぞれの質や配合が目立つ。簡潔な処方は、簡単な処方という意味ではないのです。

ル ラボの共同創業者エディ・ロスキも、キュイール 28を好き嫌いの分かれる香りとして語っています。レザー、木、ムスク、バニラは馴染みのある名前でも、組合せや強さで出来上がる性格は違います。素材表以上に、嗅いだ人に何が起こるかを重視する姿勢が、この作品にも表れています。

ドバイの香りに添えられた比喩は、汗とガソリンを除いたクラシックなバイク。革のシートを思い浮かべると、力強いレザーの印象と結びつきます。都市の風景だけに頼らず、一台のバイクの存在感で香りの個性を伝えているところが印象的です。

香りの詳細分析

中心はレザーとウッドです。革のしっかりした厚みに木の質感が重なり、暗く力強い印象を作ります。花や果実の明るい甘さとは違う、重みのある匂い。甘さだけでまとまらない理由は、この革と木の組合せにもあります。

ムスク調のノートは、レザーと木に重なるもう一つの要素です。革の硬さのそばに、柔らかく肌を思わせる匂いが加わる、と考えると想像しやすいでしょう。強い革だけを取り出すより、木とムスクが一緒にあるところに、この香りの厚みを感じられます。

天然バニラ・アブソリュートには、甘さとともにスパイシーでタールを思わせる暗い面があります。黒く粘りのあるものを連想するこの表現は、実物のタールが入っているという意味ではありません。焦げたような暗さまで含んだバニラが、革の匂いに重なる感覚です。

やがて残るのは、甘く温かなアンバー調の余韻。バニラがあっても菓子の甘さに留まらず、革の存在感が保たれます。四つのノートは時間別の段階ではなく、重なり合う素材として捉えたい組合せです。最初のレザーだけで決めず、バニラやムスクの残り方にも目を向けると、一本の中の強さと柔らかさが見えてきます。

他の香水との比較・ポジショニング

革とバニラの接点から比べたいのが、ル ラボのパチュリ 24です。こちらではバーチという木を思わせる、煙と革のような匂いが早い段階から強く出ます。暗い香りをバニラが和らげる組合せで、スモーキーな印象を楽しみたい人にはわかりやすい比較相手です。

キュイール 28では、レザーと木に重なるムスク、バニラ自体のスパイシーな暗さに注目したくなります。煙を思わせる強さを中心にするか、革に木とムスクが重なるところを楽しむか。似ているから片方で十分と決めるより、それぞれで強く感じる匂いを確かめると違いがつかめるでしょう。

ムスク系の比較相手は、同じル ラボのアナザー 13。肌を思わせる独特のムスク系素材に、ジャスミンやモスを合わせた作品です。ムスクの透明な印象を楽しむアナザー 13に対して、キュイール 28はレザーとバニラの存在感が明確です。選ぶ目安は強さの優劣より、何の匂いを中心に着けたいか。革をしっかり楽しみたいなら、キュイール 28の個性を確かめる価値があります。

購入ガイド・価格・おすすめ度

キュイール 28はドバイのル ラボで一年を通して販売されます。日本のオンラインでは、1.5mlのサンプルが8月と9月、フルサイズは9月の販売です。日本価格は1.5mlが1,760円、15mlが22,990円、50mlが52,250円、100mlが76,560円。いずれも同じオード パルファムの容量違いです。

50mlと100mlは、世界のラボ併設店舗で通年リフィルに対応しています。最初に買える時期と、使い終えた瓶へ香水を補充する時期が違う仕組みです。持ち歩く量や、リフィルを利用するかも容量を選ぶ手がかりになります。最新の価格や取扱状況は、購入時に公式サイトで確かめてください。

透明な円筒形の瓶と銀色のキャップ、白いラベルは、ル ラボに共通する実験室のような姿。ブランドのボトルを手がけたマザリーヌ・パスカリ・デザインは、重みのあるガラスとつやを抑えた金属、個人向けに記入するラベルで、手仕事を感じる容器を作りました。都市ごとの装飾を増やすより、同じ容器の中身と名前で違いを伝えています。

価格だけでなく、革の強さを気持ちよく感じられるかが大切な判断材料です。初めてなら1.5mlから。甘いバニラを主役にした香水を探している場合は、レザーとスパイスの存在感まで確かめたいところです。

実際の使用感・シーン・評判

着けた人の感想には、レザーの力強さを楽しむものと、動物的な革の匂いに馴染みにくさを覚えるものがあります。時間が経つと木やムスク、バニラが穏やかに残るという報告もあり、序盤の強さだけで好みを決めにくい香りです。

特に試したいのは、秋と冬の涼しい夕方。冷たい空気の中の街歩きや、広さのあるバーなら、レザーと暗いバニラの濃さを楽しめそうです。春なら肌寒い日を選んで少量で。真夏の蒸し暑い日には、その濃さが重く感じられやすく、積極的には勧めにくい一本です。

服装なら、ネイビーのジャケットに生成りのニット、濃い色のパンツなど。革の香りだから革の服に揃える必要はなく、柔らかな布と合わせても楽しめます。香りと衣服の両方を強くするより、普段の装いへレザーの存在感を少し足すくらいから想像してみてください。

持ちのよさを評価する声もあるため、初めは肌に1プッシュ。すぐにつけ足さず、数時間の出方を見てみたい香りです。人と近い食事や混んだ電車では特に量を控えて。まず単体で、革とバニラのどちらを強く感じるかを確かめると、自分に心地よい着け方を探しやすくなります。

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