アバヴ ザ ウェーブス

明るいベルガモットとカルダモンから、二つのお茶、インセンス、乾いた木へ進むティーフレグランス。船乗りを守る女神・媽祖(まそ)への敬意と、お茶を飲んで立ち止まり、深呼吸する時間を背景にしています。

#472 · 2026-09-03

Etat Libre d'Orange / Above the Waves

香水の基本情報と第一印象

エタ・リーブル・ドランジュのアバヴ ザ ウェーブスは、2025年に登場したオードパルファムです。ブランドにとって初のティーフレグランスで、現在は50ミリリットルと100ミリリットルが案内されています。

作品名は「波の上」という意味です。海の香りかと思うかもしれませんが、実際の中心にあるのは、グリーンマテとセイロンティー、インセンス、乾いた木です。最初のベルガモットとカルダモンは明るく、風通しのよい入口を作ります。そこから青い茶葉の渋みへ進み、最後は木の落ち着きが肌に残ります。

海の香りでも、甘いミルクティーでもありません。茶葉の青さや渋み、すっきりしたスパイス、煙ったさを抑えたインセンスを楽しむ香りです。「波の上」という作品名からは想像しにくいお茶が主役になる。その意外さが、最初の驚きです。

調香師・ブランドの背景と制作秘話

調香師はマチュー・ナルダンです。香水産業の中心地グラースの調香師家系で育ったと紹介され、香料会社ロベルテで学びました。現在は香料会社マンの調香師です。古い香料の作法と現代の技術をつなぐ人物として語られています。

本作では、お茶とインセンスが持つ落ち着きに、ベルガモットとカルダモンの軽やかさを合わせています。インセンスを重い煙にせず、茶葉の静かな渋みを支える位置へ置いたところに、伝統と現代性を同時に扱う仕事が見えます。

エタ・リーブル・ドランジュは、エティエンヌ・ド・スワールトが2006年にパリで設立しました。ブランド名は、創設者が生まれた南アフリカの旧オレンジ自由国に由来します。調香師が自由に作る場という宣言でもあり、挑発的な題名と物語を持つ作品で知られるブランドです。

アバヴ ザ ウェーブスが選んだのは、大声の挑発ではなく、お茶の儀式と呼吸の静けさでした。異なる素材をただ並べるのではなく、一度立ち止まる時間へ結びつけた作品です。

香りの詳細分析

公式分類は、フレッシュ、アロマティック、グリーン。トップ、ミドル、ベースの三段階が示されています。トップはベルガモット、カルダモン、インセンスです。ベルガモットの明るい柑橘へ、カルダモンの爽やかなスパイス感が重なります。インセンスは重い煙を前に出さず、次に現れる茶葉へ静けさを添えます。

ミドルはグリーンマテ、セイロンティー、ローズ。グリーンマテの青い葉と、セイロンティーの深い渋みが中心です。ローズは大きな花束になるのではなく、二つのお茶の角をやわらげます。甘さではなく、葉の色や手触りを思わせる場面です。

ベースはトンカビーン、シダー、ベチバーです。トンカビーンがごくやわらかな丸みを加え、シダーの乾いた木とベチバーの土っぽい緑へ続きます。甘いデザートのようにはならず、最後まで乾いた木が残ります。

全体では、明るい柑橘とスパイス、青く渋い二つのお茶、ほのかな丸みを持つ乾いた木へ移ります。香りの流れがはっきりしているので、試すときは最初の数分だけでなく、茶葉が前へ出る中盤と、木が残る後半まで待つと選びやすくなります。

他の香水との比較・ポジショニング

ル ラボのテ ノワール 29とは、茶葉の渋みと木の陰影を楽しむ点が共通します。より暗く深い紅茶と木を求めるならテ ノワール 29、ベルガモットとカルダモンの明るさ、グリーンマテの青さを求めるならアバヴ ザ ウェーブスと選び分けられます。

ニシャネのウーロンチャとは、シトラスとお茶の透明感が比較の軸です。ウーロンチャは明るい柑橘と透き通るお茶を前に出します。アバヴ ザ ウェーブスは、爽やかさの後にインセンス、トンカビーン、ベチバーが続き、穏やかな木の香りが残ります。

ミラーハリスのティー トニックも、マチュー・ナルダンがお茶を題材にした作品です。ティー トニックは茶の爽やかさを前に出します。アバヴ ザ ウェーブスは、インセンス、トンカビーン、シダー、ベチバーまで重ね、爽やかさの後に穏やかな木の香りを残します。

三本と比べると、アバヴ ザ ウェーブスは、明るい柑橘から茶葉と木へ進み、インセンスの静けさも欲しい人の候補です。お茶を甘さではなく、渋みと乾いた木で楽しみたいときに個性がはっきりします。

購入ガイド・価格・おすすめ度

2025年には、まず台湾限定版が発売され、その後、同年10月に国際流通へ広がりました。台湾限定版は台湾ウーロン茶や台湾特産の木を掲げ、三つのお茶を語る紹介もあります。現行国際版は、カルダモンの爽やかなスパイスとトンカビーンのやわらかな甘さを加え、グリーンマテとセイロンティーから乾いた木へ進みます。

二つの版は、題名とお茶の主題を共有しながら、香りの構成が異なります。台湾のお茶と木を強く打ち出した限定版に対し、現行国際版の特徴は、スパイスの明るさとトンカビーンの丸みです。見分けるときは、次に挙げる国際版のノート表記が手掛かりになります。

国際版のノート表記では、カルダモン、グリーンマテ、トンカビーンが確認の手掛かりです。現在の公式案内は50ミリリットルと100ミリリットル。どちらも同じオードパルファムで、濃度違いではなく容量違いです。

透明な角型ガラスに、白い長方形ラベル、赤・白・青の丸いマーク、金属色のスプレーキャップ。共通する角型ボトルと丸いマークが、物語の異なる作品をブランドらしくつないでいます。

購入前には、トップだけで決めず、中盤の二つのお茶と後半の木まで肌で確かめてください。持続には個人差があります。価格、容量、在庫は変わるため、最新情報は公式サイトで確認するのが確実です。

実際の使用感・シーン・評判

第一候補は春や秋の日中です。シトラスと緑のお茶の軽さに、インセンスと木の落ち着きが重なります。暖かい季節に使いやすいと感じる人もいるため、初夏にも候補となるでしょう。真夏を第一候補にするかは意見が分かれます。

職場、読書、ギャラリー、旅の移動前など、自分の呼吸と集中を整えたい場面に向きます。春秋なら、コットンのシャツ、ハイゲージニット、軽いジャケットのような、素材感のすっきりした服に合わせやすいでしょう。食事の席や、静かで狭い室内では、最初の柑橘とスパイスを考えて少量から試します。

香りの広がりは穏やか寄りです。周囲を大きく包むより、近い距離でお茶と木が分かるタイプ。持続は、三〜四時間で肌に近づく人もいれば、六時間以上感じる人もいます。持続の感じ方は肌によって異なります。

この作品では、媽祖(まそ)という女神も大切な存在です。ブランド公式は、この香水を船乗りを守る媽祖に捧げた作品と説明しています。海を進む人を守る女神だからこそ、「波の上」という作品名へ自然につながります。

ここで語られるのは、目の前の波に振り回されず、少し離れて全体を見るという考え方です。お茶を飲んでいったん立ち止まり、深呼吸する。慌ただしいときにも気持ちを落ち着け、周りを見る余裕を持つ時間が、女神の物語とお茶の儀式をつないでいます。

選ぶ決め手は、マリン調らしい塩気ではありません。青い茶葉の渋みとインセンス、乾いた木が、近い距離で作る静けさです。春や秋の日中にまとい、お茶から木へ移る時間を追うと、この香りが描く「波の上」が見えてきます。

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