No.02 ル・ロン・フォン

ベルギーの家族の苗圃を、ヒノキで描いた静かなウッディ香です。明るい木からシダーウッドとパチョリの土へ進み、ホワイトムスクの柔らかさを肌の近くへ残します。

#465 · 2026-08-27

Maison Louis Marie / No.02 Le Long Fond Eau de Parfum

香水の基本情報と第一印象

メゾン・ルイ・マリーのNo.02 ル・ロン・フォン オー・ド・パルファムは、ヒノキ、シダーウッド、パチョリ、ホワイトムスクで組み立てたウッディ香です。発売年は2015年とされていますが、現行のブランド案内には年の記載がありません。スプレーは50ミリリットルと10ミリリットルがあり、同じ名前のパフュームオイルやキャンドル、ボディ製品も展開されています。

名前の由来は、創業者一家が大切にするベルギーの苗圃です。祖父が1979年に設立し、現在も続く場所。ヒノキの間から柔らかな光が差す森林散策の静けさを、家族の記憶と重ねています。

第一印象は、明るく乾いた木です。削りたての木材や新しい木製家具、檜風呂を思わせる人もいます。ただし、ヒノキだけを写実的に見せる香りではありません。シダーウッドの乾いた芯、パチョリの土、ホワイトムスクの淡い甘さが続き、森の景色を肌の近くへ戻します。

一言で表すなら、家族の場所を静かな体温へ変えたウッディ香。木の香りは欲しいけれど、煙やスパイスを強く出さず、明るさと柔らかさを近い距離で楽しみたい人に輪郭が見えやすいでしょう。

調香師・ブランドの背景と制作秘話

No.02 ル・ロン・フォンの個人調香師クレジットは非公表です。創業者のマリー・デュ・プティ・トゥアールは、香りの着想と方向性を考え、ラボで技術者たちと要素を組み立てると話しています。一人の調香師名へ作品を集約するより、彼女がどんな記憶を香りへ渡したのかを見る方が、本作の成り立ちに近づけます。

マリー・デュ・プティ・トゥアールは、パリでイザベラ・ブロウのもとファッションの仕事を始め、ロンドン・サンデー・タイムズのファッションエディターを経て、ロサンゼルスでファインアート写真を扱いました。その後、自宅で作ったキャンドルへの要望が増え、キッチンでの小さな制作がメゾン・ルイ・マリーへ育っていきます。

フランスとベルギーで過ごした幼少期、山歩き、夏の家の記憶が、新しい香りの出発点になる。No.02では、その記憶がル・ロン・フォンという場所の名前へ結びつきます。ベルギーの植物をそのまま列挙するのではなく、ヒノキの木漏れ日で静けさを描いたところに、ファインアート写真を扱った創業者らしい視点を感じます。

ボトルも飾りすぎません。透明な角型ガラス、簡潔な白いラベル、暗色の円筒形キャップ。外箱は100% FSC認証紙とされ、クランプ式スプレーは一般的な路上回収で再資源化しにくい可能性があるため、専用の回収拠点が案内されています。見た目の静けさだけでなく、使い終えた後まで説明する姿勢が残ります。

香りの詳細分析

構造は、トップ、ミドル、ベースの三段階です。トップはヒノキウッド。つけ始めは、清々しい針葉樹、削りたての木、新しい木製デスクのような乾いた輪郭が立ちます。人によっては、墨のような乾きや青い植物の気配を感じることもあります。

ミドルはシダーウッドとパチョリです。シダーウッドが木の芯を作り、パチョリが土や根の湿りを加えます。室内や布では木が前に出て、屋外や湿度のある環境では青い植物や土を強く感じたという人もいます。一本の材木だった景色に、苗圃の地面が見えてくる区間です。

ベースはホワイトムスク。木と土の角をやわらげ、淡い甘さ、粉感、清潔な肌の気配へ落ち着きます。お香を思わせる静けさとして感じる人もいれば、終盤は香りの主張が弱くなったと感じる人もいます。具体的なムスク分子や配合比率は示されていません。白いムスクというノートが、木質をどう丸めるかを追う香りです。

変化は、劇的に場面が切り替わる三幕ではありません。明るいヒノキ、乾いたシダー、土を含むパチョリ、肌に近いムスクの焦点が少しずつ移ります。色に置き換えるなら、明るい木肌から土色、最後は薄い白。涼しい入口から、ごく淡い体温へ向かいます。

他の香水との比較・ポジショニング

コム デ ギャルソンのヒノキとは、ヒノキを中心に、木と静けさ、瞑想的な空気を描く点が共通します。ヒノキはサイプレス、カンファー、パイン、インセンス、モス、ベチバーが作る冷たさ、樹脂、煙へ向かいます。No.02 ル・ロン・フォンは、パチョリの土とホワイトムスクの柔らかさへ。針葉樹と煙の奥行きか、明るい木と肌の距離かで選べます。

5W1Hの09 WOODとは、ヒノキとパチョリで木材の陰影を見せるところが接点です。09 WOODは、ベルガモット、カルダモン、黒胡椒、サフラン、レザー、ヒバを含み、スパイスと革の厚みがあります。No.02 ル・ロン・フォンは四つのノートに絞られ、より透明で静かです。古い木材と革の深さを求めるか、朝の苗圃の明るさを求めるか。選ぶ景色が異なります。

イソップのヒュイルも、森林、針葉樹、静かな時間を主題にするウッディです。ヒュイルはサイプレス、フランキンセンス、ベチバーと煙の暗さが中心。No.02 ル・ロン・フォンはヒノキの明るさとホワイトムスクの柔らかさがあり、肌へ近く軽い方向です。夜の森と煙ならヒュイル。木漏れ日のある苗圃と柔らかな肌香ならNo.02 ル・ロン・フォンが候補になります。

三作と並べると、本作はヒノキ香の中でも軽さと土、ムスクを選ぶ位置にあります。煙の冷たさ、革とスパイスの厚み、暗い森の深さではなく、明るい木を肌の近くへ置きたい人のための選択です。

購入ガイド・価格・おすすめ度

今回の対象は、アルコールベースのスプレー式オー・ド・パルファムです。50ミリリットルと10ミリリットルを選べます。50ミリリットルは自宅で継続して使う候補、10ミリリットルは持ち運びや少量から試したいときの候補です。価格、在庫、配送条件は地域と時点で変わるため、購入前に公式サイトで最新情報を確認してください。

同名のパフュームオイルは、サフラワー油、ヒマワリ油、ローズマリー葉エキスを含む植物油ベースのロールオンです。15ミリリットルと3ミリリットルがあり、香りを肌の近くへ置きやすい使い方です。スプレーは空気へ開く感覚、オイルは塗った場所へ寄り添う感覚。上下関係ではなく、基剤と距離の違いです。

二つを重ね、深さと持続を加える使い方も案内されています。初めてなら、それぞれを単体で試すと違いが分かりやすくなります。紙だけでなく肌へ少量をつけ、序盤のヒノキだけで決めず、シダーとパチョリ、ホワイトムスクまで待ってください。

向いているのは、木の香りを日常で使いたい人、濃い煙や甘いアンバーより、明るいヒノキと柔らかなムスクを選びたい人です。反対に、檜風呂のような写実性だけを求める人、強い拡散や一定の長い持続を重視する人は、購入前に一日の変化を確かめたいところです。

実際の使用感・シーン・評判

春は、青い木と土の湿りを、新緑や雨上がりの空気へ合わせやすい季節です。初夏や梅雨どきは、ヒノキの清涼感とパチョリの湿りが景色になりやすいという声があります。秋には、乾いたシダー、土、ホワイトムスクの薄い温かさが自然に立ちます。真夏の高温多湿では、ムスクの甘さや序盤の鋭さを強く感じる場合があるため、少量から始める方が安心です。

朝から日中の職場、書店、ギャラリー、在宅作業、読書、庭園の散歩、静かな食事へ。白シャツ、生成りのリネン、オリーブ、ライトグレー、ネイビーなど、自然素材と明るい無彩色にも合わせやすいでしょう。華やかな夜より、木の香りを近い距離で落ち着いて楽しむ場面が似合います。

拡散は肌の近くへ落ち着くという声が多い一方、中程度に広がると感じる人もいます。持続も、早く弱まる、2〜3時間後にムスクへ移る、一日残ると幅があります。肌、布、屋外で、木、青い植物、土のどこが前に出るかが変わることも。固定時間より、自分の肌と環境で見た方が確かです。

好意的な人は、檜風呂、新しい木製家具、ログハウスを思わせる清々しさ、甘さの少なさ、日常での使いやすさを挙げます。一方で、最初のヒノキを鋭く感じる、変化が少ない、控えめすぎるという人もいます。写実的なヒノキを求めるか、ヒノキから土とムスクへ移る静かな空気を求めるか。最後まで待つと、この香りを選ぶ理由が見えてきます。

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