ナンニャン
緑茶と柑橘の光からサフラン、ジャスミン、レザーへ進み、長い旅の後に見直したシンガポールを白いリネンと革で描くエキストレです。
#448 · 2026-08-10
香水の基本情報と第一印象
Maison de L'Asie(メゾン ド ラズィ)のNANYANG(ナンニャン)は、シンガポールを舞台にしたChapter 01(チャプター ワン)に属するエキストレ ド パルファムです。白いリネンスーツを思わせる清潔さと、大胆なレザーの影。その二つを一緒に置き、長い旅の後に見直した故郷を香りで表します。
つけたては、グリーンティーと柑橘の明るい空気が先に立ちます。軽い茶香水に見えますが、中心にはサフランの乾いた温度とジャスミンの白さがある。最後はレザー、サンダルウッド、ムスクが肌へ根づきます。白い光が消えるのではなく、革の暗さを伴って残るのが本作の個性です。
公式説明に登場するスモーキー ブラックティーとモルトは、独立したピラミッドの段階ではありません。緑茶の明るさに、煙と温かさを重ねる質感として読むと、軽さと深さの両方が分かりやすくなります。古いものと新しいもの、東洋と西洋を一つに混ぜる作品だからです。
ボトルは白から淡いグレーの角丸形で、金色の円筒キャップとネックを合わせます。正面の金色プレートには作品名と濃度表記。白い面に金色の光が乗る見た目は、リネンの明るさと帰郷の温度を静かに支えています。香水は15mL、50mL、100mLの三つの容量から選べます。
調香師・ブランドの背景と制作秘話
本作の個人調香師名は公表されていません。メゾン ド ラズィはフランスのパフューマリーや調香の専門家と協業し、香料とフランス香水の技法へアジアの物語を重ねます。人物名を前へ出すのではなく、創業者の経験と場所の記憶を中心に据えた作品です。
創業者Elizabeth Liau(エリザベス・リアウ)はシンガポールで育ち、金融、アート、旅行の領域を経てブランドを立ち上げました。2018年に母を亡くした後、失った人への郷愁と慰めを香りに残そうと考えたことが出発点です。各コレクションを場所ごとの章として構成し、最初の章では母、恋人、故郷という三つの記憶をシンガポールへ結びました。
ナンニャンは、長い海外生活と旅を経て帰国したリアウの経験につながります。外から故郷を見直したことで、伝統と進歩、東洋と西洋、過去と現在が共存していると気づく。その視点を、明るい茶と深いレザーの対照へ置き換えました。
ブランドはナンニャンとLost Lovers(ロスト ラヴァーズ)のレイヤリングも提案しています。茶、レザー、木の輪郭へ、ローズとスエード系の柔らかさを足す組み合わせです。故郷の記憶へ恋の記憶を重ねる点でも、同じ章の物語がつながります。単に香調を甘くするのではなく、章の中にある二つの物語を肌の上で合わせる提案です。
香りの詳細分析
トップはGreen Tea(グリーンティー)、Bergamot(ベルガモット)、Lemon(レモン)です。緑茶のグリーンな静けさに、果皮の明るさとほのかな苦みが入ります。最初は冷たいレモンティーのように感じられることがあり、白いリネンの清潔さを作る段階です。
ハートはSaffron(サフラン)とJasmine(ジャスミン)。サフランの乾いた温かさが、透明だった茶に厚みを加えます。ジャスミンは甘さを大きく広げず、白い花の明るさで革へ向かう途中をつなぎます。ここで香りの光と影が同じ画面に入ります。
ベースはLeather(レザー)、Sandalwood(サンダルウッド)、Musk(ムスク)です。レザーが輪郭を作り、サンダルウッドとムスクが角を丸めて肌へ寄せます。茶葉の乾燥感だけで終わらず、根を持つ革が残る。この段階で、明るい茶香水という第一印象が、白い光と深い影を併せ持つ作品へ変わります。
他の香水との比較・ポジショニング
Le Labo(ル ラボ)のTHÉ NOIR 29(テ ノワール 29)とは、ベルガモットとブラックティーを軸に明るさと暗さを往復する点が共通します。テ ノワール 29はフィグ、ベイリーフ、シダー、タバコへ向かい、乾いた葉の余韻が中心です。ナンニャンはレモン、緑茶、サフラン、ジャスミン、レザーを使い、白い花と革の対照を強く見せます。
BDK Parfums(ビーディーケー パルファム)のGris Charnel(グリ シャルネル)は、ブラックティーとサンダルウッドを、フィグ、カルダモン、アイリス、トンカでクリーミーに包みます。柔らかな都会性ならグリ シャルネル。柑橘と緑茶の清潔さに、サフランレザーの鋭い影を求めるなら本作です。
Miller Harris(ミラー ハリス)のTea Tonique Extrait de Parfum(ティー トニック エキストレ ド パルファム)は、アールグレイ、緑茶、マテ、ジャスミンティーへ煙を重ね、茶そのものの多層性を描きます。ナンニャンの中心は、茶の種類の多さではなく、サフラン、レザー、帰郷の物語。多種類の茶と煙を追うか、茶と革で場所の記憶を着るかが選び分けの軸です。
購入ガイド・価格・おすすめ度
香水として確認できる展開は、ナンニャン エキストレ ド パルファムの一つです。日本では15mLが14,300円、50mLが30,800円、100mLが42,900円。濃度違いではなく、同じ香りを容量で選びます。初めてなら15mLから始めると、本作を日常で使えるかを見極めやすくなります。価格、容量、在庫は変わるため、購入時は公式サイトや正規取扱店の最新表示を確かめてください。
ルームスプレーやヘア&ボディミストもありますが、香水の別濃度ではなく用途の異なる製品です。日常的に使うなら50mL、長く使うと決まっているなら100mLが候補になります。
向くのは、軽い茶だけでは物足りず、白い花、乾いたサフラン、レザーの陰影まで楽しみたい人です。反対に、甘いミルクティーや、終始透明なシトラスティーを求める場合は、肌の上で革が開くところまで慎重に見たい一本です。
実際の使用感・シーン・評判
使いやすいのは春から秋の日中です。白いシャツ、リネン、薄手のジャケットに合わせると、茶と柑橘の明るさを生かせます。ギャラリー、静かな食事、日中の仕事など、会話距離で香りの光と影を見せたい場面にも向きます。高濃度なので、オフィスや真夏の密室では少量から始めるのが実用的です。
持続は長いと感じる人が多く、肌で10〜12時間残るという声もあります。ただし、肌では短いという反対例もあるため一律ではありません。最初は明るく広がり、数時間後に腕一本分ほどへ収まるという受け止め方があります。強さより、時間がたった後のレザーと木の距離を確かめるのが要点です。
好意的な感想は、レモンと茶の清潔感、長い持続、革と木の端正な残り方へ集まります。好みが分かれるのはサフランとレザーです。肌によっては、乾いたゴムを思わせる質感に寄ることがあります。紙で明るい茶だけを見て決めず、数時間後に革がどう残るかまで試す。そこで白いリネンと影の両方を心地よく感じられるなら、故郷の光を着るという本作の個性がはっきり見えてきます。


