オ・パフメ テ ヴェール

1992年に茶を使わず茶の印象を描いた原点を、天然グリーンティーエキス、白いネロリ、ベルガモットの泡で読み直した2025年のオードトワレです。若い茶葉の青さと白い花が、春夏の日中に使いやすい静かな残香へ移ります。

#445 · 2026-08-07

Bvlgari / Eau Parfumée Thé Vert

香水の基本情報と第一印象

Bvlgari(ブルガリ)のEau Parfumée Thé Vert(オ・パフメ テ ヴェール)は、2025年に刷新されたシトラス・アロマティックのオードトワレです。原点は1992年に登場したブルガリ初の香水。ブランドは世界初のティーフレグランスと位置づけています。今回扱うのは旧オーデコロンではなく、商品名から「au」を外し、天然グリーンティーエキスを取り入れた現行EDTです。

第一印象は、甘い抹茶菓子やレモンティーではありません。揉んだ若葉、乾いた茶葉、白いネロリ、ベルガモットの細かな泡が、淡いセラドングリーンの空気を作ります。色は青磁に近い薄緑、温度は涼しい室温、質感は曇りガラスと薄い紙の中間。軽いのに輪郭が消えず、香りを遠くへ飛ばすより、肌の周りへ静かな余白を置きます。

処方はISO 16128に基づき94%天然由来。75mLと150mLを中心に、350mLのシグネチャーサイズも展開されます。天然由来率は処方全体の指標で、低刺激やアレルゲンがないことを意味する数字ではありません。

調香師・ブランドの背景と制作秘話

原点を作ったJean-Claude Ellena(ジャン=クロード・エレナ)は、グラースの香料に関わる家系に育ち、若い頃からAntoine Chiris(アントワーヌ・シリス)で香料の現場を経験しました。2004年から2016年まではHermès(エルメス)の専属調香師を務め、Un Jardin sur le Nil(ナイルの庭)やTerre d’Hermès(テール ドゥ エルメス)を手がけています。

エレナは、少ない素材で空気、光、余白を描く調香師として知られます。1992年の初代で面白いのは、茶葉の抽出物を使わなかったこと。ヘディオンやベータ・イオノンなどを組み合わせ、飲み物を写すのではなく「茶を思い出す静けさ」を作りました。2025年版は天然グリーンティーエキスを含みます。1992年は香料の組み合わせで茶らしさを作り、2025年は天然茶エキスを使って作り直したことが、本作の核心です。

ブルガリはSotirio Bulgari(ソティリオ・ブルガリ)が1884年にローマで創業した宝飾メゾンです。初代のテ ヴェールは、重要顧客へ350mLボトルで贈る香りとして始まりました。反響から販売へ広がり、宝飾ブティックの贈り物が、茶香水というジャンルの入口になります。

香りの詳細分析

現行公式はトップ、ミドル、ベースの3段に分けず、Green Tea Extract(グリーンティーエキス)、Neroli Petals Accord(ネロリペタルアコード)、Bergamot Essence(ベルガモットエッセンス)を並列のキーノートとして示します。ここでは、新しい役割を足さず、肌で知覚しやすい順に動きを追います。

つけた直後は、ベルガモットの苦みを含むシトラスが、冷たい光と細かな泡のように走ります。すぐ隣に若い茶葉の青さとネロリの白い花があり、レモンジュースのような果汁感には傾きません。三つが別々に登場するというより、最初から同じ画面に立っています。

中盤はベルガモットの速度が落ち、グリーンティーエキスの乾いた葉と、ネロリペタルの柔らかな花が中心になります。茶は甘い抹茶ラテではなく、揉んだ若葉や湯気の消え際に残る渋み。ネロリは濃厚なオレンジブロッサムではなく、薄い花弁と清潔な石けんの間です。肌によって白い花がクリーミーに出るか、石けんやパウダーに寄るかが分かれます。

終盤は、乾いた茶葉と白い花の残像が肌へ近づきます。木やムスクを感じる声もありますが、現行公式のキーノートではありません。持続は3〜6時間という声が中心で、序盤は中程度、その後は近距離。旧EDCの短さやExtrêmeの強さとは分けて考えます。

他の香水との比較・ポジショニング

Elizabeth Arden(エリザベス アーデン)のGreen Tea(グリーン ティー)とは、明るいシトラスと緑茶の清涼感が共通します。グリーン ティーはレモン、ミント、甘い飲み物の親しみやすさへ。オ・パフメ テ ヴェールは甘さを抑え、若葉、白いネロリ、乾いた余白を選びます。

Giorgio Armani Privé(ジョルジオ アルマーニ プリヴェ)のThé Yulong(テ ユーロン)は、緑茶と紅茶の対照、煙、奥行きが持ち味です。本作はより淡く、白い花と若葉へ焦点が近い。茶の陰影を深く見たいならテ ユーロン、薄い緑を静かな距離で使いたいなら本作です。

Nishane(ニシャネ)のWulong Chá(ウーロン チャ)は、果実の甘さ、拡散、持続が強いシトラスティーです。本作は乾いて控えめで、周囲へ広げるより自分の近くへ置きやすい。強さと果実感を選ぶか、白い余白を選ぶかが分かれ目です。

購入ガイド・価格・おすすめ度

日本で報告された価格は75mL 21,340円、150mL 32,780円です。350mLは地域や時期を限定したシグネチャーサイズ。価格、容量、在庫は変わるため、購入時には公式サイトか正規取扱店で最新表示を確認してください。

中古や並行輸入では、1992年のEau Parfumée au Thé Vert EDC、1996年のExtrême(エクストレーム)、2025年のオ・パフメ テ ヴェール EDTが混在します。旧EDCは茶を使わない鋭い透明感、エクストレームはスパイスと木、現行EDTは天然茶エキスとネロリの丸さが軸です。容量だけで決めず、濃度表記と2025年のフロストボトルを確かめます。

新ボトルはローマ建築の円柱を思わせる輪郭に、淡い曇りガラスを組み合わせています。ベージュゴールドのキャップには中国の青磁を思わせる貫入模様、麻由来の紙ラベルには植物図のエンボス。ローマ、茶文化、植物を、説明的な絵ではなく素材の手触りでつないでいます。

試香では、最初のベルガモットだけで決めず、30分ほど待って茶葉とネロリの比率を見ます。旧作の鋭さを求める人、甘くない茶を探す人、白い石けん感が苦手な人では評価が変わります。75mLでも即決せず、肌に残る花の質感まで確かめると、版本違いだけでなく自分との相性も判断しやすくなります。

実際の使用感・シーン・評判

春から夏の日中に最も合わせやすく、初秋の明るい日や朝の身支度にも向きます。オフィス、在宅勤務、ホテル、静かなカフェ、美術館、昼の会食、旅行など、香りで場を支配せず、近距離で清潔に見せたい場面が得意です。白いシャツ、生成りのリネン、薄いグレー、セラドングリーンの軽い服装にもなじみます。

透明で上品、落ち着く、暑い日に使いやすいと感じる人がいる一方、価格に対して淡い、石けんやパウダーが強い、旧版ほど鋭くない、持続が短いと感じる人もいます。同じ薄さが、洗練された余白にも、物足りなさにもなります。

最初は肌へ2〜3プッシュ。軽く感じてもすぐ追加せず、30分後に若葉とネロリの出方を、3時間後に残香の距離を確かめます。1992年の液体を保存した復刻ではなく、当時の茶らしさを今の素材で作り直した香りとして試す。33年越しの茶の余白が自分の日常に必要かを、静かな一日で決めたい作品です。

350mLという始まりを知ると、たっぷり使うことも本作の文化だと分かります。ただし現代の仕事場では、歴史をそのまま使用量へ置き換えません。周囲との距離を優先し、少量で見える茶と花のバランスから始めるのが現実的です。

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