サンタル ヴォルカニック

メゾン クリヴェリ「サンタル ヴォルカニック」は、火山の斜面で焦げたサンダルウッドに出会うような、スモーキーでミネラル感のあるウッディです。サンダルウッドのクリーミーさを、スパイスや鉱物的な乾きが引き締めます。

#354 · 2026-05-08

Maison Crivelli / Santal Volcanique

香水の基本情報と第一印象

Santal Volcanique(サンタル ヴォルカニック)は、Maison Crivelli(メゾン クリヴェリ)が2018年に発表したEau de Parfumです。ブランド創業初期から存在する一本で、公式分類はWoody Spicy Musky。主要原料として、ジンジャー精油、カルダモン精油、リメット精油、サンダルウッド精油、シダー精油、イランイラン精油、コーヒーアブソリュート、ムスクが挙げられています。

第一印象で面白いのは、火山という名前に対して、香りの入口が意外と明るいことです。濃い煙や熱い溶岩が押し寄せるというより、リメットの酸味、ジンジャーの刺激、カルダモンの清涼感が先に立ちます。そこから焙煎コーヒーとシダーの乾きが出て、最後にクリーンなサンダルムスクへ沈む。荒々しい物語を持ちながら、実際には白シャツにも合う距離感を持った香りです。

公式が示す核は、「噴火する火山の斜面で焦げたサンダルウッドに出会う体験」。ただし、単純な焦げ木の香りではありません。冷たいリメットと焙煎コーヒーに宿る、火山灰のサンダル。これがこの作品を理解する一番の近道です。

調香師・ブランドの背景と制作秘話

調香を手がけたRichard Ibanez(リチャード・イバニェス)は、木質やスパイスの陰影を、身につけやすいバランスへ整える感覚に長けた調香師です。Santal Volcaniqueでも、サンダルウッドを甘く丸めるだけでなく、ジンジャー、カルダモン、リメット、コーヒー、シダーを重ね、乾きと火花のあるサンダルウッドへ仕立てています。

Maison Crivelliは、Thibaud Crivelli(ティボー・クリヴェリ)が2018年にパリで創業したブランドです。ティボーはアジア各地で暮らし、香料原料の市場やプランテーションに触れた経験を持つ人物として紹介されます。ブランドの特徴は、単に「どこへ行ったか」を香りにするのではなく、「その瞬間をどう生きたか」を香り、色、音、テクスチャーで再構成することです。

Santal Volcaniqueにも、その多感覚的な作り方がよく出ています。公式コピーには、標高3,700メートル、黒い斜面、酸の灰、乾いたイランイラン、焦げたサンダルウッドとシダー、流れ落ちるコーヒー、弾けるカルダモン、ローストジンジャーといった断片が並びます。香水の説明というより、短い映画の予告編のような言葉です。

香りの詳細分析

公式は、一般的なトップ、ミドル、ベースのピラミッドを厳密には出していません。そのため、ここでは公式の主要原料を軸に、複数の販売店やレビューで一致する体感上の流れとして整理します。

トップは、ジンジャー、カルダモン、リメット。ジンジャーはローストされるような刺激を持ち、カルダモンは弾けるスパイス、リメットはライムに近い酸味と清涼感として働きます。ここは火山の熱というより、スパイスの火花です。重いサンダルウッドに向かう前に、香り全体へ風を通す役割があります。

ミドルでは、コーヒーアブソリュート、シダー、イランイランが見えてきます。コーヒーは甘いカフェラテではなく、焙煎豆の焦げ感、乾いた苦味、立ち上る蒸気の影。シダーは鉛筆削りのようなドライさを作り、イランイランは南国的に大きく咲く花ではなく、乾いた皮膜やわずかなクリーム感として香りを丸めます。

ラストは、サンダルウッドとムスクが中心です。Tam Daoのようなミルキーで瞑想的なサンダルとは違い、Santal Volcaniqueは鉱物的でクリーンなサンダルムスクへ着地します。持続は5〜10時間程度と幅があり、拡散は弱〜中程度。強く遠くへ飛ばすというより、近づいた人に輪郭が届くタイプとして見ると使いやすい香りです。

他の香水との比較・ポジショニング

比較対象として最もわかりやすいのは、Le LaboのSantal 33です。どちらも現代的でジェンダーレスなサンダルウッドですが、Santal 33がレザー、パピルス、スモーキーな都会的乾きへ寄るのに対し、Santal Volcaniqueはリメット、ジンジャー、コーヒーで明るい火花と乾いた苦味を作ります。

DiptyqueのTam Daoともよく対比できます。第146回で扱ったTam Daoは、クリーミーでミルキー、森や寺院の静けさを感じるサンダルウッド。Santal Volcaniqueはそこに火山、スパイス、コーヒー、鉱物的な風通しを入れた、もっと動きのあるサンダルです。

Serge LutensのSantal Majusculeとは、サンダルウッドを主役にする点が共通します。ただしSantal Majusculeがローズやカカオを伴う甘く官能的なサンダルとして語られるのに対し、Santal Volcaniqueは甘さを抑え、苦味とスパイス、清潔感を前に出します。サンダルウッドを「静けさ」ではなく「標高3,700メートルの空気と火山灰」で見る一本です。

購入ガイド・価格・おすすめ度

現在確認できる中心仕様はEau de Parfumです。EDT、Extrait、Parfumなどの公式な濃度違いは確認されていません。フランス公式では30ml 90ユーロ、100ml 190ユーロ。日本正規流通では30ml 15,400円、100ml 34,650円という価格情報が確認されています。

おすすめ度が高いのは、普通のミルキーサンダルでは少し物足りない人、Santal 33系のモダンなサンダルは好きだけれど、もっと柑橘やコーヒーの動きがほしい人です。春秋の日中、オフィス、カフェ、美術館、近距離の会食など、清潔感と個性を両方出したい場面に向きます。

一方で、濃い煙、甘いサンダル、強い拡散を期待するとズレる可能性があります。持続や広がりの評価も肌質差が大きいため、まずは少量でトップからラストまで追うのが安全です。特にこの香りは、最初のスパイスだけで判断せず、中盤のコーヒーとシダー、後半のサンダルムスクまで見ると印象が変わります。

実際の使用感・シーン・評判

季節は春と秋が最も使いやすいです。リメットとジンジャーの明るさ、サンダルウッドとコーヒーの温かみが、どちらも自然に出ます。冬はウッドとコーヒーが映えますし、夏も酷暑を避けて少量なら、トップの清涼感を楽しめます。ただし高温多湿の密閉空間では、スパイスやコーヒーが重く感じられる可能性があります。

服装は、白シャツ、軽いジャケット、黒いニット、レザー小物、きれいめカジュアルが合います。火山の物語を持つ香りですが、全身を黒く重く作るより、少し抜け感のある装いの方がリメットとムスクの明るさが見えます。

評判ははっきり分かれます。ポジティブには、ジンジャーエールやクラフトコーラのような爽やかさ、人と被らないサンダルウッド、日中にも使える清潔感が評価されます。一方で、名前ほど火山的ではない、持続が弱く感じる、男性的に出る、価格に対して個性の感じ方が分かれる、という声もあります。

この分かれ方こそ、Santal Volcaniqueらしさです。火山という荒々しいコンセプトを持ちながら、香りは意外とクリーンで近距離向き。冷たいリメットと焙煎コーヒーに宿る、火山灰のサンダル。そのズレを楽しめる人にとって、Maison Crivelliらしい多感覚的な一本になります。

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