ユズキ

エディット「ユズキ」は、天然ゆずの力強さと深いウッディが交差するシトラスアロマティックです。鮮やかな果皮の明るさの奥に、朱肉ブランドの記憶を思わせる落ち着いた芳香が残ります。

#199 · 2025-12-04

Edit / Yuzuki

香水の基本情報と第一印象

Yuzuki(ゆずき)は、日本発のフレグランスブランド、ÉDIT(h)(エディット)が手がけるシトラス・アロマティックの香りです。和の天然ゆずとフゼア、そして深いウッディが交差する、非常に洗練されたフレグランスとして知られています。

一般的な柚子の香水といえば、果汁が弾けるようなジューシーで明るい香りを想像する方が多いかもしれません。しかし実際にYuzukiを試すと、甘さを厳格に抑えたビターで鋭いグリーンの衝撃から始まり、やがて静寂な寺院のような深いウッディへと変化していくことに驚かされます。実はこの香りの根底には、120年以上続く老舗の「高級練り朱肉」に使われてきたアジア由来の伝統香料が潜んでいます。

ビジネスシーンや、自立した大人のオン・オフの切り替えにふさわしい、パーソナルスペースで静かに香る密着型の作品です。

調香師・ブランドの背景と制作秘話

ÉDIT(h)(エディット)は2018年に設立されたブランドで、1905年に創業した老舗朱肉ブランド「日光印」の6代目社長・葛和建太郎氏によって創設されました。ブランド名の「Edit(編集)」には、歴史を編集するという意味が込められており、同時にフランスの伝説的歌手エディット・ピアフへのオマージュでもあります。

デジタル化により縮小する印章業界に危機感を抱く中、自社の高級練り朱肉の蓋を開けた瞬間に漂う清涼感とスパイシーな芳香に、フレグランスとしての潜在価値を見出したことがブランド出発のきっかけとなりました。

調香を担当したのは気鋭の日本人調香師です。「香水に対する常識や先入観を無視し、自由に面白さを追求してほしい」というディレクションのもと、希少な日本産天然柚子精油を贅沢に使用し、ベースには日光印が扱う伝統的なアジア由来の香料を組み込んでいます。元音楽プロデューサーである葛和氏の経験を活かし、クラシックな作曲ではなく既存の要素をリミックスして定石を崩す「音楽的調香メソッド」が採用されました。この斬新なアプローチは、パリでの発表時に多くのフランス人調香師たちから絶賛されたと言われています。

香りの詳細分析

全体を通して、天然ゆずの力強さとウッディ、フローラルが奏でるビター&スウィートの世界が表現されています。従来の定石や黄金比をあえて無視する音楽的アプローチで構築されており、伝統的なオークモスをパチュリに、ベルガモットを柚子に置き換えることで「日本的解釈を加えた和のフゼア」を実現している点が大きな特徴です。

**トップノート:張り詰めた緊張感と鮮烈なグリーン** スプレーした瞬間に弾けるのは、柚子の果皮を爪で傷つけた瞬間に飛散するような、オイリーでビターな香りです。そこに、むせ返るほど青々しいガルバナムの強烈なグリーンノートが重なり合います。朝の光や霧のかかった庭を思わせる、非常にシャープでフレッシュ、かつ鮮烈な質感が0〜30分程度持続し、張り詰めた緊張感をもたらします。

**ミドルノート:厳格に抑制された知的な透明感**

つけてから15〜30分ほど経過すると、トップの鋭い衝撃が和らぎ、ゼラニウムの青みを帯びたローズ様の香りや、ラベンダーのアロマティックなハーバルノートが姿を現します。そこにミュゲのほのかな光が加わり、洗練されたフゼア調の骨格が浮かび上がります。ジュースのような甘さは全くなく、アイロンのかかった白いシャツや、身だしなみを整える時間を思わせるクリアなみずみずしさが、およそ2時間程度続きます。

**ラストノート:肌に馴染むクリーミーな静寂** 2時間以降は、非常にクリーミーで少しパウダリーなサンダルウッド、ドライで鉛筆の削りくずのようなシダーウッド、そして湿った苔や墨汁のようなパチュリが、アーシーでスモーキーな深みをもたらします。夕暮れの静寂や、古い日本家屋の木の柱、柚子湯の湯気を思わせる温もりが肌に定着し、長く穏やかに香ります。冷たい緊張感から肌に馴染む温もりへと変化するグラデーションが、この香水の最も美しい瞬間です。

他の香水との比較・ポジショニング

Yuzukiの個性をより深く理解するために、いくつかのアプローチが異なる名香と比較してみましょう。

まず、同じく日本のブランドによる柚子をテーマにしたJ-Scent(ジェイセント)の「Yuzu(ゆず)」との違いです。J-ScentのYuzuが、タイムのアクセントを伴うピュアな果実感や柚子湯の湯気感をストレートに表現した明るい仕上がりであるのに対し、ÉDIT(h)のYuzukiは、複雑なフゼア構造とアーシーなウッディベースを持つ、ビターでシリアスな香調です。より成熟した知的な印象を求める方にはYuzukiが適しています。

次に、サンダルウッドの美しさで知られるDiptyque(ディプティック)の「Tam Dao(タムダオ)」。Tam Daoがサンダルウッド単体の美しさを追求した非常にドライでミルキーなウッディに特化しているのに対し、Yuzukiはトップからミドルにかけて鮮烈なシトラス・フゼアの展開があり、季節の変化や動きを感じさせる点に違いがあります。

さらに、同じDiptyqueの「Oyedo(オイエド)」とも個性が異なります。Oyedoがキャンディのように明るく弾けるシトラスの表情を持つのに対し、Yuzukiは甘さを排した深みのあるウッディベースが堅牢に香りを支えています。清潔感と知的さを兼ね備えた、個性的でビターなシトラス・ウッディを探している方に最適な一本です。

購入ガイド・価格・おすすめ度

ÉDIT(h)のYuzukiには、いくつかのバージョンが存在し、ライフスタイルに合わせて選ぶことができます。

最も基本となるオードパルファン(EDP)は、本来の骨格と鋭い柚子からウッディへのドラマチックな変化を楽しみたい方におすすめです。一方、立ち上がりがマイルドな「ソリッドパフューム(練り香水)」は、オフィス使いやパーソナルな癒やしを求める方に最適です。朱肉を練り取るような所作も楽しめ、肌と一体化する穏やかなフゼアを感じられます。さらに、リミックス版として誕生した「Green Velvet(グリーンベルベット)」は、柚子をジンジャーに置き換え、より都会的で柔らかい官能性を求める方に向いています。

また、Yuzukiのガラスボトルは、朱肉用の印鑑ケースを3Dスキャンして設計された独自の長方形をしています。職人の手作業によるヘアライン仕上げが施された重量感のある亜鉛合金製のキャップは、重要な書類に判を押す際の手の感触や責任の重さを隠喩しています。日光印の高級練り朱肉と同様の桐箱に納められており、和の美意識とモダンなデザインが融合した、アートピースのように飾りたくなる佇まいも魅力の一つです。

実際の使用感・シーン・評判

Yuzukiは、春から夏にかけての湿度の高い季節に最適です。新緑と柚子の青さが空気を払い、清々しい気分をもたらしてくれます。同時に、秋冬の寒い時期の朝に浴びるとすっきりと目が覚め、柚子風呂の温もりの連想から通年で美しく香ります。

ビジネスシーンや集中力を高めたい時、または一日の終わりのリラクゼーションや寝香水として、幅広い場面で活躍します。一方で、拡散性が控えめで内省的な香りのため、華やかなパーティーやナイトシーンにはやや不向きかもしれません。シンプルな白シャツや仕立ての良いスーツスタイルなど、清潔感と緊張感のある装いに見事にマッチします。

実際のユーザーからは、「最初は青々しいハーブの匂い全開で、その後は木のお風呂の柚子風呂から上がったような匂いがずっと続く」「よくある石鹸の香りではなく、銭湯でリラックスした後のようないい香り」といった声が寄せられています。トップノートのガルバナムによる鋭いグリーンが非常に強いため、人によっては生い茂る草のような野性味を強く感じて戸惑うこともあるようです。しかし、肌に乗せて時間を置くことで体温と混ざり、見事なウッディの静寂へと落ち着いていく過程を存分に楽しむことができます。

京都を代表する最高級ホテル「パークハイアット京都」のスイートルーム専用バスアメニティにも採用されており、日本の美意識である「引き算の美学」を体現するホテルの空間と深く共鳴しています。伝統産業の技術と素材を新しい形で提示する、文化的使命感を背負った傑作フレグランスです。

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