ミロンガ ベルデ

フエギア 1833「ミロンガ ベルデ」は、甘い葉、火、煙、樹脂、アルゼンチンの夜の音楽を重ねたグリーンスモーキーな香りです。踊りの熱と森の暗さが同居し、甘い緑が煙の中でゆっくり沈みます。

#143 · 2025-10-09

Fueguia 1833 / Milonga Verde

香水の基本情報と第一印象

Fueguia 1833(フエギア 1833)のMilonga Verde(ミロンガ ベルデ)は、2022年に登場したArmonías(アルモニアス)コレクションの香水です。日本公式ページでは100ml Perfumeが72,600円で表示され、30ml Perfume、8ml Pura Esenciaの選択肢も確認できます。公式のメインアロマティックファミリーはグリーン、セカンダリーはスモークです。エディション表記があることもフエギアらしい特徴で、植物原料の採取時期や季節によって香りに揺らぎがあることが前提にされています。

第一印象を一言で言うなら、煙と甘い緑が踊る夜の森の余韻です。青く生きている葉と、火に投げ込まれて煙へ変わる葉。その両方が同時にあります。明るい草原のグリーンではなく、夜の森、焚き火、樹液、乾いた樹脂、遠くで鳴るギターのような香りです。

この香水は、いわゆる万人受けする清潔系ではありません。けれど、グリーン、スモーク、ウッディ、樹脂、甘い葉の質感が好きな人には、かなり記憶に残る一本です。

調香師・ブランドの背景と制作秘話

調香師はJulian Bedel(ジュリアン・ベデル)。2010年にアルゼンチン・ブエノスアイレスでフエギア 1833を創業した人物です。資料では、音楽、絵画、弦楽器製作、ギター、タンゴ、植物学にまたがる背景を持つアーティストとして紹介されます。

フエギア 1833は、南米の自然、先住民文化、植物、文学、音楽を香水へ翻訳するブランドです。ブランド名は、ティエラ・デル・フエゴの先住民少女Fuegia Basket(フエギア・バスケット)や、ダーウィンのビーグル号の文脈と結びつけて語られます。

ミロンガ ベルデの背景にあるのは、アルゼンチンやウルグアイの舞曲であり、踊りの場でもあるミロンガです。さらに、ギターを用いた即興詩の掛け合い、Payada(パジャーダ)のイメージも重なります。香水の構造にAcordeやMelodíaという音楽的な言葉が使われるのも、ベデルの創作背景とよく響き合います。

香りの詳細分析

この香水は、トップ、ミドル、ベースというピラミッドだけで読むより、公式の音楽的な構造で見るほうが自然です。AcordeのTonic noteはAlgarrobo Negro(アルガロボ ネグロ)。黒いアルガロボ、つまりキャロブ系の木で、ナッティ、チョコレート、豆科植物の甘さ、樹液のような粘度を感じさせます。

Dominant noteはLapacho Rosado(ラパチョ ロサード)。ピンクラパチョの木質、花のような甘さ、樹皮や薬草を思わせる深みを加えます。Sub DominantはHojas de Jacarandá(オハス デ ハカランダ)。ジャカランダの葉のグリーン、青さ、冷たい木質感が、煙へ向かう通路になります。

Melodíaには、サイプレスリーフ、インセンス、パロサント・チャコ、シスタス、ベンゾイン、ミルラが並びます。サイプレスの針葉樹らしい青さ、インセンスとミルラの乾いた煙、パロサントの甘い聖木感、シスタスとベンゾインのバルサムが重なり、ただ煙たいだけではない、甘い葉と火の香りを作ります。

他の香水との比較・ポジショニング

Comme des Garçons(コム デ ギャルソン)のAmazingreen(アメイジングリーン)と比べると、共通点は抽象的なグリーンとスモーキーさです。ただしアメイジングリーンは都市的で乾いたグリーン。ミロンガ ベルデは、南米の木、樹液、焚き火、踊りの物語が前に出ます。

The Different Company(ザ ディファレント カンパニー)のSanto Incienso, Sillage Sacré(サント インシエンソ シアージュ サクレ)と比べると、共通点はパロサントとインセンス。サント インシエンソが聖木の静謐さを中心に置くなら、ミロンガ ベルデは甘い葉と煙が動く夜の香りです。

第140回で扱ったザ ディファレント カンパニー Osmanthus(オスマンサス)は、青いシトラスと金木犀が残す紫禁城の記憶でした。ミロンガ ベルデも記憶を扱いますが、花ではなく、葉、煙、火、ギターの記憶です。

購入ガイド・価格・おすすめ度

日本公式ページでは、100ml Perfumeが72,600円です。30ml Perfumeと8ml Pura Esenciaも選択肢として表示されますが、在庫やエディションは時期やギャラリーで変わります。公式ページでは、エディション表記について、同じ表記の製品は同時期に作られたもので、植物を採取した時期や季節により香りの揺らぎがあると説明されています。

おすすめしやすいのは、グリーン、スモーキー、ウッディ、インセンス、パロサント、樹脂、ナッティな甘さが好きな人です。逆に、軽いシトラス、清潔な石鹸系、わかりやすいフローラル、強い拡散を求める人には少し難しいかもしれません。

価格帯も高いので、可能なら少量で試し、肌の上で甘い緑がどう出るか、煙が重くなりすぎないかを見たい香水です。特に30分後以降、アルガロボの甘さと樹脂の煙が自分の肌でどう混ざるかが判断ポイントになります。

実際の使用感・シーン・評判

似合う季節は、秋、春、涼しい夏の夜。冬にも使えますが、火と樹脂の甘さが濃く出る場合があります。シーンは、静かなバー、ギャラリー、音楽イベント、夜の散歩、屋外で火を囲む時間。オフィスで使うなら、かなり少量が安全です。

服装は、黒、深緑、ブラウン、レザー、ウール、リネン、少しラフなジャケット。明るい白シャツより、夜の色や自然素材の服に合います。香りが持つ物語が強いので、日常の清潔感というより、自分の世界観を少し深く出したい日に向いています。

評判では、森の中で焚き火をしているよう、グリーンスモーキーウッディ、甘さがくどくない、嗅ぐほど謎が深まる、文化的な物語がある、という声があります。一方で、高価格、入手性、スモーキーさの癖、個人差、控えめなパフォーマンスは注意点です。

ミロンガ ベルデは、香水をつけるというより、火のそばで始まる一曲を肌に残す香水です。煙、甘い緑、葉の樹液、夜の森。その余韻に惹かれる人には、かなり深く刺さる一本です。

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