パイ

Pi(パイ)は、円周率πの無限性を名前にしたウッディアンバーです。バニラとベンゾインの甘い余韻を、マンダリン、針葉樹、抽象的なアンフィニウムが知的に引き締めます。

#130 · 2025-09-26

Givenchy / Pi

香水の基本情報と第一印象

Givenchy(ジバンシィ)のPi(パイ)は、1998年に登場したメンズ向けオードトワレです。公式ではWoody Amber(ウッディアンバー)とされ、円周率πの無限性、探求、限界を超える姿勢を香りの物語にしています。調香はAlberto Morillas(アルベルト モリヤス)です。

第一印象は、甘いのに理系的、温かいのにどこか硬い、という不思議なバランスです。マンダリンの明るさとパインニードルの緑が入口を作り、すぐに樹脂とウッドの重力が出てきます。今回の興味喚起フレーズは、バニラとベンゾインが灯す無限の余韻。甘さをただのデザートにせず、数式や宇宙のような抽象性へ持っていく香りです。

調香師・ブランドの背景と制作秘話

ジバンシィは、Hubert de Givenchy(ユベール ド ジバンシィ)が築いたフランスのクチュールメゾンです。エレガンス、直線的な美しさ、洗練、そして少し大胆なモダンさを持つブランドで、香水でもクラシックと実験性を行き来してきました。

アルベルト モリヤスは、CK One(シーケーワン)やAcqua di Gio(アクア ディ ジオ)などで知られる現代香水の巨匠です。パイでは、当時のメンズ香水としては大胆な甘さを使いながら、ハーブ、針葉樹、ウッド、樹脂で知的に整えています。ボトルはSerge Mansau(セルジュ マンソー)による幾何学的な造形として語られ、香りのコンセプトを視覚的にも支えています。

香りの詳細分析

トップは、公式ではマンダリンとパインニードルです。マンダリンは明るくジューシーで、針葉樹はグリーンで少し硬い。資料によってはガルバナム、ローズマリー、タラゴン、バジルのようなハーバル感も語られます。甘い香水なのに、最初に来るのは緑の閃きです。

ミドルはアンフィニウム。

これは一般的な花名や果実名ではなく、パイの抽象性を担うハートです。

ネロリやフローラルのニュアンスを思わせる透明感があり、トップの緑とベースの甘さをつなぎます。ここで香りは、ただの柑橘から、少し宇宙的な広がりへ変わります。

ベースは、公式ではアイアンウッドとベンゾインクリスタルです。体感としては、バニラ、トンカ、アーモンド、ガイアックウッドのような甘く温かい要素もよく語られます。ベンゾインはバニラに似た樹脂の甘さを持ち、アイアンウッドがそこへ硬い骨格を与えます。だからパイは、甘いのにだらしなくならないのです。

他の香水との比較・ポジショニング

Jean Paul Gaultier(ジャン ポール ゴルチエ)のLe Male(ル マル)と比べると、パイはラベンダーやミントの清涼感より、樹脂とウッドの温かさが前に出ます。ル マルが甘いフゼアなら、パイは甘いウッディアンバーです。

Mugler(ミュグレー)のA*Men(エンジェルメン)は、コーヒー、キャラメル、パチョリの食べ物感がより強い香水です。パイにも甘さはありますが、ハーブや針葉樹の硬さがあるため、グルマン一辺倒ではありません。Rochas Man(ロシャスマン)よりも、幾何学的で少し理性的な印象です。

Tom Ford(トム フォード)のTobacco Vanille(タバコ バニル)と比べると、パイはより軽く、日常に寄ります。タバコ バニルが重厚なサロンなら、パイは夜の読書やバーのカウンター。甘さはあるけれど、価格帯も雰囲気も、もう少し身近なロングセラーです。

購入ガイド・価格・おすすめ度

公式国際ページでは、50mLと100mLの展開が確認できます。価格や在庫は国、時期、販売店で変わるため、購入時はジバンシィ公式、正規取扱店、百貨店、信頼できるショップで最新情報を確認してください。廃盤説のような話題もありますが、少なくとも現行の公式ページでは商品として掲載されています。

おすすめしやすいのは、バニラ、ベンゾイン、トンカ、甘いメンズ香水、秋冬の夜の香りが好きな人です。逆に、完全に爽やかな香水、真夏向けの軽さ、オフィスで目立たない香りを求める人には重く感じる可能性があります。最初はワンプッシュで十分です。

試香する時は、トップの緑だけで判断しない方がよいです。少し時間が経つと、樹脂とバニラのような温かさが出て、本作らしい甘い重力が見えてきます。肌よりも服に残る甘さが目立つこともあるため、つける場所と量で印象がかなり変わります。香水棚に一本置くなら、軽いシトラスとは別枠の、夜用の甘い柱として考えると選びやすいです。

実際の使用感・シーン・評判

似合うのは、秋冬、夜、デート、バー、読書、音楽、ニット、革靴、少し暗い照明の場所です。香りが強く感じられることがあるため、密室や満員電車、夏の昼には控えめが向きます。甘さがあるので、清潔な服装と合わせるとバランスが取りやすいです。カジュアルすぎる装いより、少し整えた夜の服に合わせると古さより余裕が出ます。

評判では、甘くて色気がある、落ち着く、寝香水にもよい、長く愛用しているという声があります。一方で、甘すぎる、昔っぽい、つけすぎると重い、トップが少しきついという意見もあります。つまり、万人向けの透明な香水ではなく、好きな人には深く刺さる個性派のロングセラーです。

パイの魅力は、甘さに知性を与えたところです。マンダリンと針葉樹の入口、アンフィニウムの抽象的な中盤、アイアンウッドとベンゾインの温かい余韻。バニラとベンゾインが灯す無限の余韻が、1998年の香水を今でも記憶に残る存在にしています。古典でありながら、夜の一本としては今も十分に個性的で、記憶に残ります。

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