ダフネ ブーケ
ペンハリガン「ダフネ ブーケ」は、カシスリーフ、ダフネ、モスでハイグローブの苔庭を描くグリーンフローラルです。英国庭園らしい湿度と気品があり、花の明るさに苔の静かな影が重なります。
#97 · 2025-08-24
香水の基本情報と第一印象
Penhaligon's(ペンハリガン)「Daphne Bouquet(ダフネ ブーケ)」は、2025年に登場した限定オードパルファムです。ハイグローブ ガーデンズとThe King's Foundationとのコラボレーションで、英国王室の私邸庭園にあるスタンパリーに咲くダフネの花に着想しています。
第一印象は、春の庭が一気に開くようなグリーン感です。ブラックカラントリーフの青く酸味のある葉の香りが明るく立ち、そこにダフネの花、タイム、ローズ、ラベンダーが重なります。最後はモスとベチバーが、苔むした庭の湿度へ落とします。
この香りを一言で表すなら、カシスリーフとダフネが芽吹く、ハイグローブの苔庭の肌香。花だけのブーケではなく、葉、苔、木の切り株、朝の庭の空気まで含めたブーケです。華やかさはありますが、甘く重い花束ではなく、英国庭園の端正なグリーンフローラルです。
スタンパリーという背景も重要です。これは、倒木や切り株の間にシダや苔を育てる庭園様式で、ただの花壇よりも湿度、影、木の質感があります。ダフネ ブーケのモスは、その庭の空気を香りの下支えにしています。
調香師・ブランドの背景と制作秘話
ペンハリガンは、英国的な物語を香水にするのが得意なメゾンです。ダフネ ブーケは、2022年のハイグローブ ブーケに続く、ハイグローブ ガーデンズとのコラボレーションとして位置づけられます。香水の売上の一部はThe King's Foundationを支援します。
この作品の舞台は、ハイグローブのスタンパリーです。苔むした切り株、シダ、木陰、春の湿った空気。その中に咲くダフネの花を、香水としてどう再現するかがテーマです。公式コピーでも、ブラックカラントリーフとダフネアコードがモスのベッドから立ち上がるように語られます。
調香師はアントワーヌ・メゾンデュー。彼は、花を重くしすぎず、明るいトップから奥行きのあるベースへ運ぶ構成に強い調香師です。ここでは、ブラックカラントリーフとグレープフルーツで春の芽吹きを出し、ダフネ、タイム、ローズ、ラベンダーで花とハーブの空気を作っています。
面白いのは、ダフネという花を単独の香料としてではなく、庭全体の文脈で見せているところです。花の甘さだけでなく、葉の青さ、苔の湿度、ベチバーの根の乾きまで含めて、ハイグローブの一角を歩くような構成になっています。
香りの詳細分析
トップでは、ブラックカラントリーフとグレープフルーツが立ち上がります。カシス果実の甘さではなく、葉や芽の青さ、少し酸味のあるグリーン感が中心です。グレープフルーツは苦みのある明るさを加え、春の朝のような入口を作ります。
ミドルでは、ダフネフラワー、タイム、ローズ、ラベンダーが香りの中心になります。ダフネは沈丁花を思わせる明るい花のアコードとして出て、タイムがハーブの輪郭を加えます。ローズとラベンダーは、花を英国庭園らしく端正に整えます。
ラストでは、モスとベチバーが残ります。モスは苔むした切り株や湿った庭の影を作り、ベチバーは根や乾いた木質の線を添えます。花と葉で始まった香りが、最後は庭の地面へ静かに戻る流れです。
時間変化は、青い葉の入口、ダフネとハーブの明るい花、モスとベチバーの庭の余韻という流れです。甘いフローラルではなく、グリーン、アロマティック、モッシーの要素が強いので、春から初夏の日中に映えます。
肌では、ブラックカラントリーフが強く出る人と、ダフネの花が柔らかく出る人で印象が変わります。葉の青さが好きなら爽快ですが、カシスリーフ特有の鋭さが苦手な人には少し強く感じるかもしれません。試香では、最初の青さがモスの余韻へどう落ちるかを見てください。
もう少し時間が経つと、香りは花束というより庭の地面へ寄っていきます。モスが出ると、きれいな花の後ろに苔むした木片や湿った土の気配が出て、単なる清潔なグリーンではなくなります。ここが好きなら、ダフネ ブーケはかなり立体的に感じられます。
反対に、ブラックカラントリーフの青さとモスの湿度がどちらも強く出る肌では、花よりも庭の緑が前に出ます。明るいフローラルを想像している人は、ダフネの花が出るまで少し待つのがおすすめです。30分後に花と苔が釣り合うかどうかが、この香水の相性を決めます。
他の香水との比較・ポジショニング
同じコラボレーションの「Highgrove Bouquet(ハイグローブ ブーケ)」と比べると、ハイグローブ ブーケはライムブロッサムやミモザを思わせる、より明るい花の庭です。ダフネ ブーケは、ブラックカラントリーフとモスがあるため、よりグリーンで湿った庭の印象になります。
「Bluebell(ブルーベル)」と比べると、ブルーベルは英国の春の花をクラシックに描く香りです。ダフネ ブーケは、もっと現代的で、葉の青さと苔の湿度が前に出ます。懐かしい花より、庭の空気をまといたい人向きです。
Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン)「Blackberry & Bay(ブラックベリー&ベイ)」と比べると、ブラックベリー&ベイはベリーと月桂樹の爽やかさが主役です。ダフネ ブーケは、ブラックカラントリーフの青さを使いながら、より花と苔へ寄せています。
過去回の流れで見ると、第87回のブラックベリー&ベイが果実と葉の軽快さなら、ダフネ ブーケは葉、花、モスで英国庭園の奥行きを作る香りです。どちらもグリーンですが、こちらの方が花と苔の物語性が強く出ます。
グリーンフローラルとしては、清潔で軽いだけの香りではありません。ブラックカラントリーフの酸味、タイムの芳香、モスの湿度があるので、春の庭でも少し木陰がある印象です。そこが、単純なフローラルやシトラスグリーンとは違うところです。
購入ガイド・価格・おすすめ度
公式では100mLのオードパルファムとして展開され、限定品として扱われます。価格や在庫は地域と時期で変わるため、購入時は公式または正規取扱店の最新表示を確認してください。コラボレーションの性質上、在庫の動きにも注意したい香水です。
おすすめしやすいのは、春の庭、グリーンフローラル、カシスリーフ、モスが好きな人です。日中、屋外、ガーデンパーティー、白やグリーンの服、清潔感を残したい場面に合います。甘い花や濃いムスクより、葉と苔の空気をまといたい人向きです。
注意点は、ブラックカラントリーフの青さです。肌によっては、葉の鋭さや少し酸っぱいグリーン感が強く出ます。モスも、清潔な花の余韻というより苔むした庭の湿度として残るため、軽いフローラルだけを期待すると意外にグリーンです。
試すなら、最初の10分と1時間後の差を見てください。最初は葉とシトラスが明るく、時間が経つと花とモスが前に出ます。トップだけで判断すると青すぎるように感じても、少し待つと英国庭園らしい落ち着きが見えてきます。
限定品なので、気に入った場合は在庫状況を早めに確認した方が安心です。ただし、物語性だけで買うより、カシスリーフの青さとモスの湿った余韻が自分の肌で心地よいかを優先してください。香りそのものは上品ですが、葉の鋭さが苦手な人には毎日使いにくい可能性があります。
実際の使用感・シーン・評判
実際の使用感は、明るい、グリーン、フローラル、少しハーバル、苔っぽいという方向です。最初はブラックカラントリーフが生き生きと立ち、中心でダフネの花とハーブが広がり、最後はモスとベチバーで落ち着きます。
好意的な評価では、春らしい、英国庭園らしい、葉の青さがきれい、花が上品、モスの余韻が良い、限定品らしい物語性がある、という声が目立ちます。香りだけでなく、ハイグローブとのコラボレーションに惹かれる人にも向きます。
一方で、カシスリーフが強い、青さが鋭い、モスが湿っぽい、花が思ったより淡い、価格が高い、という意見もあります。ダフネ ブーケは、甘いブーケではなく、春の庭を歩くようなグリーンフローラルです。花、葉、苔のバランスが好きかどうかが、購入判断の軸になります。


