サガノの詩

エラ ケイ「サガノの詩」は、ユズ、竹、抹茶、シソ、ムスクで京都・嵯峨野の竹林を描く香りです。青い空気と茶の静けさが重なり、湿度を帯びた和のグリーンとして肌に残ります。

#82 · 2025-08-09

Ella K / Poème de Sagano

香水の基本情報と第一印象

Ella K(エラ ケイ)「Poème de Sagano(ポエム・ド・サガノ/サガノの詩)」は、京都・嵯峨野の竹林から生まれたオードパルファンです。公式サイトは、京都北西部の竹林が天と地を結ぶように伸び、風に揺れる竹の間から光が差す情景を示しています。国内代理店フォルテは、シトラスとフレッシュのアコードとして紹介しています。

第一印象は、ユズの青い苦みと、竹林を通る風の清涼感です。甘い柑橘ではなく、ベルガモットとグレープフルーツの明るさの中に、ユズの皮のような緑の苦みがあります。そこから竹、抹茶、シソ、ナナミント、ユーカリが出てきて、香りが日本の庭の湿度と静けさへ移ります。

この香りを一言で表すなら、ユズと竹がひらく嵯峨野の青い静けさ。派手に拡散する香水ではなく、近距離で呼吸が深くなるようなグリーンです。清潔感はありますが、単なる石けん系ではなく、抹茶の苦み、シソの青さ、パチュリの土っぽさが、嵯峨野という題材に奥行きを与えています。

調香師・ブランドの背景と制作秘話

エラ ケイは、ソニア・コンスタンが創設したフランスのニッチフレグランスブランドです。彼女はジボダンの調香師として知られ、2017年12月にパリのパレ・ロワイヤルでブティックを開きました。ブランドのテーマは旅で、世界各地で得た感動を香りの詩として表現します。

ブランド名は、女性冒険家エラ・マイヤールへのオマージュと、ソニアの母方の祖父クチェアの頭文字に由来します。ロゴのトンボは日本への敬意と、前へ進む勇気の象徴です。パッケージには京都で出会った中田仙次郎のイラストが使われ、香りだけでなく視覚にも旅の記憶が残ります。

サガノの詩は、ソニアが嵯峨野の竹林で感じた、無数の緑、竹の穏やかな揺れ、光の差し込みを香りにした作品です。公式の言葉では、竹林の中で息をし、周囲の詩に身を委ねるようなイメージが語られます。日本を記号的に飾るのではなく、緑の層と呼吸感で表現している点が、この香水の重要なところです。

香りの詳細分析

トップでは、ユズ、ベルガモット、グレープフルーツが立ち上がります。ユズは日本的な青い苦みを作り、ベルガモットは透明な光を足し、グレープフルーツはジューシーな明るさを加えます。入口は爽快ですが、果物の甘さよりも、竹林に差す朝の光のような清潔な苦みが中心です。

ミドルでは、バンブー、抹茶、シソの葉、ナナミント、ユーカリが香りの核になります。バンブーは竹林の垂直な青さ、抹茶は粉っぽい苦みと静けさ、シソは日本的な薬味の鋭さを加えます。ナナミントとユーカリは、風が抜けるような冷たい呼吸感を支えます。

ラストでは、パチュリ、シダーウッド、ムスクが残ります。パチュリは竹林の地面を思わせる薄い土っぽさを足し、シダーウッドは乾いた木質で香りを締めます。ムスクは全体を清潔で柔らかな肌残りへまとめ、青いグリーンを日常で使いやすい余韻へ落ち着かせます。

時間変化は、柑橘の光、竹と抹茶の青さ、木質ムスクの肌残りという流れです。大きく劇的に変化する香水ではありません。むしろ、最初から最後までグリーンの軸を保ち、その中で苦み、涼しさ、湿度、柔らかさが少しずつ入れ替わります。

他の香水との比較・ポジショニング

キリアン「バンブー ハーモニー」と比べると、バンブー ハーモニーは白茶やネロリを思わせる、よりソーピーで瞑想的な竹の香りです。サガノの詩はユズの苦みとシソ、抹茶の日本的な青さが強く、より土地の風景に寄った印象です。

エルメス「ナイルの庭」と比べると、ナイルの庭はグリーンマンゴーやロータスの水辺の明るさがあります。サガノの詩は、果実のジューシーさより竹、抹茶、シソのグリーンが主役で、湿った川辺ではなく、竹林の木漏れ日と風を感じさせます。

ディプティック「オイエド」と比べると、オイエドはユズ系シトラスの快活さが前に出る香りです。サガノの詩にもユズはありますが、香りの目的は柑橘そのものではなく、柑橘を入口にして、竹と抹茶の静けさへ入っていくところにあります。

購入ガイド・価格・おすすめ度

フォルテの国内商品ページでは、2026年6月2日時点で100mLが40,700円税込で掲載されています。公式サイトでは100mLが275ユーロで販売されています。価格は改定や販売地域によって変わるため、購入時は公式サイト、フォルテ、百貨店、正規取扱店で最新情報を確認してください。

おすすめしやすいのは、春夏に使える上質なグリーンシトラスを探していて、甘さや強い拡散より、清潔感、苦み、透明感、近距離の上品さを重視する人です。ユズ、竹、抹茶、シソという日本的な素材に惹かれる人にも合います。

注意点は、持続性と香りの地味さです。レビューでは、清々しく日常使いしやすいという評価がある一方で、香りが短く感じられる、竹や抹茶を期待ほど強く感じないという声もあります。買う前はムエットだけでなく肌に乗せ、中心のグリーンがどれくらい残るかを見るのが現実的です。

実際の使用感・シーン・評判

実際の使用感は、かなり清潔で軽やかです。最初はユズとベルガモットの明るさで目が覚めるようですが、すぐにバンブー、抹茶、シソ、ミント、ユーカリの青い空気へ移ります。オフィスや日中の外出でも使いやすく、性別を強く選ばない香りです。

好意的な評価では、爽やかで清々しい、男女問わず使いやすい、春夏に合う、竹林のイメージがある、ボトルも上品という声があります。フォルテの商品ページにも、清々しく日常使いしたい、男性へのプレゼントとして喜ばれたというレビューが掲載されています。

一方で、強い個性や長い持続を期待すると物足りない可能性があります。サガノの詩は、香水で場を支配するタイプではありません。近づいたときに、ユズの苦み、竹の青さ、抹茶の静けさ、ムスクの柔らかさが見える香りです。そこに魅力を感じるなら、エラ ケイらしい旅の記憶として、とても完成度の高い一本です。

つけ方は、朝に1〜2プッシュから始めるのが使いやすいです。湿度のある日はシソと抹茶の青さがきれいに見え、乾いた日は柑橘とウッドがすっきり出ます。重い服装より、白シャツ、リネン、薄いジャケット、自然光のある場所に合わせると、香りの静けさが生きます。

総合的には、サガノの詩は「日本らしい素材を並べた香水」ではなく、嵯峨野の竹林で息をする感覚を、柑橘とグリーンで組み立てた香水です。大きなドラマより、青い余白と呼吸感を求める人に向いています。

もう一つ大事なのは、この香りが「京都らしさ」を甘い和風イメージで作っていないことです。白檀やお香を前に出すのではなく、ユズの皮、竹の青さ、抹茶の苦み、シソの鋭さで、空気の温度を下げています。日本を濃い装飾として見せるのではなく、余白、光、湿度、静かな呼吸として扱っている点が、サガノの詩の良さです。

フォルテのレビューでも、清々しく普段使いしたい、男性への贈り物として喜ばれたという方向の声が見られます。これは、香りが性別を強く押しつけないからです。甘さ、セクシーさ、重厚感ではなく、清潔な青さと近距離の上品さで成立しているため、職場、旅行、休日の朝、暑い日の外出に使いやすい印象があります。

ただし、竹林の香りを期待して買うと、感じ方には差が出ます。竹そのものの匂いをリアルに再現するというより、ユズの入口から、抹茶、シソ、ミント、ユーカリを通じて、竹林の空気を抽象化した香りです。リアルな植物臭を求める人には軽く、クリーンなシトラスを求める人には少し青く感じられるかもしれません。

だからこそ、評価の軸は「どれだけ強く香るか」ではなく、「自分の肌で、青い静けさが自然に残るか」です。数時間後にムスクが柔らかく残り、そこに少しだけ竹と抹茶の影がある。その控えめな余韻を美しいと思える人にとって、サガノの詩はかなり特別なグリーンフレグランスになります。

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