バリアーモ

ポメロのほろ苦い光から、青いハーブと白イチジクの丸みを通り、乾いたシダーへ。夏の夕方から夜へ、果実の水分と木の乾きが交差する香りです。

#492 · 2026-09-23

Bottega Veneta / Balliamo

香水の基本情報と第一印象

ボッテガ・ヴェネタのバリアーモは、2026年に登場したオードパルファムです。アルタと呼ばれる10種類のコレクションの一本で、名前のBalliamoはイタリア語で「さあ、踊ろう!」という意味。公式が描くのは、イチジクの木の下で裸足のまま踊る、温かい夏の夜です。

香りは、明るい柑橘から青いハーブへ動き、白イチジクの丸みを経て、乾いた木に落ち着きます。イチジクを甘く濃厚に見せるのではなく、水分のある果実と葉のような青さを、木の輪郭が支える構成です。

最初に感じやすいのは、ポメロとセドラの光。果汁の明るさだけでなく、皮を折ったときのようなほろ苦さがあります。そこへフレッシュペッパーの軽い辛さが加わり、入口をきりっと整えます。夏の夜を題材にしながらも、重い甘さから始まらないところが印象的です。

ボトルは縦にすっと伸びたガラス製。表面には斜めの線が交差し、柔らかい革を編むボッテガ・ヴェネタのイントレチャートを、硬いガラスの模様へ移しています。木製キャップ、金色のリング、ガラスの冷たい光。異なる素材が並ぶ姿にも、香りの中の果実と木の対比が重なります。

調香師・ブランドの背景と制作秘話

バリアーモの調香師は、スージー・ル・ヘレーとされています。ポメロから白イチジク、シダーへ移る設計には、水分と乾きの対比がはっきり表れています。

ボッテガ・ヴェネタは、細い革の帯を交互に編むイントレチャートで知られるブランドです。アルタでは、その「編む」という考え方を香料の組合せにも重ねています。イタリアの素材と、世界の別の地域の素材を組み合わせる「イントレチャート・デュオ」です。

バリアーモで対になるのは、イタリアンホワイトフィグとアメリカンシダーウッド。果実の丸みと乾いた木という、質感の異なる二つを一つへ編み込みます。革の帯が交差して一枚の面になるように、香りの中でも水分と乾きが交差します。

キャップには、ヨーロッパの森林から採取したFSC認証のアッシュ材が使われています。ガラスの編み模様は目で見えるブランドの技法。木のキャップは手に触れる温度を加えます。ボトルの素材と造形に、ボッテガ・ヴェネタの編む技法が表れています。

香りの詳細分析

トップは、手搾りポメロ・エッセンス、セドラ・エッセンス、フレッシュペッパー・エッセンス。ポメロとセドラは、明るい果汁と皮のほろ苦さを思わせます。ペッパーは熱く刺激するというより、柑橘の輪郭を細く引き締める役目です。

ハートには、マートル・エッセンス、ラベンダー・アブソリュート、Vitessence® ホワイトフィグ・アコード。マートルとラベンダーが、葉やハーブの涼しい匂いを作ります。その青さの中から、白イチジクの水分を含んだ丸みが現れます。

着用記事には、この果実感を桃のように感じたという記述もあります。ただし、公式ノートに桃はありません。白イチジクとポメロの甘さが、桃のように感じられたのかもしれません。

ベースは、シダーウッド・エッセンス、ベチバー・エッセンス、アンブロノバ。シダーは乾いた木、ベチバーは根を思わせる土っぽい乾きが手掛かりです。アンブロノバが温かい木の余韻を支え、果実の水分をゆっくり引いていきます。

明るい柑橘、青いハーブ、みずみずしいイチジク、乾いた木。四つの感触が順番に動きます。ミルキーで甘いイチジク香水を探している人には意外かもしれません。果実の丸みはありながら、最後まで青さと乾きが輪郭を残します。

他の香水との比較・ポジショニング

エッセンシャル パルファンのフィグ・インフュージョンは、バリアーモと同じくイチジクに柑橘とシダーを合わせています。フィグ・インフュージョンはマンダリン、紅茶、サンダルウッドで全体を柔らかく包み、バリアーモはポメロの苦み、ハーブ、乾いたシダーでより青く引き締まります。

ディプティックのフィロシコスは、イチジクの葉、樹液、木を含む、一本の木全体を描く香りです。イチジクの青さと木質感は共通しますが、バリアーモはポメロとペッパーで明るく始まり、ラベンダーとアンブロノバを通って、祝祭感のある温かさへ向かいます。

BDKパルファムのグリ・シャーネルも、イチジクと木を組み合わせます。こちらは紅茶、カルダモン、サンダルウッド、トンカがあり、乳白色でスパイシーな陰影が深い香りです。柑橘の光とシダーの乾きを選ぶならバリアーモ。紅茶とクリーミーな木を選ぶならグリ・シャーネルです。

購入ガイド・価格・おすすめ度

バリアーモの15ミリリットル、50ミリリットル、100ミリリットルはいずれも同じオードパルファム濃度です。容量が違っても、濃さの違う別バージョンではありません。

日本公式での100ミリリットルの価格は4万6200円です。英国では230ポンド、イタリアでは250ユーロでした。価格や容量、販売状況は地域と時点で変わるため、購入前に公式サイトで最新情報を確認してください。

15ミリリットルは持ち運びや試しやすさ、50ミリリットルはほかの香水との使い分け、100ミリリットルは使用頻度が高い人の候補になります。容量が大きくなることと、香りの濃さが変わることは別です。どのくらい使うかと、香りが自分の肌でどう変わるかを分けて考えられます。

試香するときは、つけた直後の柑橘だけで決めず、白イチジクが現れるところと、木に変わった後まで待ちたい香りです。明るい始まりと乾いた終わり、その両方を好きになれるかが選ぶ手掛かりになります。

実際の使用感・シーン・評判

合わせやすいのは、晩春から初秋の温かい日。昼の明るさがまだ残る夕方から、食事や小さな集まりへ向かう場面です。薄手のシャツや軽いジャケットなど、風を通す服に合わせると、柑橘と青いハーブの入口を楽しめます。

出たばかりの香水なので評価はこれからですが、今のところ春や初秋にも合わせやすく、とくに夏に合うという感想が多く見られます。季節や持続の感じ方は、肌や気候によっても変わります。

甘いイチジクを求める人には、ポメロと白イチジクの丸みが魅力です。一方で、乳白色で濃厚なイチジクを想像すると、マートル、ラベンダー、シダーの青さと乾きが意外に感じられるかもしれません。

名前は「さあ、踊ろう!」。けれど、強く押し出す華やかさだけを目指した香りではありません。ポメロの光、白イチジクの水分、木の乾きが少しずつ入れ替わります。夕方の光が夜へ移る時間に、その変化を急がず確かめたい一本です。

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