ムスク 25
アルデヒドとムスクの白い光の奥に、ベチバー、アンバーグリス、ビーガンのシベットが作る暗い芯を持つロサンゼルスのシティ エクスクルーシブです。
#474 · 2026-09-05
香水の基本情報と第一印象
ル ラボのムスク 25は、2008年に登場したオード パルファムです。一つの都市と一つの香りを結ぶシティ エクスクルーシブのうち、ロサンゼルスを担う作品です。現地のラボでは通年、その他の地域ではサンプルが毎年8月と9月、フルサイズが毎年9月1日から30日まで販売されます。
第一印象は、アルデヒドが作る白い光沢と、柔らかなムスクの清潔感。ただし、清潔で穏やかなスキンセントだけを想像すると、それでは終わりません。奥には、ベチバーの乾いた木と土、アンバーグリスの塩気を帯びた温かさ、シベットの官能的な暗さがあります。
公式が示すキーノートは、ムスク、アルデヒド、ベチバー、アンバーグリス、シベットの五つ。シベットはビーガンのものと明記されています。「白い輝き」と「暗く官能的な芯」を対立させず、一つの香りにするのがムスク 25の出発点です。
調香師・ブランドの背景と制作秘話
調香師はフランク・フォルクル。ディーエスエム フィルメニッヒの資料では、ニューヨークを拠点にする首席調香師と紹介されています。清潔な石鹸らしさと、肌を思わせる官能性を一本にした調香師です。
作品の背景には、ロサンゼルスの別名「天使の都」があります。2008年の発売時取材で、ル ラボの共同創業者ファブリス・ペノが最初に思い浮かべたと語ったのは、純粋さと白い翼でした。
しかし、その白さだけでロサンゼルスのすべては表せない。夜の都市が持つ欲望や陰影、マルホランド・ドライブのウッディな暗さを、香りの黒い芯へ入れました。白い翼と都市の夜。その差が、アルデヒドとムスクの明るさ、ベチバーとシベットの暗さへ置き換えられています。
現在の公式ストーリーに登場するのは、「人生の香り」に誘惑される天使です。ロサンゼルスを無邪気な白だけでは描かず、甘い誘惑と夜の陰影まで含める。香りの二面性は、この都市の二面性から生まれています。
香りの詳細分析
ムスク 25は、トップ、ミドル、ラストのピラミッドではなく、核となる五つの素材をキーノートとして示す作品です。それぞれが決まった時間順に現れるわけではありません。それでも、肌にのせたときの印象には、明るさから暗さへと移る流れが見えます。
つけたては、アルデヒドの鋭い輝きが目立ちます。白い布の表面に光が反射するような光沢です。そこへムスクが重なり、石鹸やパウダーを思わせる柔らかさと、温かい肌になじむ感触が増していきます。
後半の土台を作るのは、ベチバーとアンバーグリスです。ベチバーは乾いた木や土を思わせ、明るいムスクに深さを加えます。アンバーグリスは塩気を帯びた温かさと奥行きを作り、ムスクを単純な洗濯物の清潔感から引き離します。
そしてシベットが、野性味のある温かさを加えます。純白のムスクに、黒い点を一つ打つような役割です。実際の感想では、白くソーピーと感じる声と、野性味を強く感じる声が分かれます。五つの素材の配合だけでなく、着用する人の肌で明暗がどう出るかまでが、この香りの面白さです。
他の香水との比較・ポジショニング
同じル ラボのアナザー 13は、アンブロキシドを中心に、ジャスミンとモスを合わせた透明感のある肌香水です。ムスク 25は、アルデヒドの白い反射と、ベチバー、アンバーグリス、シベットの暗い芯をよりはっきり出します。透明感を選ぶか、白と黒の強い対照まで楽しむかが違いです。
フレデリック マルのムスク ラバジュールは、ムスクの色気と温度を、もっとスパイシーで甘く見せる香りです。甘く温かいムスクを求めるなら、そちらがわかりやすい候補。ムスク 25は、温かい甘さより、ソーピーさと官能的な暗さの差を楽しむ一本です。
ジュリエット ハズ ア ガンのムスク インビジブルは、清潔で肌に近い柔らかさが中心です。より穏やかで扱いやすいムスクを選ぶならこちら。シベット、ベチバー、アルデヒドの陰影と鋭さまでほしいなら、ムスク 25が向いています。
三本の比較から見えるのは、ムスク 25が「清潔なムスク」と「官能的なムスク」のどちらか一方に寄せないことです。透明感、甘い温もり、穏やかさという比較軸を通すと、白い光沢と暗い芯を同時に残す個性がはっきりします。
購入ガイド・価格・おすすめ度
日本公式での価格は、1.5mlが1,760円、15mlが22,990円、50mlが52,250円、100mlが76,560円です。初めてなら、最小の1.5mlで、明るい面と野性味のある面が自分の肌でどう出るかを試せます。
ロサンゼルスでは通年、その他の世界各地ではサンプルが毎年8月と9月、フルサイズが毎年9月1日から30日までの限定販売です。50mlと100mlは、対応ラボで通年リフィルできます。
ムスク 25はオード パルファムとして販売され、濃度違いや派生版を選ぶ作品ではありません。持ち運びを重視するなら15ml、使う頻度とリフィルを考えるなら50mlまたは100mlが候補です。
ボトルはまっすぐな円筒形で、タイポグラフィが主役の白いラベルを備えています。
販売時期が限られ、同じムスクでも感じ方に個人差が大きい作品です。価格や容量だけで決めず、1.5mlを入口に、肌の上でソーピーさとシベットの暗さのどちらが強く現れるかを確かめると選びやすくなります。
実際の使用感・シーン・評判
香りの印象は、はっきり二つに分かれます。一方は、白く清潔で、石鹸やパウダーのように肌へなじむという感じ方。もう一方は、シベットの野性味、アンバーグリスの塩気、ベチバーの土っぽさが前へ出るという感じ方です。同じ香りでも、「純白」と「深い官能性」のどちらが強く出るかは大きく異なります。
季節なら、最も合わせやすいのは秋。暑さが落ち着く夕方から夜が候補です。冬にも向き、ムスクの温かさとベチバーの乾いた香りを楽しめます。春や夏は、気温が下がる夕方以降に絞ると、アルデヒドの鋭さとシベットの野性味を扱いやすくなります。真夏の暑い日中は、どちらも強く感じられる可能性があるため控え、涼しい夕方以降を選びます。
場所は、夕方から夜の外出、静かなバーやラウンジなど、肌の近くで香らせられる場面が候補です。涼しい夕方のシャツや薄手のジャケット、秋のニットなど、清潔感はあってもカジュアルすぎない服装に合わせやすいでしょう。
オフィスや満員の交通機関では、まず少量から。周囲の人と距離が近いときは、自分が清潔なムスクと感じていても、別の人には官能的な暗さが強く伝わることがあります。
持続の評価は比較的高めです。自分では早く感じなくなることもあるので、すぐにつけ足さず、少量で数時間試してください。広がりも中程度とする声が多いものの、肌と嗅ぎ方で差が大きく出ます。スプレー回数や持続時間を最初から決めつけず、小さな範囲で、白さと暗さのどちらが強く現れるかを確かめてください。試香紙で清潔に感じても、肌ではアンバーグリスやシベットの暗さが強く出ることがあります。実際にまとう場所と同じ条件で試すと、周囲への広がり方まで判断しやすくなります。


