キャロット ブロッサム コロン

ジョー マローン ロンドン「キャロット ブロッサム コロン」は、フェンネルのハーバルな明るさ、淡いキャロットブロッサム、パチョリの土っぽさで、にんじん畑の花を香りにした一本です。青さと土の気配があり、かわいらしい花というより庭の空気に近い余韻です。

#403 · 2026-06-26

Jo Malone London / Carrot Blossom Cologne

香水の基本情報と第一印象

Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン)のCarrot Blossom Cologne(キャロット ブロッサム コロン)は、2026年の数量限定Veggies Collection(ベジー コレクション)から登場したコロンです。テーマは英国の菜園。野菜の香水と聞くと、かなり実験的な青さや土っぽさを想像しますが、この香りの第一印象はもっと白く、軽く、清潔です。

公式ノートはトップがフェンネル、ハートがキャロット ブロッサム、ベースがパチョリ。さらに商品説明では、キャロット、オレンジフラワー、ホワイトムスクが作るフレッシュフローラルとして語られます。つまり、野菜そのもののリアルさより、白い花とムスクのなめらかさ、そこに少しだけ菜園の土とハーブが入る香りです。

同じコレクションのScarlet Beetroot Cologne(スカーレット ビートルート コロン)が赤い土と果実、Velvety Butternut Cologne(ベルベッティ バターナット コロン)がクリーム色の温もりだとすると、今回は白い花と粉感の一本。粉感と白い花が灯す菜園の光、という言い方がよく似合います。

調香師・ブランドの背景と制作秘話

ジョー マローン ロンドンは、英国的な庭や生活の情景を、端正なコロンへ移し替えるのが得意なブランドです。ベジー コレクションでは、その視線が花や果物だけでなく、野菜へ向かいました。ロンドンのアロットメントやSissinghurst Castle Garden(シシングハースト キャッスル ガーデン)のような庭の風景が、香りの背景にあります。

企画の中心として語られるのがCéline Roux(セリーヌ・ルー)です。果物ではなく野菜で遊ぶという発想が、今回のコレクションの出発点になっています。さらにTiny Chef(タイニー シェフ)を使ったキャンペーンもあり、ラグジュアリーな香水でありながら、どこか小さなキッチンや料理番組のようなユーモアがあります。

個別の調香師名は、現行の公式製品ページでは前面に出ていません。ただ、2016年にはCarrot Blossom & Fennel Cologne(キャロット ブロッサム & フェンネル コロン)という限定作があり、そちらはAnne Flipo(アンヌ・フリッポ)の作品として知られています。2026年版は、そのハーブ園の記憶を、より軽い菜園の花へ移し替えたような存在です。

香りの詳細分析

トップノートはフェンネルです。フェンネルにはアニスを思わせる甘いハーブの香りがあり、最初に少しスパイシーで、みずみずしい明るさを作ります。ここがあることで、香りはただの白花ムスクでは終わりません。最初の数分に、菜園の緑と朝の光が入ります。

ミドルノートはキャロット ブロッサム。にんじんの根の匂いではなく、淡い花、やわらかな甘さ、そしてオリスのような粉感が中心です。この粉っぽさが本作の個性で、清潔で上品に感じる人もいれば、少し化粧品的、ベビーパウダー的に感じる人もいそうです。

ベースノートはパチョリです。パチョリは土と木の陰影を作り、香りを軽いだけで終わらせません。ただし、重く暗いパチョリではなく、白い花の下に薄く敷かれた土のような使われ方です。最後はムスクの清潔感と一緒に、近い距離でふわっと残ります。

他の香水との比較・ポジショニング

菜園感で比べるなら、Maison Margiela Replica From the Garden(メゾン マルジェラ レプリカ フロム ザ ガーデン)が分かりやすい存在です。あちらはトマトリーフと土のリアリティが強く、庭の青さが前に出ます。キャロット ブロッサム コロンは、そこまで写実的ではなく、もっと白く、粉っぽく、日常のコロンとして整っています。

粉感で言えば、Prada Infusion d'Iris(プラダ インフュージョン ディリス)やDiptyque Fleur de Peau(ディプティック フルール ドゥ ポー)も比較軸になります。ただ、インフュージョン ディリスほど石けん的に端正ではなく、フルール ドゥ ポーほど肌香に沈みません。フェンネルとパチョリがあるぶん、菜園の明るさと土気が残ります。

白い花で比べるなら、Le Labo Neroli 36(ル ラボ ネロリ サーティシックス)のようなオレンジブロッサム系とも並べられます。ただし、ネロリ サーティシックスのほうが白花の厚みや官能性が強く、キャロット ブロッサム コロンはもっと軽い。春夏の日中に、ふわっと白い粉をまとうような距離感です。

購入ガイド・価格・おすすめ度

キャロット ブロッサム コロンは、2026年の数量限定コロンとして展開されています。単独販売で中心になるのは30mLで、日本では12,430円(税込)という価格情報が出ています。ベジー コレクションをまとめて試せるミニサイズのセットもあり、スカーレット ビートルート コロンやベルベッティ バターナット コロンと比べてから選びたい人には、セットのほうが入りやすいかもしれません。

おすすめしたいのは、白い花やムスクは好きだけれど、普通のフローラルだけでは少し物足りない人です。フェンネルのハーバルな明るさ、粉感、パチョリの薄い土気があるので、清潔なだけではなく、少しだけ不思議な余韻があります。

反対に、強い拡散や長い持続、濃い花の存在感を求める人には控えめに感じられる可能性があります。ジョー マローン ロンドンのコロンらしく、遠くまで主張するより、近い距離で楽しむ香りです。数量限定ということもあり、2026年の季節の記録として楽しむ一本と言えます。

実際の使用感・シーン・評判

日本語圏の初期反応では、優しく香る、甘すぎない、普段使いしやすい、ムスクが苦手な人にも使いやすい、といった声が見られます。野菜の香水という話題性に反して、実際にはかなり日常に入れやすいと受け止められている印象です。

一方で、粉感やムスクが強く出ると、防虫剤、ベビーパウダー、化粧品のように感じる人もいます。ここは本作の魅力と表裏一体です。白い花と粉感がきれいに出れば上品ですが、肌や好みによっては少しクラシックに感じられるかもしれません。

季節としては、春から初夏、梅雨時、冷房の効いた室内が似合います。白シャツ、リネン、淡い色の服、昼のギャラリーや書店、ホテルラウンジにも合う香りです。強く香らせるより、首元や手首に少量で、ふとした時に白い花とフェンネルが戻るくらいがちょうどよさそうです。

レイヤリングするなら、イングリッシュ オーク & ヘーゼルナッツで木の深さを足す、オレンジ ブロッサムで白い花を明るくする、ウッド セージ & シー ソルトで風通しを出す、という方向が考えやすいです。どれも主役を奪いすぎない量で重ねるのがよさそうです。

この香りの面白さは、野菜を奇抜さで終わらせないところにあります。にんじんの根ではなく、菜園で咲く花。土ではなく、土の上に差す光。最後に残るのは、粉感と白い花が灯す、軽やかな菜園の余韻です。

香水・ブランド・調香師