ベルベッティ バターナット コロン
ジョー マローン ロンドン「ベルベッティ バターナット コロン」は、ジンジャーの明るさ、バターナットのクリーミーな中心、パチョリの土っぽい木質を組み合わせた限定コロンです。野菜の甘さをデザートに寄せすぎず、庭の土と柔らかな実の温度として残します。
#402 · 2026-06-25
香水の基本情報と第一印象
Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン)のVelvety Butternut Cologne(ベルベッティ バターナット コロン)は、2026年の数量限定Veggies Collection(ベジー コレクション)から登場したコロンです。テーマは英国の菜園。花や果物ではなく、野菜を香水の主役にするという発想そのものに、まず小さな驚きがあります。
ただし、香りの入口は「野菜をそのまま嗅ぐ」方向ではありません。ベルベッティ バターナット コロンが見せるのは、バターナットかぼちゃのなめらかさ、ナッツのような丸み、少し温かい肌ざわりです。トップのジンジャーが明るく空気を通し、中心のバターナットがクリーミーに広がり、最後にパチョリが土と木の陰影を残します。
前回のScarlet Beetroot Cologne(スカーレット ビートルート コロン)が赤いビーツとブラックカラントの湿った土を感じさせる香りだったとすると、今回はクリーム色の菜園です。赤から黄へ、みずみずしさから温もりへ。同じ野菜テーマでも、肌の上に残る色はかなり違います。
調香師・ブランドの背景と制作秘話
ジョー マローン ロンドンは、英国的な日常や庭、果物、花、ギフト文化を上品なコロンへ変換してきたブランドです。今回のベジー コレクションでは、その視線が野菜へ向いています。きっかけとして語られるのが、ブランドの香りを統括するCéline Roux(セリーヌ・ルー)の発想です。果物ではなく野菜で遊ぶというアイデアが、コレクション全体の出発点になっています。
制作の背景には、英国の菜園やアロットメント、Sissinghurst Castle Garden(シシングハースト キャッスル ガーデン)のような庭の風景があります。野菜、ハーブ、土、光、手入れされすぎていない庭の気配。そうした生活の匂いを、ジョー マローン ロンドンらしい端正なコロンへ移し替えることが、この企画の面白さです。
本作の調香師としては、Mathilde Bijaoui(マチルド・ビジャウイ)の名前が広く挙がっています。マチルド・ビジャウイは、Myrrh & Tonka(ミルラ & トンカ)やPoppy & Barley(ポピー & バーリー)、Like This(ライク ディス)など、食材や質感を香りにする作品でも知られる調香師です。バターナットの「味」ではなく、なめらかさや温度を香水にする本作の方向性は、その文脈ともよく響きます。
香りの詳細分析
トップノートはジンジャーです。公式では、スパイシーでフレッシュ、弾けるようなレモンのニュアンスを持つ香りとして説明されています。ここで大事なのは、甘さをすぐに重くしないこと。ジンジャーの明るさが先に出ることで、バターナットの丸みへ入る前に、香り全体へ光が入ります。
ミドルノートはバターナット。なめらかで、ナッツのようなニュアンスを持ち、温かみとクリーミーなやわらかさをもたらす部分です。ここがこの香水の中心です。かぼちゃの青い匂いを写実的に出すというより、煮込んだスープのような丸み、粉っぽく柔らかな甘さ、肌に乗ったときの温度感を作っています。
ベースノートはパチョリ。官能的で深みのあるウッディノートとして、香りの持続性を支える役割を持ちます。コピー上ではトンカビーンも温かみのある要素として語られ、バターナットのクリーム感をさらに丸くしています。乾いていくと、甘いお菓子というより、土、木、肌の近くの温もりが残ります。
全体としては、ジンジャー、バターナット、パチョリの三層がはっきりしています。最初は明るく、途中でクリーミーになり、最後はパチョリの土っぽさで落ち着く。強く遠くへ飛ぶタイプではなく、近い距離でふと戻ってくるコロンです。
他の香水との比較・ポジショニング
まず並べたいのは、同じベジー コレクションのスカーレット ビートルート コロンです。スカーレット ビートルート コロンは、ビーツとブラックカラントの赤い果実感、そこにパチョリの土っぽさを添えた香りでした。ベルベッティ バターナット コロンは、同じ土の要素を持ちながら、よりクリーミーで、黄色く、丸い印象です。
もうひとつの比較軸はライク ディスです。ライク ディスは、かぼちゃ、ジンジャー、家庭的な温かさを持つ香りとして語られますが、よりアート寄りで乾いたスパイス感があります。ベルベッティ バターナット コロンは、ジョー マローン ロンドンらしく軽く、日常の中に入りやすい方向です。
温かいグルマンという意味では、By the Fireplace(バイ ザ ファイヤープレイス)を思い浮かべる人もいるかもしれません。ただし、バイ ザ ファイヤープレイスの中心は煙、薪、ロースト感です。こちらは火の香りではなく、菜園の土とバターナットのなめらかな甘さで温める香り。近い言葉を使っても、到達する景色はかなり違います。
購入ガイド・価格・おすすめ度
ベルベッティ バターナット コロンは、2026年の数量限定コロンとして展開されています。公式製品ページでは30mLが確認でき、日本では30mL 12,430円(税込)という価格情報が複数の資料で示されています。ベジー コレクションをまとめて試せるミニサイズのセットや、30mLの3本セットも案内されています。
おすすめしたいのは、甘いグルマンは好きだけれど、バニラや砂糖だけに寄るものは少し重いと感じる人です。バターナットの丸みはありますが、ジンジャーの明るさとパチョリの土っぽさがあるので、甘さだけで終わりません。
反対に、強い拡散や長い持続を求める人には控えめに感じられる可能性があります。ジョー マローン ロンドンのコロンらしく、遠くまで主張するより、肌の近くで楽しむ香りです。数量限定であることも含め、定番の一本というより、2026年の季節の記録として楽しむ香水と言えます。
実際の使用感・シーン・評判
レビューでは、クリーミー、少し甘い、少し野菜らしい、ナッティ、家庭的、コテージのように心地よい、といった声が目立ちます。一方で、持続や拡散は控えめという反応も多く、2時間ほどで弱まるという声から、4〜5時間ほど感じるという声まで幅があります。
季節としては、発売時期こそ初夏ですが、香りの質感は初秋や涼しい夜にもよく合います。冷房の効いた室内、読書の時間、夕方のカフェ、静かなオフィスなど、香りを遠くへ広げず、自分の周りに柔らかい膜を作りたい場面に向いています。
服装で言えば、リネンの清涼感より、薄手のニット、白いシャツ、クリームやベージュの色、木のテーブルや紙の質感が似合います。食事の場でも重すぎるグルマンではありませんが、バターナットとトンカの温かさがあるので、量は少なめがよさそうです。
この香りの魅力は、野菜という題材を奇抜さで終わらせないところです。ジンジャーで明るく開き、バターナットでなめらかに膨らみ、パチョリで土と木へ落ちる。最後に残るのは、バターナットとパチョリが作る、静かな温もりです。


