#A65
NOWHERE NOWHERE「#A65」は、アフォガートの物語を、バニラ、ヘリオトロープ、トンカ、ムスクの粉感で描く香りです。甘いデザートの印象を持ちながら、肌に近いミルキーな余韻へ静かに落ち着きます。
#361 · 2026-05-15
香水の基本情報と第一印象
#A65 は、日本発のフレグランスブランドNOWHERE NOWHERE(ノーウェア ナウヒア)が展開するオードパルファンです。公式分類はWoody Amber。商品ページでは「バニラやヘリオトロープをブレンドした甘いウッディーアンバーの香り」と説明されています。
この香水でまず面白いのは、トップノートにバニラが置かれていることです。バニラは香水では後半に出てくることも多い香料ですが、#A65 では最初から甘さが見えます。そこへオレンジが加わるため、重たいシロップではなく、明るさを帯びたクリーミーな入口になります。
ただし、印象は単なるお菓子の香りではありません。公式フレグランスストーリーには、アフォガートを食べる場面と、部屋の灯りを消す一瞬が描かれています。甘いデザートの光と、暗くなった部屋の親密さ。その両方を持つのが#A65の第一印象です。
調香師・ブランドの背景と制作秘話
NOWHERE NOWHEREは、株式会社WELL-ESSENCEが展開するフレグランスブランドです。ブランドコンセプトでは「感性を解き放とう。」「香り=自己表現=アート」「どこにもない____はここに。」という言葉が掲げられています。服やメイクを変えるように香りを纏い、自分らしく過ごせる香りで日常を彩る、という考え方です。
ブランド名は、NO WHEREとNOW HEREの二重性を持っています。どこにもないものが、いまここにある。ラベルの角のひとつが丸いデザインも、自分だけの感性を探しに行く扉や窓をイメージしたものと説明されています。
#A65の担当調香師名は公表されていません。ここは無理に実名を探すより、ブランドが公開しているストーリーと香料構成を読むほうが自然です。公式ページでは、それぞれの香りに紐づく物語やイメージビジュアルが、調香師の想いや経験、メッセージを表すものとして紹介されています。#A65の場合、そのメッセージはアフォガートと、灯りを消した部屋の情景に込められています。
香りの詳細分析
トップはバニラとオレンジです。最初からバニラが出ることで、香りの中心がはっきり甘い方向へ向かいます。ただし、オレンジがあるので、甘さは重く沈みすぎません。オレンジピールの明るさ、少しビターな輪郭が、溶けかけたアイスクリームに光を当てるように働きます。
ミドルはティーローズとヘリオトロープ。ティーローズは、甘さに花と紅茶のような乾いたニュアンスを与えます。ヘリオトロープはこの香りの質感を決める重要なノートで、アーモンド、バニラ、マジパン、パウダーを思わせる柔らかな甘さがあります。ここで#A65は、砂糖菓子の甘さから、肌に近い粉感へ移っていきます。
ラストはトンカビーンズとムスクです。トンカビーンズは、バニラ、アーモンド、干し草、少しタバコのような複雑な甘さを持つ香料として語られます。ムスクはその甘さを肌へ近づけ、清潔で柔らかい余韻にします。強く空間を支配するというより、体温の近くに残るタイプの甘いアンバーです。
全体として、#A65はトップからラストまで甘さの軸が途切れません。けれど、オレンジ、ティーローズ、ヘリオトロープ、ムスクがそれぞれ明るさ、乾き、粉感、肌感を加えるため、単純なバニラ香水にはなりません。バニラと粉感が沈む、アフォガートの夜の香り。そう捉えると、この一本の輪郭が見えやすくなります。
他の香水との比較・ポジショニング
#A65に近い比較軸としては、バニラ、トンカ、アンバー、ヘリオトロープを持つ香水が挙げられます。
Jo Malone LondonのMyrrh & Tonkaは、トンカとバニラの温かさが共通します。ただし、Myrrh & Tonkaはミルラの樹脂感とラベンダーがあり、より荘重でオリエンタルな方向です。#A65はヘリオトロープとティーローズによって、粉感と肌に近い甘さへ寄ります。
DiptyqueのEau Duelleも、バニラをユニセックスに扱う香水として比較しやすい存在です。Eau Duelleはカルダモンやドライなウッドが作る乾いたバニラ。#A65はもっとクリーミーで、アフォガートの湿度とヘリオトロープの粉感があります。
DiorのHypnotic Poisonとは、バニラ、アーモンド様、ヘリオトロープ的な甘さが接点になります。ただし、Hypnotic Poisonが濃厚でクラシックな毒気を持つのに対し、#A65はオレンジとティーローズで明るさを残し、日常の近距離に置きやすい甘さです。
購入ガイド・価格・おすすめ度
公式オンラインストアで確認できるオードパルファン #A65は30mlで14,300円です。香水本体としてはオードパルファンが中心で、EDTやExtraitのような濃度違いは確認できません。一方で、同じ#A65の香りは、ボディフレグランスオイル、ルームフレグランスミスト、ルームフレグランスオイル、ディフューザーなどにも展開されています。
初めて試すなら、まずは少量で肌との相性を見るのがおすすめです。特にヘリオトロープの粉感やバニラの甘さは、人によって心地よくも、重くも感じられます。しっかり香りの変化を知りたいならオードパルファン。肌に近く楽しみたいならボディフレグランスオイル。部屋で世界観を楽しみたいならルーム系、という選び方が自然です。
実際の使用感・シーン・評判
#A65がいちばん似合うのは、秋冬の夜です。バニラ、トンカ、ムスク、ウッディアンバーの温かさが、冷たい空気や柔らかいニットに合います。公式の気分カテゴリにも「ソファに埋もれたい」「誰かと時間や空間を共有したい」とあり、外へ強く主張するより、近い距離でくつろぐ香りとして考えると使いやすいです。
春や夏でも、夜や冷房の効いた室内なら使えます。ただし、真夏の日中に多めにつけると、バニラと粉感が重く感じられるかもしれません。最初は半プッシュから1プッシュ程度で、手首よりも服の内側や腰まわりなど、鼻から少し離した場所に置くと調整しやすい香りです。
同じ香りを空間で楽しめるルームミストやルームオイルがあるのも、この香りを理解する手がかりです。#A65は、外で目立つためだけの香りではなく、部屋の空気、布、肌の近くで甘さを調整しながら使うほうが似合います。ボディオイルを先に薄くなじませて、必要ならオードパルファンを少量重ねると、香りの角が立ちにくくなります。
甘い香りが好きな人には入りやすい一方で、フレッシュなシトラスや透明な石けん系を求める人には、少し濃く感じられる可能性があります。#A65は、明るい香水というより、灯りを少し落とした部屋で、甘さが肌の近くに残る香水です。


