マッチャ メディテーション

メゾン マルジェラ「マッチャ メディテーション」は、東京2008という記憶のラベルを持つ、抹茶と白花、ホワイトチョコレートの香りです。抹茶ラテのような甘さに花の明るさが重なり、穏やかな瞑想感を作ります。

#357 · 2026-05-11

Maison Margiela / Matcha Meditation

香水の基本情報と第一印象

Matcha Meditation(マッチャ メディテーション)は、Maison Margiela(メゾン マルジェラ)のREPLICAラインから登場したオードトワレです。REPLICAは、場所と時間の記憶を香りにするシリーズ。この香水にはTokyo 2008、Zen scents of matcha teaというラベルが与えられています。

第一印象は、抹茶をそのまま粉末で嗅ぐ香りというより、温かい抹茶ラテを白い花の横で飲んでいるような柔らかさです。グリーンティーの透明感はありますが、中心にあるのはジャスミンやオレンジフラワーの白さ、そしてホワイトチョコレートの丸い甘さ。だからこそ、名前から想像する苦い抹茶とは少し違う入り口を持っています。

このずれは欠点というより、REPLICAらしい編集の仕方です。茶葉を写真のように写すのではなく、抹茶を飲む時間、部屋に立つ湯気、午後の光、少し甘い余韻まで含めて一本にまとめています。お茶のリアルさを求める人には意外に感じられますが、静かな時間をまとう香りとして見ると、とても自然です。

調香師・ブランドの背景と制作秘話

調香師は、複数の香水データベースで Maurice Roucel(モーリス ルーセル)と Alexandra Carlin(アレクサンドラ カルラン)の共作として紹介されています。Roucelはムスク、白い花、アンバーの丸みで知られる調香師。Carlinは物語性のある香りを作る調香師として語られることが多く、この香水の「記憶を香りにする」構造と相性がよく見えます。

Maison Margielaは、脱構築、匿名性、白いラベル、四隅のステッチで知られるブランドです。REPLICAという名前も、もともとは古着や小物を産地・時代・用途の情報ごと再現するファッションの考え方に由来します。フレグランス版のREPLICAでは、そのラベルの思想が香水に移され、香りがひとつの記憶の標本になります。

ボトルもその思想を支えています。透明なアポセカリー風のガラスに、コットンラベルのような白いタグ。香水名、場所、年、香りの説明が淡々と並び、感情を大きく語らずに記憶だけを置いていく。この控えめな見せ方が、甘い香りを必要以上に可愛らしくしすぎない役割も持っています。

香りの詳細分析

トップはベルガモットエッセンス、マンダリンエッセンス、グリーンティーアコード。最初は明るい柑橘とお茶の湯気が立ち上がり、清潔で透明な印象があります。ただし、茶葉感は長く鋭く残るというより、序盤の空気を整える役割です。

ミドルでは、オレンジフラワーアブソリュート、ジャスミンアコード、マッチャアコードが中心になります。ここで香りは一気に白く、なめらかになります。抹茶は乾いた粉というより、白花のクリーミーさに溶け込んだ緑。花の甘さがあるため、リアルな茶室の香りというより、抹茶を飲む午後の記憶に近づきます。

ベースはベンゾインアブソリュート、モスアコード、ホワイトチョコレートアコード。ラストはグリーンティーの爽快感だけで終わらず、甘く丸い抹茶ラテのような余韻へ向かいます。このホワイトチョコレートの甘さが好き嫌いを分けますが、Matcha Meditationらしさの核でもあります。

持続はオードトワレらしく、強く長く拡散するタイプではありません。最初の茶の透明感は比較的早くやわらぎ、白花と甘さが肌の近くに残ります。香りを遠くまで飛ばすより、自分の周りの空気を少し静かに整える使い方が向いています。

他の香水との比較・ポジショニング

第356回で扱ったLe LaboのThe Matcha 26は、フィグ、シダー、ベチバーを中心にした静かな肌香でした。名前にマッチャがあっても、抹茶そのものより、肌になじむ木質とフィグのニュアンスが印象に残る香りです。詳しくは過去回でも扱っています。

それに対して、Matcha Meditationはもっと白く、甘く、ミルキーです。The Matcha 26が肌の近くで乾いていく香りなら、こちらは抹茶ラテと白花が包む静かな午後。お茶の透明感を求めるならGiorgio ArmaniのThe Yulong、よりデザート寄りのミルク抹茶を求めるならObviousのMilk & Matchaも比較対象になります。

同じMaison MargielaのTea Escapeと並べると、ブランド内でのお茶の扱いの違いも見えます。Tea Escapeがよりお茶やミルクの記憶に寄るなら、Matcha Meditationは白花とチョコレートを使って、抹茶を少し抽象的なムードへ移しています。

購入ガイド・価格・おすすめ度

Matcha Meditationは、2026年時点では通常流通が弱く、複数の販売情報で終売・生産終了扱いが見られます。日本発売時は100mL、30mL、10mLなどのサイズがありましたが、現在は並行輸入、海外在庫、フリマなどで探す場面が増えています。

買う場合は、価格だけで判断しないことが大切です。保存状態、開封時期、外箱やボトルの状態、返品可否、販売者の信頼性を見たい香水です。甘い白花と抹茶ラテの方向性が好きなら魅力的ですが、苦い茶葉のリアルさだけを期待するなら試香してからの方が安全です。

おすすめ度は、白花の甘さを受け入れられるかで変わります。グリーンティー系の軽さ、ホワイトチョコレートの丸み、REPLICAの記憶感に惹かれる人にはよく合います。一方、渋い日本茶、乾いた茶葉、ストイックな抹茶を探している人には、別の茶系香水の方が合うかもしれません。

実際の使用感・シーン・評判

評判として多いのは、「抹茶ラテ」「癒やされる」「上品」「清潔感がある」「オフィスでも使いやすい」という反応です。一方で、「抹茶そのものではない」「白花やチョコレートが甘い」「持続が控えめ」と感じる人もいます。

使いやすい季節は春、秋、雨の日、涼しい初夏。冬はベンゾインとホワイトチョコレートの甘さが心地よく出ます。真夏の湿度が高い日には、白花と甘さが少し重く感じられるかもしれません。

シーンは、読書、在宅ワーク、カフェ、静かなデート、オフィス向き。強く香らせるより、服の内側や腰まわりに少量つけて、近い距離でふわっと感じる使い方が合います。抹茶の香水としてではなく、お茶を飲む時間の香水として見ると、この一本の魅力がかなり自然に伝わってきます。

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