03 - テ・オ・パレ・ロワイヤル
ソルフェリーノ パリ「03 テ オ パレ ロワイヤル」は、ウーロン茶とマテ茶でパリの庭園の静けさを描くティーフレグランスです。青々しさと枯れ感が同時にあり、光の差す午後の茶葉のように穏やかに続きます。
#303 · 2026-03-18
香水の基本情報と第一印象
**テ・オ・パレ・ロワイヤル(03 - Thé au Palais Royal)**は、2025年に本格ローンチしたフランスのブランド、**ソルフェリーノ パリ(Solférino Paris)**が手がけるフレグランスです。ブランド名は、パリ7区の左岸に位置する歴史的建造物「ソルフェリーノ通り10番地」の住所に由来しています。
この香水は、パリの歴史ある庭園——パレ・ロワイヤルをテーマにした、知的で穏やかなウーロン茶の香り。公式の香調分類はフローラル・ウッディ・ムスクですが、一言で表すなら「隠れたアーケードの下でお茶を分かち合うような光の香り」。静寂とエレガンス、青々しい枯れ感、そして光と影の揺れ動く二面性が特徴的な作品です。
スプレーした瞬間の印象は、予想を心地よく裏切るもの。鋭角的ではない洗練されたシトラスが穏やかに開き、肌の近くでパーソナルに香ります。
調香師・ブランドの背景と制作秘話
調香師は**ジャン=クリストフ・エロー(Jean-Christophe Hérault)**。香水の都グラース近郊で育ち、香料製造に関わる父親から贈られた香水に魅了されてこの道に入りました。伝説的調香師ピエール・ブルドンに師事し、現在はIFF(インターナショナル・フレーバー・アンド・フレグランス)のヴァイスプレジデント・パフューマーを務める人物です。
代表作には、世界的な大ヒットとなったCreedの**Aventus**や、Viktor & Rolfの**Spicebomb Extreme**など、力強くボールドな作品が並びます。しかし本作で彼が追求したのは、「洗練されたコントラスト」と「肌に寄り添う柔らかさ」という、極めて静かなアプローチでした。
エロー自身は「光のような香り。この史跡の豪華な庭園を囲む回廊で、ひとり静かにお茶を味わうひとときを想起させるフレグランスです」とコメントしています。
ブランドの母体は、フランスの大手香水企業**インターパルファム(Interparfums SA)**。創業40年以上の歴史で初めて立ち上げた完全自社所有ブランドがソルフェリーノ パリであり、「光の都パリの象徴的な場所、瞬間、雰囲気を香りで表現する」「誰もがパリの一片を持ち帰れるようにしたい」という哲学を掲げています。
香りの詳細分析
ブランドはピラミッド構造を採用していますが、ノート間に「呼吸する空間」を与えるミニマリズムな構成が特徴です。
**トップノート(最初の5〜15分)**
**アンブレットシード**(ジャコウアオイの種子から採れる、植物的で淡い甘み)、**ベルガモット**、**マンダリン**が配されています。スプレーした瞬間に広がるのは、鋭角的ではない洗練されたシトラスの輝きと、ファジーな甘みが混ざり合う穏やかな香り立ち。「回廊の柱の間から差し込む陽光のような眩い輝き」とも表現される、静かな括弧のような幕開けです。
**ミドルノート(15分〜2時間)**
この香水の心臓部となるのが、**ウーロン茶アコード**と**マテ茶**、そして**インド産ジャスミン**の組み合わせ。揮発性の高いシトラスが落ち着くと、ウーロン茶の複雑な発酵感と青々しさが姿を現し、マテ茶が干し草のようなドライなニュアンスを添えます。ジャスミンは日向のような温かさを持つ華やかさで全体を包み込みます。
「写真のようにリアルな干し草のような青さと枯れ感」「冷ました烏龍茶のガラスポット」——グリーンでマットな質感と、芳醇で温かな質感が交差する、この香水ならではの独特な表情です。
**ラストノート(2時間以降)**
**ハイチ産ベチバー**(サステナブル認証を受けた土っぽくスモーキーな木系の香り)、**シルキームスク**、**パチョリ**が肌に残ります。アーシーでありながら、わずかに石鹸のようなソーピーさを持つクリーンなウッディムスクへと収束。「上質なリネンを洗った後のような、肌に馴染むスキンケア的な香り」として、体温と溶け合いながら約4〜6時間持続します。
全体を通して最も特徴的なのは、トップの光り輝くシトラスからアーシーなお茶へと静かに落ちていく変遷。激しい主張ではなく、光と影、都会と自然のコントラストを肌の近くで親密に表現している点が、他のティー系フレグランスとの決定的な違いです。
他の香水との比較・ポジショニング
**Nishaneの「Wulong Cha」**とは同じウーロン茶を中心に据えていますが、Nishaneがボールドで外向的な「熱い烏龍茶の湯気」のような爽快感を持つのに対し、本作は「冷ました烏龍茶のガラスポット」のような静寂とエレガンスが特徴です。
**Giorgio Armani Privéの「Thé Yulong」**とはシトラスとジャスミンで包み込む洗練されたアプローチが共通しますが、本作はマテ茶由来の干し草のようなドライさとアーシーな深みが強調されています。
**Bvlgariの「Eau Parfumée au Thé Vert」**が「スパ的」なミニマルリフレッシュなら、本作は「サロン的」な知的奥行きを追求した香り。パーソナルなティータイムを香りで持ち歩きたい方に最適な一本です。
購入ガイド・価格・おすすめ度
本作はオードパルファム(EDP)濃度のみの展開で、濃度・バージョン違いはありません。ハイチ産のサステナブル認証ベチバーやフランスの名門Pochet du Courvalによるボトルなど、素材・製造に妥協のない仕様です。
ボトルはパリの古典建築を彷彿とさせるファセット加工の直方体で、ネックには深緑のグログランリボンが手作業で巻かれています。外箱もパリの邸宅を思わせるダミエ柄が施され、飾っておきたくなる美しさ。知的で落ち着いた香りを日常に取り入れたい方、ティー系フレグランスの奥行きを楽しみたい方におすすめです。
実際の使用感・シーン・評判
**ベストシーズンは春から夏**。シトラスの輝きとお茶の清涼感が温暖な気候に美しく映えます。ベースのベチバーとムスクに温もりがあるため、初秋の「秋支度の香り」としても活躍します。
**最適なシーンは日中の知的な場面**——オフィス、ギャラリー訪問、カフェでの読書など。白いシャツや仕立ての良いジャケットなど、きちんとした服装との相性が抜群です。プロジェクションは密着型〜50cm以内のパーソナルな空間で穏やかに香るタイプで、自分自身をリフレッシュさせたい時に纏うのがおすすめです。
興味深い使い方として、ブランドの他の香水(ローズ系の「02 - 10, Solférino」)を重ねると、古典的なローズが現代的で透き通ったローズティーへと変化するというレイヤリングも楽しめます。「明るく朗らかで人生の喜びに満ちた雰囲気」と評されるこの香りは、穏やかな日差しの下で過ごすパーソナルなティータイムそのものです。


