ル シェブルフイユ
グタール ル シェブルフイユは、レモンツリープチグレン、ハニーサックル、ジャスミン、ナルシスで春の庭と花蜜の記憶を描く繊細なグリーンフローラルです。
#147 · 2025-10-13
香水の基本情報と第一印象
Goutal(グタール)のLe Chèvrefeuille(ル シェブルフイユ)は、2002年に登場したEau de Toilette(オード トワレ)です。フランス語でハニーサックル、つまりスイカズラを意味する名前で、公式ノートはトップにLemon Tree Petitgrain(レモン ツリー プチグレン)、ハートにHoneysuckle(ハニーサックル)とJasmine(ジャスミン)、ベースにNarcissus(ナルシス)です。もともとはソリフロール的な企画の一本として語られ、その後も春を思わせるグタールのロングセラーとして愛されてきました。
第一印象は、レモンと花蜜がほどく春の記憶。最初に感じるのは、レモン果汁そのものではなく、レモンの葉と小枝の青さを含んだ明るさです。そこへスイカズラの蜜、ジャスミンの白い花、ナルシスの湿った草の影が重なります。香水らしい濃密さより、庭で花を摘んだ瞬間のような生っぽさがあります。
この香水は、長時間残るタイプではありません。むしろ短い。けれど、その短さも含めて、春の花らしい香水です。朝の散歩でふっと香って、気づくと消えている。その儚さに魅力を感じられるかどうかが、好き嫌いの分かれ目になります。強い拡散や重い残香ではなく、肌の近くで一瞬だけ庭を開く香水として考えると、魅力が見えやすくなります。
調香師・ブランドの背景と制作秘話
グタールは、1981年にAnnick Goutal(アニック・グタール)が創設したフランスの香水メゾンです。個人的な記憶、自然、家族の物語、繊細なフレンチエレガンスを香りへ変えるブランドとして知られます。
ル シェブルフイユを手がけたのは、Camille Goutal(カミーユ・グタール)とIsabelle Doyen(イザベル・ドワイヤン)。カミーユはアニックの娘で、イザベルはアニックと長年共同制作してきた調香師です。この作品には、母娘の香りの系譜がはっきりあります。
1982年、母アニックは娘のためにEau de Camille(オー ド カミーユ)を作りました。そこにはハニーサックルが含まれていました。20年後、娘カミーユは南仏の庭でこの花の冠を編んだ幼少期の記憶をもとに、この花を主役にした香水を作ります。母が娘へ渡した花を、娘がもう一度香りにした。そこがこの作品のいちばん美しい背景です。香りの明るさの奥に、単なる春の風景ではなく、家族の記憶をそっと保存するような静けさがあります。
香りの詳細分析
トップでは、レモン ツリー プチグレンが明るく立ち上がります。プチグレンは柑橘の葉や小枝から得られる香料で、果汁のレモンよりもグリーンです。はちみつレモン、レモンティー、青い葉、朝の庭。そういう明るさと湿度が同時にあります。
ミドルでは、ハニーサックルとジャスミンが中心になります。スイカズラは、花蜜の甘さ、白い花の柔らかさ、蔓植物の青さを同時に持つ花です。ここでのジャスミンは重く官能的というより、花の空気をふくらませる役。生垣から花を摘んで、指先に蜜と葉の匂いが残るようなリアルさがあります。甘いだけではなく、葉や茎の青さがあるため、砂糖菓子のフローラルにはなりません。
ベースでは、ナルシスが残ります。ナルシスは、黄色い花の甘さだけでなく、湿った土、草、少し野生的なグリーンを持つノートです。だからル シェブルフイユは、花蜜だけの可愛い香水ではありません。最後に葉や茎、土の影が残ることで、春の庭そのものに近づきます。
他の香水との比較・ポジショニング
Santa Maria Novella(サンタ マリア ノヴェッラ)のCaprifoglio(カプリフォーリオ)と比べると、どちらもハニーサックルを主題にしたグリーンフローラルです。カプリフォーリオはより古典的で、イタリアの薬局的な清潔感があります。ル シェブルフイユは、レモンツリープチグレンの透明感と、母娘の庭の記憶が前に出ます。
Guerlain(ゲラン)のHerba Fresca(ハーバ フレスカ)が好きな人にも勧められるという声があります。共通点は、春夏のグリーンな軽さです。ただしハーバ フレスカはミントやハーブの冷たさ。ル シェブルフイユは、花蜜と葉・茎の湿度です。
Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン)のハニーサックル アンド ダバナと比べると、ジョー マローンはダバナでフルーティに複雑化する現代的なハニーサックル。ル シェブルフイユはもっと薄く、短く、写真的です。花を香水化するというより、庭で一瞬だけ風が吹いた感じです。
購入ガイド・価格・おすすめ度
資料では、50ml 22,330円、100ml 31,240円などの価格が紹介されます。ただし、公式オンライン販売機能や流通、価格は時期で変わるため、購入時は公式ページや正規取扱店で確認するのが確実です。
購入前に必ず確認したいのは持続です。香りはとても繊細で美しい一方、EDTらしく短いという声が多い。30分から2時間ほどでかなり薄くなると感じる人もいます。長時間しっかり香らせたい人には不向きかもしれません。
おすすめしやすいのは、春の花、ハニーサックル、レモンティー、はちみつレモン、グリーンフローラル、清楚な軽さが好きな人。香水に強い存在感より、朝の空気や季節の気配を求める人に合います。反対に、夜まで残る香水、濃厚な白花、甘いムスクの余韻を期待すると、かなり軽く感じるはずです。試香では、最初のレモンの明るさだけでなく、20分後に花蜜と青さがどれだけ肌に残るかを見るのが判断ポイントになります。
実際の使用感・シーン・評判
似合う季節は春から初夏。3月から6月、朝の散歩、花見、ピクニック、梅雨前の庭に自然です。秋冬に使うなら、春の記憶を呼び戻す気分転換として向きます。
シーンは、オフィス、日常、休日の散歩、軽いデート、強い香水が使いにくい場所。拡散が控えめなので、近距離でふわっと香る使い方に合います。服装なら、白シャツ、リネン、薄いカーディガン、淡い黄色、グリーン、ナチュラル素材。夜のドレスより、朝の服に合う香水です。
評判では、清楚、透明、春らしい、日本人に合う、職場でも使いやすい、香りに酔いにくい、という声があります。一方で、持続が短い、青臭い、酸味が強い、香水として薄い、という声もあります。
ル シェブルフイユは、強さではなく一瞬の鮮明さで記憶に残る香水です。レモンの葉、スイカズラの蜜、ジャスミン、ナルシス、朝の庭。その短い春の風に惹かれる人には、毎年戻ってきたくなる一本です。



