テ ノワール 29

ル ラボ「テ ノワール 29」は、フィグやベイリーフの青さから、ブラックティー、タバコ、干し草、ムスクへ沈む乾いた茶葉の香りです。紅茶をそのまま甘く再現するのではなく、葉が乾き、煙り、木に触れていくような陰影があります。

#109 · 2025-09-05

Le Labo / THÉ NOIR 29

香水の基本情報と第一印象

Le Labo(ル ラボ)のTHÉ NOIR 29(テ ノワール 29)は、2015年に登場したオードパルファンです。名前の29は、ル ラボの命名規則に従い、構成要素の数を示します。ブランドはこの香りを、高貴な茶葉へのオマージュとして位置づけています。

第一印象は、いわゆる紅茶フレーバーの甘さとは少し違います。ベルガモットの明るさが薄く開き、すぐにフィグの乾いた果肉、ベイリーフの青い苦み、木箱のようなドライな質感が出てきます。今回の興味喚起フレーズは、フィグと黒茶が滲む乾いた夜の静けさ。カップの中の紅茶ではなく、乾いた茶葉と果実の影をまとう香りです。

調香師・ブランドの背景と制作秘話

調香師はFrank Voelkl(フランク フォルクル)。Firmenich(フィルメニッヒ)で活躍し、ル ラボのSantal 33(サンタル 33)も手がけた調香師です。サンタル 33がサンダルウッドとレザーで都市的なウッディを作った香りだとすれば、テ ノワール 29はフィグ、茶葉、タバコ、干し草で、より暗く乾いたウッディを作っています。

ル ラボは2006年、ニューヨークでFabrice Penot(ファブリス プノー)とEddie Roschi(エディ ロスキ)が設立したブランドです。店頭でのフレッシュブレンディング、パーソナライズできるラベル、薬瓶のようなボトルなど、研究室の手仕事を思わせる体験がブランドの象徴です。テ ノワール 29のミニマルな見た目と、香りの内側にある乾きや暗さの対比も、ル ラボらしい魅力です。

香りの詳細分析

トップでは、Fig(フィグ)、Bay Leaf(ベイリーフ)、Bergamot(ベルガモット)が香ります。フィグは熟した果実の甘さを持ちながら、ジャムのようには濃くありません。ベイリーフが青く苦い輪郭を作り、ベルガモットが冒頭にだけ光を入れます。ここは明るい果実から始まるのに、すぐに葉と木の方向へ影が落ちるのが特徴です。

ミドルでは、Cedarwood(シダーウッド)、Vetiver(ベチバー)、Musk(ムスク)が出てきます。シダーウッドは乾いた木箱、ベチバーは土と根、ムスクは暗い香りを肌に留める柔らかい膜です。このあたりから、紅茶の飲み物感は薄れ、茶葉を入れた木箱、乾いた草、夜の書斎のような空気に変わります。

ベースでは、Black Tea(ブラックティー)、Tobacco(タバコ)、Hay(干し草)が余韻を作ります。ブラックティーは甘い紅茶ではなく、抽出された葉の渋みと影。タバコは甘苦くスモーキーで、干し草は乾いた草の静けさを足します。肌に残るのは、フィグの甘さを遠くに残した、ウッディでドライな茶葉の影です。

他の香水との比較・ポジショニング

Diptyque(ディプティック)のPhilosykos(フィロシコス)は、フィグの比較対象としてわかりやすい香水です。フィロシコスは青い葉、ミルキーな果肉、イチジクの木の明るさが中心。テ ノワール 29はそこに黒茶、タバコ、干し草が入るため、より暗く、夜向きで、ドライです。

同じフランク フォルクルによるサンタル 33と比べると、どちらも都会的なウッディの骨格があります。ただ、サンタル 33がサンダルウッド、レザー、スパイスで乾いたアメリカの空気を作るのに対して、テ ノワール 29はフィグと茶葉で、もっと室内的で静かな暗さを作ります。

BDK(ビーディーケー)のGris Charnel(グリ シャルネル)は、フィグと紅茶にカルダモン、イリス、トンカが重なる、よりクリーミーで甘い香りです。Masque Milano(マスク ミラノ)のRussian Tea(ロシアン ティー)は、煙、ミント、レザーの輪郭が強い茶系。テ ノワール 29はその中間で、茶の暗さはありながら、日常使いできる余白があります。

購入ガイド・価格・おすすめ度

日本公式では15mL、50mL、100mLの展開が確認できます。国内価格の記録としては、15mL 14,080円、50mL 31,350円、100mL 45,650円がありました。価格や在庫は変わるため、購入時はル ラボ公式や正規取扱店で確認してください。

おすすめしやすいのは、フィグ、ドライウッド、茶系、タバコ、秋冬の香り、黒い服に合う香水が好きな人です。逆に、甘いミルクティーの香り、透明なアールグレイ、強い拡散、わかりやすいフルーティさを求める人には、渋く感じられる可能性があります。

試香するなら、最初のフィグとベルガモットだけで決めない方がいい香りです。30分後の木質、数時間後のタバコと干し草の残り方で印象が大きく変わります。肌によってはフィグが甘く出る人もいれば、シダーやタバコが強く出る人もいます。

実際の使用感・シーン・評判

似合う季節は秋冬です。春や夏でも少量なら使えますが、湿度が高い日はタバコと干し草が重く感じられるかもしれません。場面としては、読書、夜のバー、ギャラリー、静かな会食、黒いニットやジャケットの日。オフィスで使うなら、空間に広げるより、肌に近く1プッシュ程度が現実的です。

評判では、ドライなフィグが美しい、スモーキーで大人っぽい、知的でミステリアス、ユニセックスに使いやすいという声があります。一方で、紅茶そのものではない、成熟した雰囲気がある、タバコやシダーが強い、肌によっては個性的に出るという受け止め方もあります。

この香水の良さは、遠くからわかる華やかさではなく、近づいた時に残る乾きです。黒いニットの袖口、夜の本、木のテーブル、少し冷えた空気。テ ノワール 29は、そういう静かな場面で、フィグと黒茶の影を肌に残します。

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