ウーロンチャ
ニシャネ「ウーロンチャ」は、ベルガモット、リツェア、ウーロンティー、フィグ、ムスクが明るいレモンティーのような清潔感を作る香りです。茶葉の渋みは軽く、シトラスの光と果実の柔らかさが長く続きます。
#106 · 2025-09-02
香水の基本情報と第一印象
Nishane(ニシャネ)のWulong Cha(ウーロンチャ)は、2015年に国際的に知られるようになったExtrait de Parfum(エキストレ ド パルファム)です。公式の香調はCitrus / Green / Musky(シトラス、グリーン、ムスキー)。容量は15ml、50ml、100mlがあり、公式ページではフレッシュ系の中でも強い香りとして紹介されています。
第一印象は、シトラスと茶が澄ませる夏の静けさ。烏龍茶という名前から、濃く焙じた茶葉、タンニン、渋みを想像すると、かなり意外に感じるはずです。実際には、ベルガモット、オレンジ、リツェア、マンダリンが明るく弾け、そこへ透明なお茶の空気が重なります。レモンティー、アイスティー、白いシャツ、涼しいホテルロビー。そういう方向の香水です。
この香水の強さは、爽やかなのにすぐ消えないことです。シトラスやお茶の香水は軽く飛びやすいものが多いですが、ウーロンチャはエキストレ濃度らしく、ムスクとフィグの余韻まで長く残ります。清潔感があり、日常で使いやすいのに、ニッチ香水らしい密度もある。そのバランスが人気の理由です。
調香師・ブランドの背景と制作秘話
ニシャネは、2012年にイスタンブールで設立されたトルコ発のニッチフレグランスブランドです。創設者はMert Güzel(メルト ギュゼル)とMurat Katran(ムラト カトラン)。ブランド名には、印、記号、シンボルという意味があります。
ウーロンチャを手がけたのはJorge Lee(ホルヘ リー)です。コロンビア出身で、銀行員から香料業界へ転じた異色の経歴を持つ調香師。料理、ハーブ、スパイスに親しんだ背景を持ち、素材の明るさと奥行きを組み合わせる感覚に強みがあります。
インスピレーションは、シルクロードを通ってトルコへ届いた中国茶。ここで重要なのは、茶葉そのものの写実ではなく、お茶を飲む時間の透明感です。忙しい都市生活の中で、一杯のお茶がもたらす安らぎや洗練を、シトラス、茶、ムスクで抽象化した作品として見ると、名前と香りの距離が自然に見えてきます。
香りの詳細分析
トップでは、Bergamot(ベルガモット)、Orange(オレンジ)、Litsea(リツェア)、Mandarin(マンダリン)が立ち上がります。果汁の甘さというより、果皮を指で押した瞬間のような、明るく少しビターなシトラスです。リツェアの青さと辛みが、単なるオレンジジュースではない輪郭を作ります。
ミドルでは、Oolong Tea(ウーロン ティー)とNutmeg(ナツメグ)が出てきます。ここでも、濃い焙煎茶というより、冷たいグラスの向こうにある透明な茶の香りです。ナツメグは強く主張せず、茶の輪郭を少し温める程度。だから全体は重くならず、シトラスの光を保ったまま、静かなお茶へ移ります。
ベースでは、Musk(ムスク)とFig(フィグ)が残ります。ムスクは洗い立てのリネンのように清潔で、フィグは青い葉と乳白色の甘さを持ちます。ここで香りは、レモンティーの爽快感から、肌になじむティームスクへ変わります。衣類につくとかなり長く残ることもあるため、爽やかな香りだからといって付けすぎないほうが扱いやすいです。
他の香水との比較・ポジショニング
Giorgio Armani(ジョルジオ アルマーニ)のThé Yulong(テ ユーロン)と比べると、どちらも高級感のあるティーフレグランスです。テ ユーロンは茶葉の抽出感や静かな茶室の印象が強く、ウーロンチャはもっとシトラスが明るい。陽光のあるテラスで飲むアイスティーに近い香りです。
Elizabeth Arden(エリザベス アーデン)のGreen Tea(グリーン ティー)と比べると、共通点は柑橘とお茶の親しみやすさです。グリーン ティーは軽く、カジュアルで、短く香る魅力があります。ウーロンチャは、そこにフィグ、ムスク、ナツメグの厚みが加わり、持続もかなり長い。日用品的な爽やかさではなく、ニッチ香水としての密度があります。
Le Labo(ル ラボ)のThé Noir 29(テ ノワール 29)と比べると、どちらも茶とフィグを持ちます。ただしテ ノワール 29は、タバコ、干し草、ウッディの陰影を持つ夜のお茶。ウーロンチャは、昼の光と白い布のようなお茶です。お茶系香水の中でも、明るさと清潔感に大きく振った立ち位置です。
購入ガイド・価格・おすすめ度
ウーロンチャは、15ml、50ml、100mlの展開があります。価格は販売国や為替で変動するため、購入時は公式サイトや正規取扱店で確認するのが確実です。ニシャネの中でも人気が高い香水なので、並行輸入や中古で探す場合は、販売元の信頼性も確認したいところです。
購入前に見たいのは、リツェアの青さと、ムスクの残り方です。最初のシトラスは多くの人に分かりやすく気持ちよい一方、近くで嗅ぐと青さや鋭さが気になる人もいます。また、爽やかな香りに見えてかなり長く残るため、職場や公共空間で使うなら少量が安全です。
おすすめしやすいのは、レモンティー、柑橘、お茶、清潔なムスク、白シャツ、リネン、ホテルロビーのような香りが好きな人。反対に、濃い焙煎茶、スモーキーな中国茶、重いウッディ、夜向けの色気を期待すると、明るすぎると感じる可能性があります。
実際の使用感・シーン・評判
似合う季節は春夏です。特に湿度の高い日、朝、日中、オフィス、旅行先、リゾート、ジム後、白いシャツを着る日に合います。秋冬でも使えますが、冷たい空気の中では爽やかさより清潔なムスクが前に出やすくなります。
シーンは、仕事、日常、買い物、移動、カフェ、ホテルロビー、清潔感を出したい近距離の場面。強く甘い香りを避けたい日にも便利です。ただし、エキストレ濃度なので、軽い香りのつもりで何プッシュも重ねると長く残ります。肌より服に残りやすい点も考えて、最初は控えめに試すのがよさそうです。
評判では、レモンティーのよう、清潔、高級ホテルのロビー、夏の救世主、一日つけても疲れにくい、という声があります。一方で、烏龍茶らしさが弱い、リツェアの青さが鋭い、入浴剤や石鹸っぽい、価格に対してもう少しひねりが欲しい、という声もあります。
ウーロンチャは、茶葉を濃く煮出した香水ではありません。シトラスの光、透明なお茶、フィグの青い甘さ、ムスクの白い余韻で、夏の清潔感を長く保つ香水です。その明るい静けさが肌に合う人には、毎年暑い季節に戻りたくなる一本になります。


