イマジナシオン

1本数万円の超高級フレグランスが、なぜか日本の家庭で愛される「牛乳石鹸」を思い起こさせる──。ルイ・ヴィトンのイマジナシオンは、地中海のシトラスと東洋の紅茶、清潔感と官能性という矛盾する要素を一本に閉じ込めた、不思議な魅力を持つ香水です。調香師が5年をかけて追い求めたアンバーグリスの真髄と、あえてミドルを削ぎ落とした大胆な構造の秘密に迫ります。

#10 · 2025-05-29

Louis Vuitton / Imagination

香水の基本情報と第一印象

ルイ・ヴィトンのイマジナシオンは、ブランドのDNAである「旅の真髄」をテーマに、果てしない想像力と自由を表現したメンズフレグランスです。香調はシトラス アロマティックに分類されます。

つけた瞬間に広がるのは、カラブリア産ベルガモットやシチリア産シトロンが生み出す、水のように澄んだ透明感のあるシトラス。しかし時間が経つにつれ、ブラックティーとアンバーの温かな深みがじわりと現れ、最終的には「高級ホテルの石鹸」のようなクリーンで安心感のある香りへと着地します。オフィスからデート、休日のリラックスタイムまで、季節を問わず万能に使えるフレグランスです。

調香師・ブランドの背景と制作秘話

手がけたのは、ルイ・ヴィトンのインハウス・マスターパフューマー、**ジャック・キャヴァリエ・ベルトリュード**。香水の聖地・南仏グラース出身で、祖父も父も調香師という香水一家に生まれました。ルイ・ヴィトン就任前にはフィルメニッヒに所属し、ブルガリのお茶シリーズ(「Thé Blanc」2003年、「Thé Noir」2015年など)も手がけた実力派です。

彼はこのイマジナシオンに**5年間**もの歳月を費やしました。「アンバーグリスの美しさを明らかにし、ノスタルジアを排して現代的な方法でそのアンバーノートの真髄を表現することを夢見てきた」と語っています。開発中には試作品を自ら纏ってグラースの街を歩き回り、通りすがりの女性たちから「何の香水?」と何度も問われたというエピソードも。男性用として開発していたこの香りが、ジェンダーレスな魅力を持つ「褒められ香水」であることを身をもって証明した瞬間でした。

ブランドはグラースに専用アトリエ「レ・フォンテーヌ・パルフュメ」を設立し、極上のクラフツマンシップを注ぎ込んでいます。デリケートなジンジャーやシナモン、紅茶からはCO2抽出法を用いて最も純粋でフレッシュなエッセンスを取り出すなど、製法へのこだわりも徹底されています。

香りの詳細分析

イマジナシオンの最大の特徴は、調香師自身が「ほぼミドルのない構造」と語るほどにミドルノートを極限まで抑えた**二極構造(コントラスト構造)**にあります。「黒いノートと白いノートの対比」という独自の理論に基づき、柑橘の閃光からアンバーの深みへとシームレスに滑り落ちていく設計です。

**白いノート(トップの閃光)** カラブリア産ベルガモット、シチリア産シトロン、シチリア産オレンジ。すべて最高品質の天然柑橘香料が使われ、「パチパチと音をたてながら夜明けの光に浮かび上がる地中海の風景」と表現される、極めてブライトでフレッシュな立ち上がりです。

**繋ぎのスパイス(熱を帯びた質感)** チュニジア産ネロリ、ナイジェリア産ジンジャー、セイロン産シナモン。フローラルでグリーンな明るさに、ジューシーで熱を帯びたスパイシーな質感が加わります。ジンジャーとシナモンはCO2抽出法で純粋なエッセンスが取り出されており、「緑豊かな風景から灼熱の砂漠へと香りを転換」させる役割を担います。

**黒いノート(重厚な抱擁)** 中国産ブラックティー、アンブロクサン、グアヤクウッド、オリバナム。クリーンでソーピー、ミネラル感を帯びたアクアティックな側面と、アーシーでスモーキーな温かいウッド・アンバーの質感が共存します。ブラックティーもCO2抽出、アンブロクサンは高濃度で使用。「動物臭が一切ない、アンバーグリスの上澄み液のような透明感のあるアンバー香」が特徴です。

全体として、トップの瑞々しいシャワーから上質なプーアル茶のような落ち着きへと変化する瞬間が最も印象的で、「牛乳石鹸の青箱」や「高級ホテルの石鹸」を思わせる究極の清潔感が残ります。

他の香水との比較・ポジショニング

ルイ・ヴィトンのリマンシテは、柑橘、生姜、柔らかなアンバーという共通点から比べたい作品です。手掛かりになるのは、グレープフルーツの苦みと生姜のきりっとした爽快感。柑橘の皮や生姜をはっきり楽しみたい日には、その切れ味が魅力になるでしょう。

イマジナシオンでは、爽やかさに重なる茶葉のほろ苦さや、穏やかな余韻にも目を向けたいところ。同じブランドの爽やかな香りでも、何を心地よく感じるかによって選び方が変わります。

ニシャネのウーロンチャは、柑橘とお茶を組み合わせた作品です。中心は烏龍茶で、ムスクとイチジクが下支えします。ブラックティーとアンバーが重なるイマジナシオンに対し、烏龍茶に果実やムスクが重なる香り。お茶の種類と、その周りにある素材を一緒に比べると違いが分かりやすくなります。

ウーロンチャは、香料の割合が高いエキストレ・ド・パルファムです。ただし、エキストレだから必ず強く香るわけではありません。どちらのお茶が好きか、時間をおいた肌で余韻を比べてみてください。

ブルガリ プールオム オードトワレも、同じ調香師ジャック・キャヴァリエによる、お茶とムスクが軸の香りです。公式ではダージリンティーとスイレン、ガイアックウッドとカルダモン、ムスクと透明感のあるアンバーという構成。緑茶とムスクを中心にした静かな清潔感で、イマジナシオンの明るい柑橘、紅茶、アンブロクサンとの違いがよくわかります。

香水評論家パーソレーズは、イマジナシオンからブルガリ プールオムを思い出すと評しています。この指摘を起点に、同じ調香師によるお茶の表現の違いを比べられます。

購入ガイド・価格・おすすめ度

価格帯は1本数万円と、まさにラグジュアリーの極み。容量は通常のオードゥパルファン展開で、一部店舗にはパフュームファウンテンが設置されており、ボトルのリフィル(詰め替え)にも対応しています。

ボトルはインダストリアルデザイナーマーク・ニューソンによる洗練された円柱形で、穏やかな海を思わせるライトブルーの液体が美しく映えます。磁石式の重厚な黒いキャップと、側面にさりげなく刻まれたモノグラムも上品です。村上隆コラボや孫一鈿(スン・イーティエン)コラボなど、アートコラボレーションの特別デザイン版も展開されており、コレクターズアイテムとしての魅力もあります。

実際の使用感・シーン・評判

**最適な季節**は春夏の暖かい日中。シトラスの透明感が美しく響きます。ただし、アンバーの温かみがあるため秋冬にもおすすめで、「秋ナシオン」(秋に円やかな甘みが増して美しく香る)と呼ばれるほど、年間を通じた使用が支持されています。

**持続時間**はフレッシュ系としては異例の10〜12時間以上という声が多数。プロジェクションは穏やかながらエッジが効いており、すれ違った時にふわりと香る上品な距離感です。「万能選手」と評されるだけあり、オフィスでの洗練された印象から休日のリラックスタイムまで、どんなシーンにもフィットします。

ユーザーからは「女性から非常に褒められる」「王族のような気分にさせてくれる」という声が多く、ジェンダーレスに女性が纏うのも好評。ローズ系香水と合わせて「ローズティー」、ミルキーな香りと合わせて「ミルクティー」として楽しむコンバイニングのアイデアも紹介されています。

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