春におすすめの香水5選

桜・マグノリア・すみれ——香水ラジオが選ぶ、春に纏いたいフレグランス5本。

春の窓辺に置かれた桜、マグノリア、ピオニー、スミレ、スズラン

桜が咲いて、風がだんだんやわらかくなってきましたね。冬のあいだは「重さがあってこそ香水」とばかりに、ウッディやアンバー系の深い香りをまとっていた方も多いのでは?でも春になると、不思議と体が軽やかな香りを欲しがるんですよね。空気に溶け込むようなシアーさとか、花や青草のみずみずしさとか。

今回は香水ラジオでこれまでご紹介した作品のなかから、春に特に似合うと思う5本を選んでみました。定番ブランドの春らしい一本から、ちょっと個性的な韓国ニッチブランドまで、バリエーション豊かなラインナップです。どれも実際にエピソードで深掘りしているので、気になった香りのエピソードもぜひ聴いてみてください!


桜の儚さを、そのまま瓶に閉じ込めた一本

「桜の香りの香水って、なかなかないですよね」と感じている方、多いんじゃないでしょうか。チェリーの甘さが強くなりすぎたり、逆にほとんど香らなかったりと、実は桜はとても難しいフローラルノートなんです。

そんな中で、ジョー マローン ロンドンの「サクラ チェリーブロッサム コロン」は、かなり正解に近い桜を表現していると思っています。満開の桜の下に立ったときのあの空気感——甘さと儚さが共存する感じ——を、シアーで透明感のある香りに落とし込んでいます。ジョー マローンらしいクリーンな仕上がりで、単独でつけてもよし、他の香りとレイヤリングするベースとして使ってもよし。つけすぎないのがコツで、手首にほんのりまとう程度がいちばん桜らしく決まります。

主役のチェリーブロッサムは、散り際の儚さと甘さを同時に持つ、春を象徴するフローラルノート。ローズやジャスミンほど主張が強くなく、空気感をふわっと演出するのが得意な繊細なノートです。その桜を明るく開かせているのがベルガモット。果皮のほろ苦さを含んだシトラスが、甘さに寄りすぎない透明な立ち上がりをつくります。そして最後に肌へ残るのがローズウッド。やわらかく甘い木の香りが儚い花をそっと支えて、シアーな余韻を静かに引き延ばしてくれます。


朝露が残る庭を歩く、ボタニカルな透明感

目が覚めて窓を開けたとき、外から入ってくる春の草と土の香りが好きな方、きっといると思います。メゾン マルジェラの「From The Garden」は、まさにその感覚を香水にした作品です。

メゾン マルジェラのレプリカシリーズは「場所の記憶」をテーマに、ある瞬間・ある場所の空気をそのまま香りにするコレクション。「From The Garden」は野の花、青草、ほのかな土の湿り気が絶妙にブレンドされた、朝の庭のスナップショットみたいな香りです。「自然の香りをもっとリアルに再現してほしいのに、なぜかいつも作り物っぽくなってしまう」というもどかしさを感じたことがある方に、ぜひ試してほしい一本。このシリーズの自然再現の技術力は、本当に頭ひとつ抜けています。春の入り口、まだ少し肌寒い朝にとくにおすすめです。

この庭の空気をつくっているのは、まずグリーンマンダリン。熟しきる前の青い柑橘で、朝の光のような明るさを最初に置きます。そこへトマトリーフが加わると、青草や茎を折ったときの独特の青さが立ち上がって、一気に「手入れされた庭」の質感になります。足元を支えるのがパチュリ。湿った土や深い葉を思わせるノートで、この土の気配があるからこそ、緑が作り物っぽくならずに地面とつながって感じられるんです。


花が咲く「景色」を香りにしたマグノリア

フレデリック・マルといえば、世界の一流調香師と組んで香水を作り続ける、香水界の目利き。そんな彼が手がけたマグノリアが、凡庸であるはずがないんです。

「Eau de Magnolia(オー ドゥ マグノリア)」の面白いところは、「マグノリアの花そのもの」を再現しようとしているんじゃなくて、「マグノリアが咲いている庭を歩く体験」を香りにしているところ。花が咲く空間の空気感、葉の緑、微風——そういったすべてを含んだ、立体的で奥行きのある香りになっています。フレッシュさの中にあるクリーミーな温もり、凛とした品格。春のカジュアルな装いにも、ちょっとお出かけの装いにも幅広く合わせられます。「フローラル系は甘すぎて苦手」という方にこそ試してほしい、大人のマグノリアです。

中心にあるのはもちろんマグノリア。ローズやジャスミンより一足早く春を告げる花で、格調があってクリーミーでありながら、クセが少なくて使いやすい、懐の深いフローラルノートです。その花に葉と茎の気配を足すのがベチバー。根のような土っぽさと乾いた木質が、甘さに寄らない凛とした輪郭をつくります。そして地面の湿り気を担うのがモス。苔や緑の陰影を思わせるノートで、この二つがあるから「花の香り」ではなく「花が咲いている庭の香り」になっているんです。


すみれの花びらの柔らかさと、都会的な温もり

ヴァイオレット(スミレ)って、「粉っぽい」「レトロ」「なんかおばあちゃんっぽい」というイメージを持たれがちな香りなんですよね。でもルラボが手がけた「Violette 30」は、そういうイメージをきれいに覆してくれます。

ルラボらしいアーバンで骨格のある解釈で、甘すぎず、粉々しくもなく。すみれの繊細な柔らかさとウッディな大人の温もりが、絶妙なバランスで共存しています。春の柔らかいニットや軽いコートとの相性が抜群で、肌に密着してじわじわと立ち上がる感じがとても心地いいです。「ヴァイオレット系はどうも…」という方ほど、意外とこれはハマるので、ぜひ一度試してみてほしいです。

主役はホワイトヴァイオレット。小さな花ながら存在感は大きく、すみれの柔らかさから粉っぽさだけを引き算したような、澄んだ表情を持つノートです。そこに軽やかさを足すのがホワイトティー。乾いた茶葉の透明感が、レトロになりがちなすみれを現代の空気に置き換えてくれます。着地はグアイアックウッド。スモーキーで甘さのある木の温もりが、花の繊細さを大人の骨格でしっかり支えています。


忘れないで——控えめに、でも確かに残る香り

最後の一本は、ちょっと特別な選択です。韓国発のニッチブランド「NONFICTION(ノンフィクション)」が、勿忘草(わすれなぐさ)をモチーフに作り上げた香水。

つけた直後はほんのり清潔感があって、しばらくすると肌に溶け込むようなムスキーな余韻が残ります。主張しすぎない、でも確かに漂っている。纏った人にやっと気づかれるかどうか、というギリギリのラインで存在感を示す、奥ゆかしい香りです。「香水をつけているとわかりやすすぎるのが恥ずかしい」という方や、「職場でも香水をつけたい」という方にとくにおすすめ。春の繊細な装いを、主張しすぎることなくやさしく引き立ててくれます。

意外な主役はバジル。ハーブの青くシャープな香りが、最初のひと吹きに清潔感と、少し体温の低い印象を与えます。中盤で顔を出すのがガーデニア。白い花のクリーミーな甘さが、ハーブの鋭さをやわらかく包み込みます。そして肌に残るのがアンバー。樹脂の温かさが緑と花をゆっくり溶かして、「やっと気づかれるかどうか」というあの距離感をつくり出しています。


春の香水選びで迷ったときは、ぜひ今回の5本を参考にしてみてください。「どれも難しそう」と感じたなら、まずは各エピソードを聴いてみるのがおすすめです。香りの詳細から調香師の背景、実際の使いどころまで、じっくりお話ししています。ぴったりの一本が見つかりますように!

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